337 / 2,961
幸せ
自分に都合のいい解釈(に過ぎなくても)
しおりを挟む
新暦〇〇二二年五月十八日。
「たまにはいいですね。こうやってぼんやりするのも」
また俺達チームAが休みの日、俺の隣でシモーヌも釣り糸を垂らしていた。その様子が、まるで同じ釣りを趣味にしている老夫婦のようにも思えて、なんだか頬が緩んでしまう。
「だろ? 考え事するのにもちょうどいいし」
「確かに。何の責任も目標もない釣りだからこそ、でしょうけど」
「ああ。魚を捕らえたいだけなら網ですくえばいいのに、わざわざこうやって釣り糸を垂らしてただかかるのを待つ、なんていう<不毛な行為>が今なお趣味として残っている理由が分かる気がするよ。すごく、癒されると言うか」
「分かります。それ」
なんていうやり取りを、エレクシアが見守ってくれている。
それをつい申し訳なく感じてしまうものの、エレクシア自身は決して自分が置かれてる状況を僻んだりすることもない。彼女は<ロボット>だから。
彼女がもし、本当にただの機械にしか見えない、それこそドーベルマンDK-aのようなロボットだったら、こうやって待機してても何とも思わないだろう。むしろ休んでくれてるようにさえ見えるかもしれない。なのに、人間の姿をしているからこそ、申し訳ないような気持ちにもなってしまう。
メイトギアが人間の姿をしてるのは、あくまで心理的な圧迫を和らげる為の筈だった。しかしそれが同時に、必要以上の共感を呼び覚ましてしまって、しなくていい同情をしてしまうというのも、矛盾と言えば矛盾なのか。
なので、
「そこのチェアに腰掛けて、待機しててくれ」
と、わざわざ命令する必要があったりもする。
「承知しました」
彼女はそう応え、俺がいつも使ってるチェアにもたれて待機してくれた。すると不思議なもので、途端に寛いでるようにも見えるんだから、人間の感覚というのは、案外、いい加減なものだと分かる。
彼女はロボットなので、立ちっぱなしでも疲れないし、むしろ咄嗟の対応の為には立っていた方がいいのは分かっているのに、それよりも『立たせっぱなしにしていることの罪悪感を和らげるのを優先』してしまうのも、人間というものか。
まあ、今のところは、そこまで切羽詰まった危険がある訳でもないからな。何か危険な生物が迫ってたとしても、早期警戒網のおかげで早々に対処できるし。
なんてことも、のんびりとぼんやりと考えることができる。いや、実にいいのが見付かったな。
なんだかそれも、悠と力がもたらしてくれたもののような気がする。
たとえそれがただの『自分に都合のいい解釈』に過ぎなくても、気持ちが休まるのならそう思っておけばいいんだろうな。
ところで、『遺体が埋められてる池で釣った魚なんてよく食べられるな』と思うかもしれないが、ここで長く暮らしてると、命ってのはあくまで循環の一部だっていうのが実感できるのか、なんだか慣れてしまったよ。今じゃあんまり気にならない。
「たまにはいいですね。こうやってぼんやりするのも」
また俺達チームAが休みの日、俺の隣でシモーヌも釣り糸を垂らしていた。その様子が、まるで同じ釣りを趣味にしている老夫婦のようにも思えて、なんだか頬が緩んでしまう。
「だろ? 考え事するのにもちょうどいいし」
「確かに。何の責任も目標もない釣りだからこそ、でしょうけど」
「ああ。魚を捕らえたいだけなら網ですくえばいいのに、わざわざこうやって釣り糸を垂らしてただかかるのを待つ、なんていう<不毛な行為>が今なお趣味として残っている理由が分かる気がするよ。すごく、癒されると言うか」
「分かります。それ」
なんていうやり取りを、エレクシアが見守ってくれている。
それをつい申し訳なく感じてしまうものの、エレクシア自身は決して自分が置かれてる状況を僻んだりすることもない。彼女は<ロボット>だから。
彼女がもし、本当にただの機械にしか見えない、それこそドーベルマンDK-aのようなロボットだったら、こうやって待機してても何とも思わないだろう。むしろ休んでくれてるようにさえ見えるかもしれない。なのに、人間の姿をしているからこそ、申し訳ないような気持ちにもなってしまう。
メイトギアが人間の姿をしてるのは、あくまで心理的な圧迫を和らげる為の筈だった。しかしそれが同時に、必要以上の共感を呼び覚ましてしまって、しなくていい同情をしてしまうというのも、矛盾と言えば矛盾なのか。
なので、
「そこのチェアに腰掛けて、待機しててくれ」
と、わざわざ命令する必要があったりもする。
「承知しました」
彼女はそう応え、俺がいつも使ってるチェアにもたれて待機してくれた。すると不思議なもので、途端に寛いでるようにも見えるんだから、人間の感覚というのは、案外、いい加減なものだと分かる。
彼女はロボットなので、立ちっぱなしでも疲れないし、むしろ咄嗟の対応の為には立っていた方がいいのは分かっているのに、それよりも『立たせっぱなしにしていることの罪悪感を和らげるのを優先』してしまうのも、人間というものか。
まあ、今のところは、そこまで切羽詰まった危険がある訳でもないからな。何か危険な生物が迫ってたとしても、早期警戒網のおかげで早々に対処できるし。
なんてことも、のんびりとぼんやりと考えることができる。いや、実にいいのが見付かったな。
なんだかそれも、悠と力がもたらしてくれたもののような気がする。
たとえそれがただの『自分に都合のいい解釈』に過ぎなくても、気持ちが休まるのならそう思っておけばいいんだろうな。
ところで、『遺体が埋められてる池で釣った魚なんてよく食べられるな』と思うかもしれないが、ここで長く暮らしてると、命ってのはあくまで循環の一部だっていうのが実感できるのか、なんだか慣れてしまったよ。今じゃあんまり気にならない。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる