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ラミア
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上陸した<透明なヒト蛇>は、全長十五メートルを超える巨体だった。重量は推定四百キロ。雨が激しく打ち付けている上に透明なため人相はよく分からないが、ショートヘアで比較的整った顔立ちの女性であることが分かる。
しかし、その表情は、およそ人間のそれではなかった。人間らしい情動を持つ者の顔付きではなかった。
<殺戮こそ我が命>
とでも言わんばかりの、殺意そのものが形を成したかのような表情をしていた。野生の肉食獣でさえ、常時このような貌をしている者はそうはいないだろう。つい今しがた、体長三メートルを超えるアーマードピラルクを平らげたばかりである。体長十メートルの大蛇ですらしばらくはおとなしくしているであろう量の餌を口にしたばかりで、しかも別に何か<敵>を前にしているわけでもないのだ。
蛮ですら、腹が満たされて問題がない状態であればこんな表情はしない。けれどヒト蛇は、まるで自身の眼前に広がる世界そのものを憎悪しているかのように敵意を剝き出しにしていた。
<異形>というだけでなく、明らかに生物としても異常な性質を表す姿だっただろう。
それを裏付けるかのように、突然現れた異様なそれを警戒して遠巻きに様子を窺っていたクロコディア数人目掛け、
「シャアッッ!!」
空気を切り裂くような呼気と共に恐ろしい速度で迫り、慌てて逃げようとしてしかし反応が遅れてしまった一人の首を掴んで引き寄せ、一瞬で体を巻き付けて、
ベギッ! バギギッッ! グギャッッ!!
という恐ろしい音を上げながら締め上げた。
「ギュッッ!!」
捕らえられたクロコディアはわずかに声を上げるだけしかできず、あっという間に本来の形を失っていった。有り得ない形に何度も折れ曲がっていたのだ。
しかも、ヒト蛇は、かすかに見えているクロコディアの頭に手を伸ばし、指を眼窩に引っ掛けて、
『力尽くで蓋を開けるように』
して、引っ張った。すると、
ベギャッ!!
という、できれば耳にしたくないタイプの音を立てながらクロコディアの頭蓋が引きはがされ、ピンク色の脳髄が明らかになる。
そこにも雨は打ち付けるが、ヒト蛇は大きな果実を丸齧りにでもするかのように、食らいついていった。
ブジャッ! バジュッッ!!
湿った音を立てながら、ヒト蛇がクロコディアの脳髄を貪り食う。顔を血まみれにしながら。
もっとも、激しい雨が降り続いていることで、すぐさま洗い流されていくが。
そうして脳髄を食べ終わると、今度は首を引きちぎって持ち上げ、頬肉にも食らいついたのだった。
しかし、その表情は、およそ人間のそれではなかった。人間らしい情動を持つ者の顔付きではなかった。
<殺戮こそ我が命>
とでも言わんばかりの、殺意そのものが形を成したかのような表情をしていた。野生の肉食獣でさえ、常時このような貌をしている者はそうはいないだろう。つい今しがた、体長三メートルを超えるアーマードピラルクを平らげたばかりである。体長十メートルの大蛇ですらしばらくはおとなしくしているであろう量の餌を口にしたばかりで、しかも別に何か<敵>を前にしているわけでもないのだ。
蛮ですら、腹が満たされて問題がない状態であればこんな表情はしない。けれどヒト蛇は、まるで自身の眼前に広がる世界そのものを憎悪しているかのように敵意を剝き出しにしていた。
<異形>というだけでなく、明らかに生物としても異常な性質を表す姿だっただろう。
それを裏付けるかのように、突然現れた異様なそれを警戒して遠巻きに様子を窺っていたクロコディア数人目掛け、
「シャアッッ!!」
空気を切り裂くような呼気と共に恐ろしい速度で迫り、慌てて逃げようとしてしかし反応が遅れてしまった一人の首を掴んで引き寄せ、一瞬で体を巻き付けて、
ベギッ! バギギッッ! グギャッッ!!
という恐ろしい音を上げながら締め上げた。
「ギュッッ!!」
捕らえられたクロコディアはわずかに声を上げるだけしかできず、あっという間に本来の形を失っていった。有り得ない形に何度も折れ曲がっていたのだ。
しかも、ヒト蛇は、かすかに見えているクロコディアの頭に手を伸ばし、指を眼窩に引っ掛けて、
『力尽くで蓋を開けるように』
して、引っ張った。すると、
ベギャッ!!
という、できれば耳にしたくないタイプの音を立てながらクロコディアの頭蓋が引きはがされ、ピンク色の脳髄が明らかになる。
そこにも雨は打ち付けるが、ヒト蛇は大きな果実を丸齧りにでもするかのように、食らいついていった。
ブジャッ! バジュッッ!!
湿った音を立てながら、ヒト蛇がクロコディアの脳髄を貪り食う。顔を血まみれにしながら。
もっとも、激しい雨が降り続いていることで、すぐさま洗い流されていくが。
そうして脳髄を食べ終わると、今度は首を引きちぎって持ち上げ、頬肉にも食らいついたのだった。
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