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ランドセルが壊れちゃった

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実は夏休みが終わっての登校初日、ちょっとしたハプニングがあった。

「宿題、ちゃんと持ったか~?」

「だいじょ~ぶ」

朝に学校行く用意してさ~万全!って思った時、

『あれ…?』

って変な違和感が。ランドセルをいつものように背負おうとしたら、背負えなかった。

「あれ? え? あれ…?」

なんかおかしい。でも、その違和感の正体に気付いて、

「あっ!」

って声が出ちゃった。

ベルトが、ランドセルのベルトが…!

「え? まさか壊れた…?」

パパも気付いてそう言った。

そうなんだ。ランドセルが壊れちゃった。

『どうしよう……』

私がそう思ってたら、パパが声を上げた。

「良かった! もう一個のランドセルの出番があった! さすが僕!」

って言いながら棚から出してきたのは、水色のランドセル。

「はっは~! このまま使わずじまいになるかと思ってたけど、いやいや、まさに僥倖!」

そうだ! 思い出した。確かにそんなランドセルあったね!

それは、パパが私のために買ってくれたランドセルだった。だけど、一年生になる時の私は、何故かお祖母ちゃんが買ってくれた方の赤いランドセルを背負って、

「こっちがいい!」

って言ったらしかった。全然覚えてない。私、色は水色の方が好きなはずなんだけどな。だからパパも水色のランドセルを買ってくれたはずなんだ。なのに私は赤いランドセルを選んでしまった。

だけどパパはその水色のランドセルを大事に取ってて、その出番がようやく来たってことだった。

「卒業まで、その水色のでいいかな?」

「いいよ~、私、水色好きだし」

うん。こっちでいい! やっぱり私、水色が好き!

でも、小さい頃には、『女の子は赤』っていう思い込みが私にもあったのかもね。実際には、うちの学校は割とカラフルで、水色とか紫とか黄色とかピンクのランドセルの子も普通にいてた。

『変わってる』ってよく言われるし自分でもそうかもって思う私でも、そういう『普通』に拘る部分があったんだろうな。

自分が買った水色のランドセルを選んでもらえなかったからってパパは拗ねたり機嫌を損ねたりしないでいてくれた。パパは本当にすごいと思う。ダメなところもいっぱいあるけど、『もう!』って思っちゃうところもいっぱいあるけど、でもすごいんだ。だから私、パパが好き。

自分の思い通りにいかないからってキレたりイライラしたりする大人はカッコ悪い。そんな大人、尊敬できない。

自分の思い通りにいかないからってキレてていいのは、子供のうちだけだと思うよ。

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