こおりのほしのねむりひめ(ほのぼのばーじょん)

京衛武百十

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初めての一撃

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ひめは今、掘り当てた例の<居住スペース>へと続く氷窟の途中から枝分かれする形で新しい氷窟を掘っていた。浅葱あさぎは、自分が担当する氷窟との分かれ道まで一緒に歩き、そこまで辿り着いた始閣しかく九縁くぶちに「頑張ったな」と声を掛けてくれた。

ここから先は、ひめが実際に掘っている場所までも僅か数十メートルである。ここまで来られたことが既に称賛に値する。

浅葱あさぎからの言葉を受けて、子供には明らかに重すぎる砕氷さいひ用防寒装備のフードの奥でほんの少しはにかんだような表情を見せた二人を連れて、ひめはいよいよ自分が作業を行っている現場へと辿り着いた。

現在、気温は氷点下四十五度。これでも浅葱あさぎが作業をしている辺りに比べればまだ『暖かい』方である。

「では、始閣しかくさんと九縁くぶちさんはまず、私の作業を見ててください」

そう告げて自らが背負っていたバックパックから<びしゃん>を取り出し、ひめは氷窟の先端部をこつこつと叩き始めた。

彼女がこれまで行っていた、バディゆえの身体能力を当てにした<力技>ではない、砕氷さいひ本来の作業方法だった。

バディとしてのひめのやり方は、当然、人間では真似できない。まったく参考にならない。だから敢えて、浅葱あさぎから学び取った手法を、手本として二人に示したのである。

もっとも、仮にも砕氷さいひを目指そうというのだから、二人も当然、<びしゃん>の扱いには到底子供とは思えないくらいに精通している。

だから、ひめが手本を示している間にも、九縁くぶちは実際に自分でも作業をしてみたくてうずうずしていた。兄の始閣しかくは既に何度か現場の経験があるので、そんな妹の様子にフードの中で苦笑いを浮かべていた。

そんな九縁くぶちの様子を察していたひめは、しばらく作業をしてみせて、

「じゃあ、やってみますか?」

と声を掛けた。

瞬間、フードの奥の九縁くぶちの目が明らかに輝いて、大きく頷く。

するとひめは自分の横に彼女を導き、膝をつかせた。

「慌てずに、落ち着いて、確実に少しずつ削ってください」

そのひめの言葉に、声には出さずに頷いて返事をし、九縁くぶちは母親からもらった自分の<びしゃん>を手に、凍土を叩いた。が、

「!?」

<びしゃん>の先端が凍土を打ったのと同時に、表情が変わる。

『固い…!?』

これまで彼女が<砕氷さいひごっこ>として行ってきたそれとの違いを、一撃で感じ取ったのだった。

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