愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット勇者、アリシアの電脳異世界冒険記

正常ではないからこその芸当

実を言うと、<魔法>は意図して制御されていない自然発生的な現象なので、ちゃんと使うにはいささか困りものではあるものの、予測が難しいという点で対処しにくい面もある。

対して<魔術>は、あくまで人間の意思の下で制御されているものなので、人間の意識を上回る反応ができるアリシア相手には相性が悪かった。

それでも、ラウルも一筋縄ではいかない。

アリシアが何らかの方法で人間のそれを超える<反応速度>で対処していることを見抜き、今度はランダムに連続して魔術を放つ。

無数の<見えない針>がアリシア目掛けて放たれ、周囲のある建物の壁などがボロボロと崩れていく。

『さすがですね……!』

『魔術をランダムに放つ』というのが普通の人間にはできないことだ。まず意識を向けてから集中というのが本来であるがゆえに。

なのにラウルは、意識を向けずに出鱈目に集中しているということになる。

本来なら有り得ないことだ。

しかしそれは、彼の精神が普通の状態になく、ある意味では<破綻>していることも表しているだろう。

つまり、『正常ではない』からこその芸当ではある。

「すばしっこいネズミめが!!」

ラウルの目がさらに赤く染まる。同時に、その表情も人間とは思えないそれになっていた。笑っているのか怒っているのか分からない、普通の人間ならおそらく見たことのないもの。

だが、アリシアは知っている。それに似た表情を。薬物に重度に依存している者が時折見せるものに似ているという事実を。

加えて、精神的に破綻状態にある者も、そういう表情を見せることもある。

重度の薬物依存や精神破綻者のその状態を意図的に作り出し、あまつさえ操ってみせる。

いったい、どのような過酷な経験をすればこのようなことができるのか。

なるほどこの状態を制御できるようになるには、人間らしい<情>など邪魔になるのかもしれない。

ラウルが登場するまでスキップしたことでここまで触れられることはなかったが、彼の非人間的な行いについてもR15で表現が可能な範囲では描写もされている。

彼と同じく魔術の才能を持つ子供を集めるために、ごく普通に暮らしていた家族に魔術で幻覚を見せ、互いに殺し合うということをさせたりもした。

両親を始末するための人員を何人も連れて歩くのが面倒だからというのが理由だそうだ。

家族同士で殺し合わせれば人手は必要ないという。

残った子供を連れていく者だけいればいいのだから。

ラウルは、昆虫の選別をするように淡々とそれができてしまうのだ。

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