こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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厳しい社会

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幼い子供にとっては過酷とも言える道程を、始閣しかく九縁くぶちも不平一つこぼさず黙々と歩いた。一歩一歩、自分の体と対話するかのように確かめながら。

そうすることが徹底されているのだ。しかも強要されたのではなく、砕氷さいひになりたいのなら最低限身に着けるべきものとしてただ諭され、実際にそれができない者は無理にできるようにするのではなくただ振り落とされた。

この世界では、<しごき>のようなものは行われない。下手にそういうことをすると直接命に係わるような環境だからだ。そうではなく、あくまで本人の意思と努力に委ねられる。強要しないから自らの意思で己を律することができない者は<適性がない>と見做されるだけである。

明らかに適性のない者に『やればできる!』と叱咤していつまでも面倒を見るといった<甘やかし>は行われない。『ダメなものはダメ』と、冷酷なまでに切り捨てられるだけだ。

ただし、そうやってドロップアウトした者にもきちんと何らかの仕事は割り振られる。『やりたい仕事ができないのなら働きたくない』などという甘えも許されない。

ここは本当の意味で『厳しい』社会なのだ。

適性があるかどうかも分からない人間を、誰かが励まして尻を叩いていつまでもしがみつかせてくれたりはしないのである。

『ついてこられないなら諦めろ』

ということだろう。

もっともそれは、<適正もない者にいつまでも叶わない夢を見させて無為に時間を過ごさせないという優しさ>とも言えるかもしれないが。

いずれにせよ、始閣しかく九縁くぶちも、ひめがバイタルサインを常にモニターして慎重に見守る中、とうとう目的の場所に辿り着いた。

「よくやったな」

始閣しかく九縁くぶちの肩を掴んで声を掛ける。すると九縁くぶちも、殆どフードに隠れた顔を僅かにほころばせて小さく頷いた。

ただただここまで歩いてきただけのことなのに、それはまるで人生の縮図のようでさえあった。

もっとも、実際にこの道のりを歩いてきた者でなければ理解も共感もできないものかもしれないけれど。

これまでにも経験のある始閣しかくはもとより、今回初めて、氷窟の最先端まで辿り着いた九縁くぶちを、先輩として浅葱あさぎも、

「頑張ったな」

と声を掛けていた。

「本当に頑張りましたね。素晴らしいと思います」

ひめも、最大の賛辞でもって九縁くぶちを讃えたのだった。

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