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新世代
翔編 関係が壊れるかもと
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『逃げ場はありませんよ』
女性にそんな風に言われて唇を奪われるとか、俺ってつくづく情けない男だなあ……
なんて落ち込んでも仕方ないのは分かってる。
だから腹を括って、シモーヌを受け入れた。
久しぶりの女性の感触に、疲れたとか飽きたとか口では言っててもそれなりに気持ちは昂ぶる。ファンデーションを取ればその体は透明ではあっても、肌に感じるそれだけなら本当に普通の人間と何も変わらない。
何十年かぶり、だな。
密達は、やっぱり毛皮とかあって触れた時の感触は違ってたし。あれはあれで素晴らしかったが、こっちもやっぱりいいなあ。
とは言え、がっついてしまうほどは理性も失われない。さすがに俺もそれなりの年齢だしな。
わきまえなきゃとは思うよ。
シモーヌの方も落ち着きがあって、俺達はただお互いの存在を確かめ合うように、ぬくもりを伝え合うように、ゆったりと体を合わせた。
貪るようなそれじゃない。ただ欲求を満たすだけのそれじゃない。癒し癒されるそれに、俺も気持ちが解けていく。
「どうして私が好きな愛し合い方を知ってるんですか……?」
濡れた瞳でシモーヌが見詰めて、囁くように問い掛けてくる。
「知ってるも何も、俺がそうしたかっただけだよ……」
正直に答えると、シモーヌは蕩けるような笑顔で、
「あなたに出逢えて良かった……」
と言ってくれた。
<コーネリアス号乗員、秋嶋シモーヌ>としては他に愛している男性もいただろう。だが、今、俺の目の前にいるシモーヌからすればその男性は、自分と同じ姿をした別人の愛する人だ。
それは一体、どういう気持ちがするものなんだろうか……?
単に同じ遺伝子を持つ別人ということであれば一卵性双生児ならそういうこともあるかもしれない。しかし彼女の場合は、記憶も人格そのものも同じものだったんだ。別々の生き方をすることになって今ではもう記憶も人格の上でも別人かもしれないが、それでも一卵性双生児とはまた違うのも事実だよな。
ただ、これについてはそれこそもう彼女にしか分からないことだ。俺があれこれ詮索しても意味がないか。
今、この時、目の前にいる彼女が俺を選んでくれたのなら、俺は素直にそれを喜びたい。
「愛してる…シモーヌ……」
自然とそう言えた。そんな俺に、彼女も。
「私も愛してる…連是……」
良き隣人として傍にいるのが当然になっていた俺達は、こうやって肌を合わせてもやっぱり何かが変わってしまった気がしなかった。変わってしまうかもしれないとも心のどこかで思っていたが、杞憂だったな。
しかも……
「あなたと結ばれると今までの関係が壊れるかもと少し心配してたけど、そんなことはなかった……私はちゃんとあなたのことが見えてたんだなって、私が見たいあなたの姿を見てただけじゃなく、ちゃんとあなた自身が見えてたんだなって実感しました……」
囁くような彼女の言葉に、俺も満たされていたのだった。
女性にそんな風に言われて唇を奪われるとか、俺ってつくづく情けない男だなあ……
なんて落ち込んでも仕方ないのは分かってる。
だから腹を括って、シモーヌを受け入れた。
久しぶりの女性の感触に、疲れたとか飽きたとか口では言っててもそれなりに気持ちは昂ぶる。ファンデーションを取ればその体は透明ではあっても、肌に感じるそれだけなら本当に普通の人間と何も変わらない。
何十年かぶり、だな。
密達は、やっぱり毛皮とかあって触れた時の感触は違ってたし。あれはあれで素晴らしかったが、こっちもやっぱりいいなあ。
とは言え、がっついてしまうほどは理性も失われない。さすがに俺もそれなりの年齢だしな。
わきまえなきゃとは思うよ。
シモーヌの方も落ち着きがあって、俺達はただお互いの存在を確かめ合うように、ぬくもりを伝え合うように、ゆったりと体を合わせた。
貪るようなそれじゃない。ただ欲求を満たすだけのそれじゃない。癒し癒されるそれに、俺も気持ちが解けていく。
「どうして私が好きな愛し合い方を知ってるんですか……?」
濡れた瞳でシモーヌが見詰めて、囁くように問い掛けてくる。
「知ってるも何も、俺がそうしたかっただけだよ……」
正直に答えると、シモーヌは蕩けるような笑顔で、
「あなたに出逢えて良かった……」
と言ってくれた。
<コーネリアス号乗員、秋嶋シモーヌ>としては他に愛している男性もいただろう。だが、今、俺の目の前にいるシモーヌからすればその男性は、自分と同じ姿をした別人の愛する人だ。
それは一体、どういう気持ちがするものなんだろうか……?
単に同じ遺伝子を持つ別人ということであれば一卵性双生児ならそういうこともあるかもしれない。しかし彼女の場合は、記憶も人格そのものも同じものだったんだ。別々の生き方をすることになって今ではもう記憶も人格の上でも別人かもしれないが、それでも一卵性双生児とはまた違うのも事実だよな。
ただ、これについてはそれこそもう彼女にしか分からないことだ。俺があれこれ詮索しても意味がないか。
今、この時、目の前にいる彼女が俺を選んでくれたのなら、俺は素直にそれを喜びたい。
「愛してる…シモーヌ……」
自然とそう言えた。そんな俺に、彼女も。
「私も愛してる…連是……」
良き隣人として傍にいるのが当然になっていた俺達は、こうやって肌を合わせてもやっぱり何かが変わってしまった気がしなかった。変わってしまうかもしれないとも心のどこかで思っていたが、杞憂だったな。
しかも……
「あなたと結ばれると今までの関係が壊れるかもと少し心配してたけど、そんなことはなかった……私はちゃんとあなたのことが見えてたんだなって、私が見たいあなたの姿を見てただけじゃなく、ちゃんとあなた自身が見えてたんだなって実感しました……」
囁くような彼女の言葉に、俺も満たされていたのだった。
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