未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十

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ハーレム

生の実感(死が身近だからこそ生を実感できるのか)

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新暦元年八月二日



ところで、こうなってくると俺がどうしてあの不定形生物の存在を知りながらもコーネリアス号の乗員達のように宇宙船に閉じこもって生活しないのか不思議に思うかもしれないが、これはもう単純な<開き直り>というのが一番だった。

とは言え、そこまで開き直れるだけの根拠もあるにはあるんだ。

まず第一に、コーネリアス号が襲撃を受けた頻度だ。

襲撃については、記録を調べた限りでは二十年の間に八度。周囲で単に目撃されたというだけのものを含めても出現したのは僅かに十二度だ。実はそれほど頻繁に現れる訳じゃないということ。

第二に、ひそかじんの様子だ。

河に出た時には確かに酷く怯えてたから、あれは基本的に河を中心に生息してるんだろう。しかし、密林の中で普通にしている時にはそれほど警戒していない。つまりあれは河からそれほど離れられない、もしくは離れたくないんだと思われる。

コーネリアス号は川からさほど離れていない場所に着陸していたから襲われた可能性が高い。それに対してここは、河の本流からは一キロ近く離れている。近くに小さな川は何本か流れてるが、そこに近付く分にはひそかじんも怯えない。だから小さな川にはあれはまずいない。

第三に、あれから何度か、セシリアCQ202一人でメンテナンスのためにコーネリアス号に向かってもらったが、一度も襲撃を受けなかった。しかし、警戒のために放ったプローブは、水中に潜んでいたあの不定形生物と同じものを何度も捉えている。しかも複数。少なく見積もっても十匹はいる。にも拘らず襲ってこなかったのだ。なので必ず襲ってくるとは限らない。

第四に、周囲に監視カメラと対物センサーを多数設置してエレクシアと宇宙船にリンクし、既に早期警戒網は完成している。万が一あれが接近してきても早々に宇宙船の中に逃げ込めばいい。

となれば、さほど頻繁に現れる訳でもない危険な猛獣に怯えて宇宙船に閉じこもってる必要もないと開き直れたということだ。

ちなみに、俺のローバーのルーフ側の外気取り入れ口の蓋は、コーネリアス号の工作室で、コーネリアス号の、宇宙船として使うのでなければまったく必要なくなってしまった、応急修理用の資材の一部を利用して製作。交換済みである。これにより結果的には、ただの<外気取り入れ口の蓋>としては過剰品質になってしまったものの、別に<商品>として売りに出すわけじゃないからいいか。

コーネリアス号の乗員達は、データが不足していたこともあってあれを恐れるあまり狭い空間に閉じこもって精神を病んだ。ただし、それは決して彼らが精神的に弱かったという意味じゃない。

彼らは希望を捨てていなかったんだ。

『きっと救助がくる』

という希望を。

当事はまだ、夢色星団の危険性が知られていなかったのもあって、『救助は来ない』と考える理由がなかった。

しかも彼らには故郷に帰りたいという気持ちがあった。残してきた家族もいた。だからどうしても生き延びたかった。

皮肉なことに、それが逆に彼らを追い詰めたんだと思う。

一方、俺にはそれがない。

すでに家族もなく、帰れたところで待っているのは不法な金利を吹っかけられた借金のみ。妹の治療のために作った方の借金はすでに完済されている。不法な金利の借金についても、俺が見つけて権利を譲った鉱物資源惑星を適当に転がせば元を取ってもおつりがくるはずだから、帰らなきゃならない理由がない。というかそもそも正規の金利で計算すればそっちもとっくに完済してるんだよな。

だったらこうやってこの地の環境や生態系を受け入れてしまった方が楽なんじゃないかな。

星暦二〇〇〇年代現在、老化抑制技術が実用化された俺達人間の健康寿命は二百年余り。平均寿命は二百三十年ほど。平均寿命まで生きるとすれば俺の寿命はあと百年余り。しかしさすがに医療インフラのないここじゃ健康寿命を越えて生きるのも難しいだろうから、それで考えれば精々七十年かそこら。多少早まったところでどうってこともないだろう。

びくびくしてても仕方ない。生きる時は生きるし死ぬ時は死ぬ。毎日楽しく悔いなく生きたらそれでいいさ。

正直言って俺は、ここで遭難してからの方が毎日が充実してる。借金を重ねて必死になって働いても妹一人助けられなかったこれまでの人生と比べても、『生きてる』って実感がある。もうそれでいいじゃないか。





新暦元年八月二十二日



とまあ、あれやこれやで、生活環境も充実し、単なるサバイバルではない普通の<暮らし>を俺達は始めていた。

しかし、こうなってくるとますますここでの俺の存在意義というのがよく分からなくなってくる。生きてる実感は以前よりは圧倒的にあるんだが、その一方で俺の役割みたいなものについては実に曖昧模糊なんだ。

基本的に、することと言うかできることがないんだよ。金が要らないから、金を稼ぐような仕事をする必要がなく、家事はセシリアCQ202がいれば困らないし、それ以外はエレクシアがいれば困らなかった。

ライオンのオスは、繁殖の時と外敵が来た時以外はぐうたらしてるだけと言うが、まさにそれだった気がする。

そういう意味では、正しく<ハーレムの主>なんだろうな。

それに比べると、ひそか達は自分というものをすごくわきまえてる気がするよ。余計なことは考えず、自分の命を毎日満喫してる。

ひそかふくはそれぞれ濃密に俺に密着するタイプだったからか、よく衝突した。ヤキモチということか。俺を挟んで互いに歯を剥き出して威嚇し合い牽制し合ってた。

<嫁>としての序列で言えばふくは、エレクシア、ひそかじんに次ぐ四位ということになるんだろうが、序列二位のひそかの地位を狙っている感じかもしれない。序列一位のエレクシアの地位はまさに絶対王者の風格で不動だから、可能性のある二位の座を狙ってるのかね。これも、群れで生きる動物ではよくあることか。単純な<強さ>ではふくの方に分があるだろうからな。

とは言え、群れの頂点である俺が『やめろ!』と一喝すると、二人ともしゅんとした感じで収まってくれた。俺のことを好きでいてくれてるんだろうな。大変だが、悪い気はしない。

その二人に比べればじんはマイペースだった。俺の傍にひそかがいてもふくがいてもそれほど気にする様子もなく毎日の日課である体の擦り付けを淡々と行った後は大人しく部屋の隅で丸まってるだけだ。ちなみに新しい<家>の中でのじんのお気に入りの場所は、日が良く当たって温かくなる側の壁だった。

ようは勝手にローバーの屋根に住み着いてるだけだし、ちからはるかは既にカップルが成立してるしで、こちらは特に問題ない。

ちなみに、ローバーを使うたびにパラソルを脱着するのが面倒なので、リモコン一つで開閉できて、さらにボックスに収納できる、よう専用のパラソルをコーネリアス号の工作室で作ってルーフキャリアに設置した。しかも、リモコンだけじゃなくボックス側のボタンでも操作できるようにすると、エレクシアが彼女の前で操作してみせただけですぐにそれを覚えて、自分で開くことができるようになったのだった。

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