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ハーレム
不定形生物(かなりヤバそうなやつだな)
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コーネリアス号の乗員達を襲ったという不定形生物についてだが、撃っても切っても死ななかったが、一度目の襲撃の際にはそれこそ為す術なかったが、一度だけ、気になる反応があったという。
それは、メイトギアの一機が、本来なら有り得ない行動を取った時だった。その時点ですでに壊れてたらしく、撃っても切っても死なないそいつの中に潜り込んで自身のバッテリーをショートさせさせるという有り得ない行動を取り、自らの破壊と引き換えに追い払ったそうなのだ。
だから高圧電流が効果があるかもしれないと判断されメイトギア用の予備のバッテリーを使って電撃を与える武器を作ったりもしたが、それ自体は一次的に怯ませる程度の効果しか見せなかったそうだった。
メイトギアによる自爆攻撃が何故そいつを追い払えたのか、電圧か電流量かそれ以外の理由かは不明だが、とにかくそういうことがあったというのは事実だった。
「なるほど参考になりました」
エレクシアがそう言ったが、俺は、
「おいおい、真似はしないでくれよ」
と釘を刺しておいた。一度ばかり追い払う為に彼女を失ったのではたまらないからな。
エレクシアの運転で、俺の宇宙船が不時着した場所を目指して河を下る。彼女が来た道を覚えているので何も心配はなかった。
ちなみに、俺の宇宙船には……特に名前は、ない。付けてない。
今時、あのクラスの宇宙船は自家用車と大差ない扱いである。<プレジャーボートのようなもの>と考えれば名前を付けるのは不自然ではないにしても、それよりもっと気軽で身近になった今ではそういう感じだ。名前を付ける人間もたまにいるが、そういうのはまあ変わり者の部類に入るだろう。そんな宇宙船でもコーネリアス号よりは高性能だった。ロボットも宇宙船も、求められる機能はとうの昔に完成されてその点では殆ど進歩していないが、改良だけは地道に続けられているのだ。と言っても、企業側が新商品を売ろうとして規格を変更したり小手先の改良で目新しいものを作ろうとしているだけというのは否めないがな。
ロボットを制御する為のOSの変更もそうだ。ロボットに求められる機能は既に出尽くした感があり、それをこなすだけならもう数千年前のもので十分に可能だったのである。にも拘わらず次々と新しいOSを作ってはそれに見合った性能を持つロボットを新しく作って新商品として売り出すという訳だ。そうすることで経済活動を促し社会を拡大させて活性化を目指していかなければ人という種が衰退するという、一種の強迫観念に囚われているのかもしれないなと思わなくもない。
だがまあ、それも別にどうでもいいことだ。俺という個人には大して関係もない。そこまでやってても俺の妹一人救えないんだから、人間の技術や知恵なんてどこまで行ってもそんなに大したものじゃないっていう実感しかないのも事実だな。
それよりは、エレクシア、密、刃、伏、セシリアCQ202、鷹達とのんびりと楽しく面白おかしく生きる方がよっぽど人間らしい気もする。とは言いつつも、それ自体が、人間の技術と知恵の結晶であるエレクシアやセシリアCQ202や便利な機器や道具のおかげでもあるんだけどな。
そんなことを思いつつ、行きは二日を掛けた行程を、少し速度を上げて今日中に帰り着くことを目指す。運転してるのもエレクシアだし、問題ないだろう。
途中で休憩を取り食事をしながらも、順調に河を下っていく。
しかし、俺が満腹感と伏の体のぬくもりに心地好くなってうつらうつらしている時、エレクシアが突然声を上げた。
「マスター! 前方を!」
その声にハッとなって前を見た俺の目に飛び込んできたのは、フロントウインドウに叩き付けられる何者かの体だった。一瞬、状況が掴めなくて混乱したが、すぐにそれが見覚えのあるものだということに俺は気付いた。
鱗状の皮膚に太い尻尾。いつぞやのワニ少年だ。俺の直感を、エレクシアが裏付ける。
「往路で遭遇した個体に間違いありません」
そのワニ少年は、フロントウインドウにしがみつき、首だけを振り返らせて河を見ていた。人間に良く似た顔つきをしているだけあって、何か焦っているような怯えているような表情なのがよく分かった。天敵にでも追われているのだろうか。
と、その時―――――
「なんだ、ありゃ…!?」
河の中でうねうねと蠢くものを見て思わずそう声を漏らした俺の耳を、セシリアCQ202の悲鳴にも似た叫び声が叩いた。
「いけません! あれです! あれがコーネリアス号の乗員達を襲った生物です!!」
なるほど確かにそれは、透明な体を持った決まった形を持たない不定形生物だと俺も思った。ゲームなどに出てくる<スライム>そのものだと感じた。
だが、デカい。ローバーよりもデカいぞ…!?
ワニ少年はこいつに追われて逃げようとしてローバーに飛びついたのか。
すると、後ろのキャビンで「ぎゃーっ!」っという悲鳴が上がった。思わず振り返った俺の視線の先で、密がパニックを起こしたようにがくがくと体をゆすっているのが見えた。しかも、普段はあまり騒々しく動くことのない刃までが右往左往している。さらには、俺の足に温かいものが……しがみついていた伏が失禁したのが分かった。
そうか、密や刃がやけに河を恐れていたのは、こいつの所為だったのか…!!
それは、メイトギアの一機が、本来なら有り得ない行動を取った時だった。その時点ですでに壊れてたらしく、撃っても切っても死なないそいつの中に潜り込んで自身のバッテリーをショートさせさせるという有り得ない行動を取り、自らの破壊と引き換えに追い払ったそうなのだ。
だから高圧電流が効果があるかもしれないと判断されメイトギア用の予備のバッテリーを使って電撃を与える武器を作ったりもしたが、それ自体は一次的に怯ませる程度の効果しか見せなかったそうだった。
メイトギアによる自爆攻撃が何故そいつを追い払えたのか、電圧か電流量かそれ以外の理由かは不明だが、とにかくそういうことがあったというのは事実だった。
「なるほど参考になりました」
エレクシアがそう言ったが、俺は、
「おいおい、真似はしないでくれよ」
と釘を刺しておいた。一度ばかり追い払う為に彼女を失ったのではたまらないからな。
エレクシアの運転で、俺の宇宙船が不時着した場所を目指して河を下る。彼女が来た道を覚えているので何も心配はなかった。
ちなみに、俺の宇宙船には……特に名前は、ない。付けてない。
今時、あのクラスの宇宙船は自家用車と大差ない扱いである。<プレジャーボートのようなもの>と考えれば名前を付けるのは不自然ではないにしても、それよりもっと気軽で身近になった今ではそういう感じだ。名前を付ける人間もたまにいるが、そういうのはまあ変わり者の部類に入るだろう。そんな宇宙船でもコーネリアス号よりは高性能だった。ロボットも宇宙船も、求められる機能はとうの昔に完成されてその点では殆ど進歩していないが、改良だけは地道に続けられているのだ。と言っても、企業側が新商品を売ろうとして規格を変更したり小手先の改良で目新しいものを作ろうとしているだけというのは否めないがな。
ロボットを制御する為のOSの変更もそうだ。ロボットに求められる機能は既に出尽くした感があり、それをこなすだけならもう数千年前のもので十分に可能だったのである。にも拘わらず次々と新しいOSを作ってはそれに見合った性能を持つロボットを新しく作って新商品として売り出すという訳だ。そうすることで経済活動を促し社会を拡大させて活性化を目指していかなければ人という種が衰退するという、一種の強迫観念に囚われているのかもしれないなと思わなくもない。
だがまあ、それも別にどうでもいいことだ。俺という個人には大して関係もない。そこまでやってても俺の妹一人救えないんだから、人間の技術や知恵なんてどこまで行ってもそんなに大したものじゃないっていう実感しかないのも事実だな。
それよりは、エレクシア、密、刃、伏、セシリアCQ202、鷹達とのんびりと楽しく面白おかしく生きる方がよっぽど人間らしい気もする。とは言いつつも、それ自体が、人間の技術と知恵の結晶であるエレクシアやセシリアCQ202や便利な機器や道具のおかげでもあるんだけどな。
そんなことを思いつつ、行きは二日を掛けた行程を、少し速度を上げて今日中に帰り着くことを目指す。運転してるのもエレクシアだし、問題ないだろう。
途中で休憩を取り食事をしながらも、順調に河を下っていく。
しかし、俺が満腹感と伏の体のぬくもりに心地好くなってうつらうつらしている時、エレクシアが突然声を上げた。
「マスター! 前方を!」
その声にハッとなって前を見た俺の目に飛び込んできたのは、フロントウインドウに叩き付けられる何者かの体だった。一瞬、状況が掴めなくて混乱したが、すぐにそれが見覚えのあるものだということに俺は気付いた。
鱗状の皮膚に太い尻尾。いつぞやのワニ少年だ。俺の直感を、エレクシアが裏付ける。
「往路で遭遇した個体に間違いありません」
そのワニ少年は、フロントウインドウにしがみつき、首だけを振り返らせて河を見ていた。人間に良く似た顔つきをしているだけあって、何か焦っているような怯えているような表情なのがよく分かった。天敵にでも追われているのだろうか。
と、その時―――――
「なんだ、ありゃ…!?」
河の中でうねうねと蠢くものを見て思わずそう声を漏らした俺の耳を、セシリアCQ202の悲鳴にも似た叫び声が叩いた。
「いけません! あれです! あれがコーネリアス号の乗員達を襲った生物です!!」
なるほど確かにそれは、透明な体を持った決まった形を持たない不定形生物だと俺も思った。ゲームなどに出てくる<スライム>そのものだと感じた。
だが、デカい。ローバーよりもデカいぞ…!?
ワニ少年はこいつに追われて逃げようとしてローバーに飛びついたのか。
すると、後ろのキャビンで「ぎゃーっ!」っという悲鳴が上がった。思わず振り返った俺の視線の先で、密がパニックを起こしたようにがくがくと体をゆすっているのが見えた。しかも、普段はあまり騒々しく動くことのない刃までが右往左往している。さらには、俺の足に温かいものが……しがみついていた伏が失禁したのが分かった。
そうか、密や刃がやけに河を恐れていたのは、こいつの所為だったのか…!!
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