世界で一番ママが好き! パパは二番目!

京衛武百十

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愛してる

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『自分は何のために生まれてきたのか』

『自分はなぜ生きているのか』

そんなことを必死になって考えてる人がいるらしいけど、私にはその気持ちとか分からないな~。

だって、そんなこと気にしなくても毎日楽しいもん。幸せだもん。幸せじゃないから、満たされてないからそんなこと考えるんじゃないの?

私はママとパパの子供として生まれてきて良かったと思うよ。

そりゃ贅沢とかできないし、何でもかんでも自分の思う通りになんてならないけど、そんなの、人間以外の動物だってそうじゃん。人間だけが特別だとか思ってるから、自分が特別扱いされないのが不満に感じるだけじゃないの?。

そういうの、私はカッコ悪いと思う。

小学校も終わりに近付いて、自分がもうすぐ中学生になるんだと思ったら、すごくそんなことを思うようになってきた。

『自分は何のために生まれてきたのか』

『自分はなぜ生きているのか』

そんなこと分からなくたって、私は何にも困らないよ。ママとパパの子供として生まれてきただけで満足だから。

だからさ、今はまだ不安だけど、自分にできる気とかしないけど、もし、私が結婚して子供ができたりしたら、パパがしてくれたことをしてあげたいと思えるんだ。

生まれてきて良かったなって思えるようにさ。



四月。私は、パパが、ううん、<お父さん>が用意してくれた制服を着て、お父さんと一緒に入学式に行く。

回りにはすごく緊張してる感じの子もいるけど、私は不思議とそんなことなかった。これもただの日常の中の一つのイベントでしかないもんね。ただの<通過点>ってやつなんだと思う。

なんかいろいろ小学校の時とは違ってて面白いって気がした。中学校でもアニメとかゲームとか好きな子とも友達になれたらいいな。もちろんよっしーやマリーも同じ中学校だからこれからも友達だよ。それだけじゃなくてリンちゃんとかアキちゃんも一緒だからちょっとそこは心配だけどね。

でも、不思議と何とかなりそうって気もしてる。

ママ…私の姿が見えますか……?

私の身長、きっと中学の間にママに追いつくよ。胸は…なんか勝てそうな気がしないけど、それはいいかな。これ以上大きくなったらそれこそジャマだし。

入学式の後で、校門で<入学式の看板>の前で写真を撮る。これまで撮った写真なんてほとんど見返したことないけどさ。一応撮っとく。



家に帰って制服脱いでやっぱりパンツいっちょでゲームしながら、私はお父さんに言った。

「お父さん。今日から私、一人でお風呂に入ってみる」

「…え? あ、そうなのか。大丈夫?」

急に言ったからか、珍しくお父さんがちょっと慌ててる気がする。あ、もしかしたら『お父さん』って呼んだからかな。

「うん。大丈夫、だと思う。とにかくやってみようかなって」

正直、まだ完全に一人で入るのはちょっと怖いけど、頑張ってみようかなとは思えるようになったんだ。そう思えるようになるまでお父さんは待ってくれた。

きっと、『今日から一人で入れ!』とか、まだ怖くてムリって思ってた頃に言われてたらお父さんのことを嫌いになってたかもしれない。だけど、お父さんは待ってくれたんだ。

「怖くなくなってきたのかな?」

って訊いてくるお父さんに、

「なんか、平気になってきた。不思議だけど」

と正直に言った。完全じゃないけど、平気になってきたのも本当。

小さい頃のことで覚えてることがある。

夜、寝る時に、外が暗くなってるのが怖くて、

「おばけこない? こない?」

って何度もお父さんに訊いたら、

「来ないよ。お父さんと美智果がいっつも笑ってられるこのおうちには、お化けなんて近付けないよ」

何度だってそう言ってギュッとしてくれたんだ。その度に安心して寝られたんだ。

お父さんが言ってた。

「無理に荒療治しなくても、美智果はいつの間にか『サンタクロースはいない』って分かっただろ? それと同じで、いつの間にか『お化けはいない』って思えるようになる時が来ると思うんだ。父さんはそれを待つだけだよ」

ってさ。そして待っててくれたんだ。

子供って、成長するんだよ。いつまでも小さな子じゃないんだよ。焦らなくてもいつかは成長するよ。ちゃんと大事なことを教えてくれてたらさ。

私も、夜、灯りが点いてないと寝られなかったのが、灯りを消しても寝られるようになって、一人で部屋にいられなかったのがいられるようになってきて、今なら、灯りが点いてない部屋にそれを点けるために入ることができるようにもなったんだよ。おねしょもまだ完全には治らないけど、ちょっと前までは毎日だったのが、今はしたりしなかったりになってきてるんだ。

他人に話したら『そんなこと』とか言って笑われるようなことだけど、できなかったことができるようになるっていうのは、成長なんじゃないのかな。

お父さんは私がそうなるまで見捨てないで見守ってくれたんだ。



「お父さん……

って、なんか恥ずかしいな。ごめん、もうちょっと<パパ>でいい?」

私が言ったら、

「いいよ。どっちでも。パパでもお父さんでも、間違ってないから」

とかパパは言ってくれる。私が無理しないでも『お父さん』って言えるようになるのを待ってくれてる。たぶん、大人になるまでの間には、逆に『パパ』って呼ぶのが恥ずかしくなってくる気がしてる。だけど、それはまだもうちょっと先かな。

「パパ、大好きだよ。

愛してる。

ママの次にだけどね♡」


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