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子供達

閑話休題(ある日の光)

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新暦〇〇〇九年二月十日。



満年齢で六歳。外見上はもうミドルティーンくらいになったひかりの朝は早い。基本的には空が白み始めると目を覚まし、活動を始める。これは、母親であるひそかや弟であるほむらあらたも同じなので、ボノボ人間パパニアンの元々の習性であると思われる。

ひそかはそのまま密林に入り朝食とトイレを済ますようだ。セシリアが俺の生活パターンに合わせて食事の用意をするので、それまで我慢できないんだろう。ほむらあらたひそかについて行くことが多い。ボノボ人間パパニアンとしての生き方を学ぶ為だろうな。

と言っても他の群れとも縄張りを接しているので、あまり奥深くまでは行かないが。

ひかりもそんな母や弟達と同じように密林に入る。しかしこちらはただの散歩のようだ。いや、もしかすると縄張りの偵察かもしれない。彼女もあまり奥深くは行かないし、エレクシアとリンクしたマイクロドローンが常に監視しているので心配はしていない。そもそも、殆どの動物達は俺達を警戒してあまり近寄ってこないという事情もある。ボクサー竜ボクサーに至っては気配さえ見せない。よっぽど恐れているんだろう。

今日は、ひそか達が、虫除けとして自分達の毛に塗り付ける植物を手に取り実際に塗り付けるところにひかりは遭遇したようだ。彼女にはひそか達のような体毛がないのでそれを真似はしない。漂白成分が強いので、あまり肌に直につけると荒れてしまうからだろう。それに、その植物から採取した成分で虫除けも作って縄張り内に設置してることもあり、危険な虫はそもそも寄ってこない。

ひそか達がそれをするのはあくまで習慣としてだな。それにほむらあらたが巣立った時にボノボ人間パパニアンとして普通に生きていけないと困るので、必要なことについてはちゃんと教えておいてあげて欲しい。

ちなみにこれ、ボノボ人間パパニアン以外はやらないようだ。たぶん既に免疫を獲得してるんだろう。だから本当はボノボ人間パパニアン達も必要ないのかもしれないが、習慣として残ってるだけかもしれない。虫除けという以上に、あの白い毛並みを維持する為だろうか。

そんな母や弟達の様子を見守るひかりが何を思っているのか、その表情から読み取ることは難しい。人間ほどは表情豊かじゃないからな。ひそかが自分の本当の母親だということは既に理解している。母親に育ててもらえなかったことも。

彼女はそれについても何も言わない。気にしてないということなのか、気にはしているが仕方ないと割り切っているのか、それとも俺とエレクシアがいればそれで十分と思ってくれているのか。

そんな彼女の傍に、イレーネが現れた。するとひかりは、

「ちょっと待ってて。絵本取ってくる」

と声を掛けて家に絵本を取りに戻り、足を引きずりながらついてきたイレーネと一緒にタープの下で椅子に座り、絵本の読み聞かせをする。

そしてこの頃、俺はまだ夢の中なのだった。

ま、マイクロドローンに記録されてたひかりの様子を後で見ただけだな。

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