472 / 2,961
新世代
誉編 日々 その3
しおりを挟む
「いーっ! ひぃーっ!!」
いささか情けない悲鳴を上げる相手の腕を極めていた手を誉が僅かに緩めると、そいつはバッと飛び退き、脇目も振らず一目散に逃げていった。
とどめは刺さない。命までは奪わないというのが、パパニアン同士の暗黙の了解だと思われる。
ここで殺してしまえば来なくなるはずだと思ってしまう者もいるだろうが、この種の小競り合いはそもそもパパニアンの習性なので、あのボスを殺したとしても新しいボスがまた来るだけなので、キリがないのだ。
そんなことをしていては最後には他の全ての群れを皆殺しにしないといけなくなるし、人間ほどはしつこく恨みを抱いたりしないとはいえ多少はそういうのもあるから、余計に敵を増やすことにもなりかねない。
『敵は殲滅するべきだ』というのは、後先考えない短絡的な思考だと言えるだろう。
そもそも、<殲滅するべき敵>とは、どこまでを指す? 実際に戦闘をする者か? それとも、敵対する勢力の<家族>や<親類>、関わりのある者すべてか? どこまでを殺せばいい?
親を殺された子はその恨みを晴らす為に狙ってくるだろうから、その子も殺すのか?
まったくの他人であっても親しくしてる者なら仇を取りたいと思うかもしれないから、敵の友人知人も殺すのか?
人類の歴史の中でそれを実行しようとした者がどんな末路を迎えたかをよく調べれば、その考え方に果たして合理性があるのかどうか分かると思うし、それが分かったからこそ、たとえ紛争になっても相手を殲滅しようとはしなくなったんだろうな。
もっとも、今の紛争とかは実際に戦場に出るのはロボットとそれを指揮する人間だけだから、恨みも少ないというのもあるんだろうが。
結局、敵が来るたびに撃退するだけに留めるのが一番面倒が少ないとも言えるのかもしれない。そうしている間は、被害が出ても『お互い様』とも言えるからな。
もちろん、それで実際に犠牲になった人間やその近しい者にとっては<仇>が憎いだろう。復讐したいと思うだろう。しかしそれは相手も同じなんじゃないのか?
『どちらが先に仕掛けた』
そんな話になればお互いに、
『相手が原因を作った』
という水掛け論になるのは、過去の無数の実例が証明している。そして負けた方が<原因を作った悪者>にされるんだ。
『そんなお利口さんな優等生の理屈で納得できるか!!』
そう言う者もいるだろう。だが、事実だ。
現実を見ずに自分の恨みを晴らすことに走って争いを拡大してそれでさらに被害が出たら、どうやって責任を取るつもりなんだ?
『犠牲者に我慢しろと言うのか!? 不公平だろ!? 自分の家族が犠牲になっても同じことを言えんのか!?』
と言うかもしれないが、ならそれで同じように苦しむ人間を増やすのが<公平>なのか?
『自分だけが苦しむのは不公平だからお前らも同じように苦しめ! それが公平だ』
とでも言うのか?
グンタイ竜や蛟を駆除した俺が言うのは矛盾に聞こえるかもしれない。
だが俺はあの判断が本当に正しかったのかどうか、実は時間が経てばたつほど分からなくなってきてるんだ。
けれど、自分の下した判断が消えることはない以上、正しかったか間違ってたかではなく、自分が判断を下したという事実とただ向き合っていくべきだと思っている。
それが、判断を下した人間が負わなきゃいけない責任だろう。
いささか情けない悲鳴を上げる相手の腕を極めていた手を誉が僅かに緩めると、そいつはバッと飛び退き、脇目も振らず一目散に逃げていった。
とどめは刺さない。命までは奪わないというのが、パパニアン同士の暗黙の了解だと思われる。
ここで殺してしまえば来なくなるはずだと思ってしまう者もいるだろうが、この種の小競り合いはそもそもパパニアンの習性なので、あのボスを殺したとしても新しいボスがまた来るだけなので、キリがないのだ。
そんなことをしていては最後には他の全ての群れを皆殺しにしないといけなくなるし、人間ほどはしつこく恨みを抱いたりしないとはいえ多少はそういうのもあるから、余計に敵を増やすことにもなりかねない。
『敵は殲滅するべきだ』というのは、後先考えない短絡的な思考だと言えるだろう。
そもそも、<殲滅するべき敵>とは、どこまでを指す? 実際に戦闘をする者か? それとも、敵対する勢力の<家族>や<親類>、関わりのある者すべてか? どこまでを殺せばいい?
親を殺された子はその恨みを晴らす為に狙ってくるだろうから、その子も殺すのか?
まったくの他人であっても親しくしてる者なら仇を取りたいと思うかもしれないから、敵の友人知人も殺すのか?
人類の歴史の中でそれを実行しようとした者がどんな末路を迎えたかをよく調べれば、その考え方に果たして合理性があるのかどうか分かると思うし、それが分かったからこそ、たとえ紛争になっても相手を殲滅しようとはしなくなったんだろうな。
もっとも、今の紛争とかは実際に戦場に出るのはロボットとそれを指揮する人間だけだから、恨みも少ないというのもあるんだろうが。
結局、敵が来るたびに撃退するだけに留めるのが一番面倒が少ないとも言えるのかもしれない。そうしている間は、被害が出ても『お互い様』とも言えるからな。
もちろん、それで実際に犠牲になった人間やその近しい者にとっては<仇>が憎いだろう。復讐したいと思うだろう。しかしそれは相手も同じなんじゃないのか?
『どちらが先に仕掛けた』
そんな話になればお互いに、
『相手が原因を作った』
という水掛け論になるのは、過去の無数の実例が証明している。そして負けた方が<原因を作った悪者>にされるんだ。
『そんなお利口さんな優等生の理屈で納得できるか!!』
そう言う者もいるだろう。だが、事実だ。
現実を見ずに自分の恨みを晴らすことに走って争いを拡大してそれでさらに被害が出たら、どうやって責任を取るつもりなんだ?
『犠牲者に我慢しろと言うのか!? 不公平だろ!? 自分の家族が犠牲になっても同じことを言えんのか!?』
と言うかもしれないが、ならそれで同じように苦しむ人間を増やすのが<公平>なのか?
『自分だけが苦しむのは不公平だからお前らも同じように苦しめ! それが公平だ』
とでも言うのか?
グンタイ竜や蛟を駆除した俺が言うのは矛盾に聞こえるかもしれない。
だが俺はあの判断が本当に正しかったのかどうか、実は時間が経てばたつほど分からなくなってきてるんだ。
けれど、自分の下した判断が消えることはない以上、正しかったか間違ってたかではなく、自分が判断を下したという事実とただ向き合っていくべきだと思っている。
それが、判断を下した人間が負わなきゃいけない責任だろう。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる