67 / 95
ハッタリ
しおりを挟む
先に仕掛けてきたのは、向こうの群れだった。だから反撃した。しっかりと食べられたこともあって、ジャック達はまだいくらか回復できていた。しかし相手の群れは来たばかりだったのか明らかに力がなかった。
ゆえに、戦意を見せなければ、服従の意を示してくれれば、仲間に加えてもいいとジャックは思っていた。けれど、向こうにはその考えはなかったようだ。だとすれば手加減もできない。手加減すればこちらに被害が出る。
ジャックにはそれが分かってしまう。
こうしてまた七頭のオオカミ竜を倒した。しかも今度の群れにはやはり幼体はいなかったようだ。
「グル……」
しばらくジャックが周囲を歩いて探してみるも、見当たらない。
その間、仲間達は倒したオオカミ竜を食らい、回復を図る。いずれは元からここにいた群れと衝突することもあるだろうから、それに備えて。
幼体達の一部も、もう少しで成体になる。そうすれば戦力になる。
そうだ。<戦力>だ。可能であれば戦力を増強することも考えたい。となれば、仲間にできる者がいれば仲間に加えたかった。
すると翌日、一頭の雄のオオカミ竜に遭遇した。自分達とは明らかに違う、張りのある体つき。どうやら元々この辺りにいた群れから巣立った雄のようだ。
しかしその雄は、いささかみすぼらしい感じになっていたジャック達を見て『勝てる』と思ったのかもしれない。そのまま自分がボスとしてこの群れを乗っ取ってしまえると。
だからか、前に出てきたジャックを挑発するかのように、
「ガアッッ!!」
と吠えた。けれど、見た目は確かに長く飢えていたことでいささかみすぼらしい感じになってしまったかもしれないが、連日、しっかりと食べることができた上に長距離の移動は避けて体を休ませるようにしていたこともあり、ジャック自身の体力はかなり戻ってきていた。
となれば、
「ゴアアアアアーッッ!!」
大柄な体に相応しい巨大な口を目いっぱい開けて、ジャックはその<若造>を威嚇した。すると若造は、見た目の印象とはまったく異なるジャックの迫力に圧されて、わずかに体を下がらせてしまった。
この時点で勝負はついていただろう。口の大きさを競っても、完全にジャックの方が大きい。
こうして自身の軍門に下った若い雄を仲間に加え、ジャックは内心ではホッとしていた。正直、戦えば簡単には勝てないであろうことも察していたのだ。まだ万全ではないがゆえに。
<ハッタリ>も、野生で生きる上では大事な技法だ。
ゆえに、戦意を見せなければ、服従の意を示してくれれば、仲間に加えてもいいとジャックは思っていた。けれど、向こうにはその考えはなかったようだ。だとすれば手加減もできない。手加減すればこちらに被害が出る。
ジャックにはそれが分かってしまう。
こうしてまた七頭のオオカミ竜を倒した。しかも今度の群れにはやはり幼体はいなかったようだ。
「グル……」
しばらくジャックが周囲を歩いて探してみるも、見当たらない。
その間、仲間達は倒したオオカミ竜を食らい、回復を図る。いずれは元からここにいた群れと衝突することもあるだろうから、それに備えて。
幼体達の一部も、もう少しで成体になる。そうすれば戦力になる。
そうだ。<戦力>だ。可能であれば戦力を増強することも考えたい。となれば、仲間にできる者がいれば仲間に加えたかった。
すると翌日、一頭の雄のオオカミ竜に遭遇した。自分達とは明らかに違う、張りのある体つき。どうやら元々この辺りにいた群れから巣立った雄のようだ。
しかしその雄は、いささかみすぼらしい感じになっていたジャック達を見て『勝てる』と思ったのかもしれない。そのまま自分がボスとしてこの群れを乗っ取ってしまえると。
だからか、前に出てきたジャックを挑発するかのように、
「ガアッッ!!」
と吠えた。けれど、見た目は確かに長く飢えていたことでいささかみすぼらしい感じになってしまったかもしれないが、連日、しっかりと食べることができた上に長距離の移動は避けて体を休ませるようにしていたこともあり、ジャック自身の体力はかなり戻ってきていた。
となれば、
「ゴアアアアアーッッ!!」
大柄な体に相応しい巨大な口を目いっぱい開けて、ジャックはその<若造>を威嚇した。すると若造は、見た目の印象とはまったく異なるジャックの迫力に圧されて、わずかに体を下がらせてしまった。
この時点で勝負はついていただろう。口の大きさを競っても、完全にジャックの方が大きい。
こうして自身の軍門に下った若い雄を仲間に加え、ジャックは内心ではホッとしていた。正直、戦えば簡単には勝てないであろうことも察していたのだ。まだ万全ではないがゆえに。
<ハッタリ>も、野生で生きる上では大事な技法だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる