美智果とお父さん

京衛武百十

文字の大きさ
51 / 149

壊れてしまった赤いランドセル

しおりを挟む
まさか、ランドセルが壊れるなんて僕は想像もしてなかった。自分があれだけ無茶苦茶な使い方をしてても壊れたなかったくらいなんだから、ランドセルが壊れるっていう認識がなかった。

だけど、この時の僕は慌てるよりもついドヤ顔をしてしまってた気がする。ドヤ顔しながら声を上げてたと思う。

「良かった! もう一個のランドセルの出番があった! さすが僕!」

と言いながら、棚から殆ど使ってない綺麗な水色のランドセルを出してきた。

「はっは~! このまま使わずじまいになるかと思ってたけど、いやいや、まさに僥倖!」

さっそく、中身を水色のランドセルに移し替える美智果の姿を見ながら僕はうんうんと頷いてた。というのも実は、美智果が小学校に上がる前に、水色のランドセルを買ってたんだ。でもそれは、二年落ちの型遅れのものだった。共働きだった妻が亡くなって経済的に苦しくなることを予測して、無理をしないようにしたんだ。

だけど丁度その時、僕の母も美智果の為っていうことで赤いランドセルを買ってくれてた。

結果としてダブってしまったけど、まあ、気分によって使い分けたりしたらいいかと思ってそのままにしてた。それに、僕が買った方は、型遅れで定価から七割引きの処分品という代わりに返品不可だったし。

しかも、僕は美智果が水色が好きっていうのを知ってたから水色にしたのに、美智果が実際に学校に持っていくのを選んだのは、僕の母が買ってくれた、ごく普通の何の変哲もない赤いランドセルだった。

美智果が水色を好きなのは確かだ。実際、服も基本的には水色のが多いし、筆箱も水色のを選んだ。でもランドセルだけは赤が良かったらしい。女の子のランドセルと言えば赤っていうのがこの子のなかにもあったみたいだ。

その時、僕は、親だからって子供のことを百パーセント理解できてる訳じゃないってことを思い知った。何でもかんでも分かった気になるっていうのは思い上がりだっていうのも実感させられてた。

一方の美智果の方も、一年生の時にはそういう拘りもあったものの、今ではそこまで拘ってなかったらしい。僕が出してきた水色のランドセルにも嫌がるような素振りはなかった。

「卒業まで、その水色のでいいかな?」

僕がそう尋ねても、

「いいよ~、私、水色好きだし」

とあっさりしたものだった。あとで訊くと、小学校に上がる時に『赤いランドセルがいい』って言ったこと自体を覚えてなかった。

拘りだって、時間の経過と共に変わる場合もあるんだと、壊れてしまった赤いランドセルを見ながら僕はしみじみ思ったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...