オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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ハッタリ

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先に仕掛けてきたのは、向こうの群れだった。だから反撃した。しっかりと食べられたこともあって、ジャック達はまだいくらか回復できていた。しかし相手の群れは来たばかりだったのか明らかに力がなかった。

ゆえに、戦意を見せなければ、服従の意を示してくれれば、仲間に加えてもいいとジャックは思っていた。けれど、向こうにはその考えはなかったようだ。だとすれば手加減もできない。手加減すればこちらに被害が出る。

ジャックにはそれが分かってしまう。

こうしてまた七頭のオオカミ竜オオカミを倒した。しかも今度の群れにはやはり幼体こどもはいなかったようだ。

「グル……」

しばらくジャックが周囲を歩いて探してみるも、見当たらない。

その間、仲間達は倒したオオカミ竜オオカミを食らい、回復を図る。いずれは元からここにいた群れと衝突することもあるだろうから、それに備えて。

幼体こども達の一部も、もう少しで成体おとなになる。そうすれば戦力になる。

そうだ。<戦力>だ。可能であれば戦力を増強することも考えたい。となれば、仲間にできる者がいれば仲間に加えたかった。

すると翌日、一頭の雄のオオカミ竜オオカミに遭遇した。自分達とは明らかに違う、張りのある体つき。どうやら元々この辺りにいた群れから巣立った雄のようだ。

しかしその雄は、いささかみすぼらしい感じになっていたジャック達を見て『勝てる』と思ったのかもしれない。そのまま自分がボスとしてこの群れを乗っ取ってしまえると。

だからか、前に出てきたジャックを挑発するかのように、

「ガアッッ!!」

と吠えた。けれど、見た目は確かに長く飢えていたことでいささかみすぼらしい感じになってしまったかもしれないが、連日、しっかりと食べることができた上に長距離の移動は避けて体を休ませるようにしていたこともあり、ジャック自身の体力はかなり戻ってきていた。

となれば、

「ゴアアアアアーッッ!!」

大柄な体に相応しい巨大な口を目いっぱい開けて、ジャックはその<若造>を威嚇した。すると若造は、見た目の印象とはまったく異なるジャックの迫力に圧されて、わずかに体を下がらせてしまった。

この時点で勝負はついていただろう。口の大きさを競っても、完全にジャックの方が大きい。

こうして自身の軍門に下った若い雄を仲間に加え、ジャックは内心ではホッとしていた。正直、戦えば簡単には勝てないであろうことも察していたのだ。まだ万全ではないがゆえに。

<ハッタリ>も、野生で生きる上では大事な技法だ。

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