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こいつに愛想尽かされるまでの間は

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そんな調子で蟷姫とうきと暮らし始めて一ヶ月。

<テント>は順次改良を加えていって、今じゃちょっとした<ツリーハウス>みてえになった。蔓を渡して仮の足場を作り、そこに木の枝を束ねた床を組んで、三畳くらいの広さのスペースを確保。さらに葉が付いたままの木の枝を周囲に吊るして壁にしてよ。

もちろん普通の家に比べりゃ快適さなんざあったもんじゃねえにしても、少なくともいきなり襲われるってえのを避けられるようになったのはありがてえ。

しかも蟷姫とうきも気に入ってくれたみてえだ。

それでも、人間みてえに床に転がって寝たりはしねえ。木の幹に背中を預ける形でうずくまって、両腕で首を守る形になって寝るのはそのままだな。それがこいつにとっちゃ当たり前ってことか。

対して俺は、これまで狩った獲物の皮を剥いで煙で燻したものを敷いた床に寝転がる。人間はやっぱこの姿勢でないとちゃんと寝られねえってことか。

ただし、やっぱり熟睡はしねえ。そこまで油断はできねえし、俺の方もその辺は慣れてきた感じだな。

で、蟷姫とうきとヤる時も、部屋の中なら安心だ。

そうしてほとんど毎日ヤってたんだけどよ。さすがに妊娠まではしねえようだ。そりゃそうか。いくら人間に近いっても人間じゃねえわけだし。

だがそうなると今度は、蟷姫とうきに見限られる可能性が出てきたかもしれねえな。

野生の獣は、人間みてえに快楽を得るためにヤるわけじゃねえ。あくまで子供を作るためにヤるんだ。蟷姫とうきも<強えオス>な俺との間で子供を作ろうとしてるんだろう。

なのに肝心の子供ができねえとなると、さすがに俺とこうしてつるんでる意味もねえわけで。

人間はその辺り、子供を作ることばっかりが目的じゃなくなったから、『子供は要らねえ』ってえ奴同士がくっつくんなら問題もねえだろうけどよ。野生はそうはいかねえよなあ……

「俺もそのうちお前にフられちまうのかね……」

ヤった後でついそんなことを口にしちまったが、

「……?」

蟷姫とうきにゃ伝わってねえようだ。当たり前か。

こいつに愛想尽かされたんならもう縛っちゃおけねえのは分かってる。そんなみっともねえ真似をしてえとも思わねえ。思わねえが、<運命の女>とまで感じたこいつに捨てられんのは、やっぱ寂しいぜ……

とか言っててもしょうがねえか。そん時はそん時だ。

だいたい、俺もこいつも、明日も生きてられる保証なんざこれっぽっちもねえからな。ここじゃ。

だったら、生きてる間は、こいつに愛想尽かされるまでの間は、愛してやるさ。

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