オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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邪悪な笑み

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「ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲッ!」

自身の生みの親である実の母親を頭突きで打ち倒したジョーカーは、まさしく<邪悪な笑み>を浮かべていた。

自分を生んでおいて守ろうともせず捨て置き、あまつさえ打ちのめした母親よりも、明らかに自分が強くなったことが実感できて、それが嬉しくて、驚きの目で自分を見る母親の顔が面白過ぎて。

そして、

「ガアッッ!!」

咆哮を上げながら首に食らい付こうとする。

だがさすがにこれは母親の方も頭を振って躱し、足の爪で一撃を食らわしつつその反動を利用して立ち上がった。それなりに修羅場もくぐってきたゆえに、不意さえ突かれなければそうそう容易くはやられない。

しかし、ジョーカーは逆にもっと嬉しそうな様子だった。ボスを殺した時にはあまりにも呆気なかったことで楽しめなかった。だからこそ少しでも長くいたぶって楽しみたかったのだ。

『<親子の情>? なんだそれは? そんなもので腹が膨れるか。欲求が満たされるか。自分にはそんなものはゴミほどの値打ちもない』

この時のジョーカーの心理を、人間に理解できる言葉に置き換えるならそんな感じだっただろうか。

けれどそこに、母親の仲間が加勢しようと走り寄ってきた。きたものの、実際に加勢することはできなかった。

「ガーッ!!」

『邪魔をするな!』とばかりにクイーンが間に入ってきて威嚇する。さらにはジョーカーの仲間達も一緒に立ちはだかった。

これでもう、邪魔は入らない。

「ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲッ、ゲッ!」

再び邪悪な笑みを浮かべながらジョーカーは自分の母親を見た。その異様さに、母親は後ずさる。そんなみじめな姿がまたたまらなく愉快だった。

そして、そこから先はただ一方的な蹂躙だった。急所に食らい付いて一度で殺すのではなく、まずは前脚を噛み砕いて使えなくし、必死で反撃のために振ってきた尻尾を中ほどで食いちぎり、それを母親自身の目の前でガツガツと食らってみせた。

オオカミ竜オオカミにとって尻尾は、体のバランスを取るための重要な部位であり、それを失うとパフォーマンスが一気に低下する。だからもうこの時点で、母親はほぼ反撃を封じられたのも同然なのだ。

とは言え、野生の獣は、命がある限り生きることを諦めはしない。そう、しないのだが、この時ばかりは逆にジョーカーを愉悦させるだけの意味しかなかっただろう。

母親を何度も頭突いて地面に転がし、反撃のために繰り出された脚の片方を噛み砕き、なおもよろよろと立ち上がろうとする母親に尾を叩きつけ、打ちのめす。

やがて母親の体は、皮膚が抉れて垂れ下がり、もはやそれこそ<ボロ雑巾>のようなそれへと変貌していったのだった。

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