オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

オオカミ竜のジャックは、恵まれた体を持つ個体だった。兄弟達よりも早く卵から孵った彼は、真っ先に昆虫などを食い漁り、みるみる体を大きくした。また彼は狩りも上手く、兄弟達が群れで襲い掛かっても敵わなかった猪竜(シシ)を一頭で倒してみせた。

しかし、彼は本当は血生臭いことはあまり好きではなかった。本当はただゴロゴロぐうたらしていたかったのだ。なのにこの世界は彼をのんびりとはさせてくれなかった。恵まれた体を持ち狩りも上手かったかれは仲間達から頼りにされ、いつしか頼られる存在になっていく。

さらには、ボスにも勝ててしまい、その瞬間、彼がオオカミ竜の群れのボスとなってしまった。

ことここに至り、彼も観念したかのようにボスとして群れを率いていく。

なのに、過酷なこの世界は、彼を休ませてはくれなかった。彼らが生きている草原に生息していた草食動物達の間で疫病が広まり、数が激減。同じオオカミ竜の別の群れや、他の肉食獣らと餌の奪い合いが始まり、それに伴っての衝突も増えていく。

それでも十分な餌が確保できなくなったことで雌は卵を産まなくなり、老いた仲間は耐えずに飢えて死んでいく。

こうしてジャックは、決断を迫られるのだった。

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