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シモーヌ

返却(拝借したものがあったからな)

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「俺は、エレクシアと二人でこの惑星に不時着して、ここで生きていく覚悟を決めてね。で、彼女達のボスに収まったという訳だ」

メイフェアがほまれと一緒に群れに帰って彼女が一人になった時、俺は秋嶋あきしまシモーヌと二人で話をしていた。セシリアが用意してくれた食事をとりつつ、メディカルルームのモニターには、ひそか達が映った映像を表示しながら。

もっとも、この時、彼女は明らかに「ええ…?」とドン引きしてる表情をしてたけどな。

無理もないか。いくら人間に近い姿をしていても、ある意味じゃクリーチャーみたいなもんだし。ただ、彼女達がコーネリアス号の乗員達の遺伝情報を持ったキメラであり、元は人間だったと分かると少しは表情も和らいだ気がする。

「じゃあ、彼女達は私達の子孫のようなものという訳ですね」

厳密には違っても、遺伝子を受け継いでいるという意味では確かにそうだから、それで納得しようとしてるなら「そうじゃない」と言う必要は感じなかった。

取り敢えず、俺の方の状況も一通り説明し終わった時点で、彼女には休んでもらうことにする。

「申し訳ないが、貴女のことはしばらく監視させてもらうことになる。監視者は俺のメイトギアのエレクシアだが」

「分かります。私達でも貴方と同じ立場になればそうするでしょうから……

命を助けていただいたことには本当に感謝します」

そう言って改めて丁寧に頭を下げてくれた彼女に、俺は心底安堵していた気がする。『ああ、人間なんだなあ…』とね。

体は透明でも、完全に彼女は<秋嶋シモーヌ>なんだ。メイフェアもセシリアもそう言っていた。

「彼女は秋嶋シモーヌに間違いありません」

と。

となると、やっぱり<あれ>は返さなくちゃいけないかなあ……



翌日、俺は再び彼女に面会した。今度はひかりも連れて。俺の家族の中では最も人間に近いこの子なら、彼女も接しやすいだろう。そして何より、彼女に返さなきゃいけないものがある。

「こんにちは、ひかりです」

ひかりは丁寧にそう言って挨拶してくれた。はるかの姿に慣れてるこの子は、透明な体を前にしてもまったく普通だった。その様子に彼女も安心したらしい。

「初めまして、ひかりちゃん。私は秋嶋シモーヌです」

だが、今回はただ紹介する為にひかりを連れてきたわけじゃない。彼女に<あれ>を返す為だ。コーネリアス号の彼女の自室から拝借してきた<絵本>の数々を。

「これ……おねえさんのえほん。かりてたのかえす……」

そう言ってひかりが差し出したのは、この子が最も好きで良く読んでた、シンデレラと白雪姫の絵本だった。

しかしそれを見た秋嶋シモーヌは、光のことを優しく見詰めて言った。

「絵本は読まれてこそ絵本なの。あなたが大切にしててくれたのね。

ありがとう。それはもうあなたのものよ」

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