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新世代
翔編 先制攻撃
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新暦〇〇三十一年六月十九日。
だが、翌早朝、事態は急に動いた。マンティアンの接近に気付いた凌が、先に攻撃を仕掛けたんだ。たぶん、鈴良を守るために。
「よせ! 凌! そいつはドラゼに任せろ!」
緊急事態を察した光莉号からの連絡を受けたエレクシアが俺を叩き起こしてくれてタブレットを見たことで思わず叫んでしまったが、当然、そんな声は届かない。
凌は、アリゼドラゼ村に向かって移動を始めたマンティアンに、空から襲い掛かったそうだ。
しかし他の動物に対しては必殺の一撃とも言える急降下からの爪も、マンティアンは敢えて自分の頭を向けることで受け止めた。
目は手で庇いつつ。
完全にアクシーズの攻撃への対処の仕方を承知している個体だ。どうやら元々ここにいたマンティアンの個体を退けて縄張りを奪った、非常に強い若い固体のようである。
真っ向からぶつかれば明も危ないかも知れないという印象も正直あった。
それが明達と衝突することのないように、ここで食い止めておきたいというのは本音としてある。
だが、それはあくまでドラゼの役目だ。凌にやらせるつもりなどなかった。
事態を察知したアリゼとドラゼも駆けつけるものの、樹上では簡単には手が出せない。そのために自動小銃も装備させてたが、凌がいることで狙いが付けられない。
自動小銃では、たとえ実包を込めてもマンティアンには致命的なダメージを与えられないにしても、他の動物に対するスタン弾程度の効果はある。痛い思いをさせて危険だと認識させる程度の効果は。
そのために実包を込めていたことで余計に使えなかった。万が一にも凌に当たればと考えると。
エレクシアレベルだと凌に当てないように撃つほどの精密な射撃ができる可能性もあるものの、アリゼやドラゼの性能ではそこまでの射撃はできない。それほどの精度は実現できなかった。
しかも、メイトギアほどは樹上を自在に動けるだけの運動性能もない。蛟を相手にしても互角以上に戦えるようにと設計してあるが、それはあくまで地上での話だ。木に登る程度はできても戦うとなれば次元が違う性能が要求される。
あとは、凌自身が引き際をわきまえて逃げてくれることを期待するしかない。
なのに、凌は引こうとしなかった。あいつも必死なんだ。鈴良と、彼女の胎に宿ったであろう自分の子を守るために。
「ばかやろう! だからってお前が死んだら意味がないだろう!!」
俺は思わず叫びながら、準備を整えた。今から向かって間に合うとは思えないが、じっとしていられなかったんだ。
「気を付けて! 連是!」
「おう! 分かってる!」
シモーヌに見送られて家を出ると、すでにエレクシアがローバーの用意を済ませて俺を待っていた。
完全に俺がどういう行動に出るか読まれてるな。
だが、翌早朝、事態は急に動いた。マンティアンの接近に気付いた凌が、先に攻撃を仕掛けたんだ。たぶん、鈴良を守るために。
「よせ! 凌! そいつはドラゼに任せろ!」
緊急事態を察した光莉号からの連絡を受けたエレクシアが俺を叩き起こしてくれてタブレットを見たことで思わず叫んでしまったが、当然、そんな声は届かない。
凌は、アリゼドラゼ村に向かって移動を始めたマンティアンに、空から襲い掛かったそうだ。
しかし他の動物に対しては必殺の一撃とも言える急降下からの爪も、マンティアンは敢えて自分の頭を向けることで受け止めた。
目は手で庇いつつ。
完全にアクシーズの攻撃への対処の仕方を承知している個体だ。どうやら元々ここにいたマンティアンの個体を退けて縄張りを奪った、非常に強い若い固体のようである。
真っ向からぶつかれば明も危ないかも知れないという印象も正直あった。
それが明達と衝突することのないように、ここで食い止めておきたいというのは本音としてある。
だが、それはあくまでドラゼの役目だ。凌にやらせるつもりなどなかった。
事態を察知したアリゼとドラゼも駆けつけるものの、樹上では簡単には手が出せない。そのために自動小銃も装備させてたが、凌がいることで狙いが付けられない。
自動小銃では、たとえ実包を込めてもマンティアンには致命的なダメージを与えられないにしても、他の動物に対するスタン弾程度の効果はある。痛い思いをさせて危険だと認識させる程度の効果は。
そのために実包を込めていたことで余計に使えなかった。万が一にも凌に当たればと考えると。
エレクシアレベルだと凌に当てないように撃つほどの精密な射撃ができる可能性もあるものの、アリゼやドラゼの性能ではそこまでの射撃はできない。それほどの精度は実現できなかった。
しかも、メイトギアほどは樹上を自在に動けるだけの運動性能もない。蛟を相手にしても互角以上に戦えるようにと設計してあるが、それはあくまで地上での話だ。木に登る程度はできても戦うとなれば次元が違う性能が要求される。
あとは、凌自身が引き際をわきまえて逃げてくれることを期待するしかない。
なのに、凌は引こうとしなかった。あいつも必死なんだ。鈴良と、彼女の胎に宿ったであろう自分の子を守るために。
「ばかやろう! だからってお前が死んだら意味がないだろう!!」
俺は思わず叫びながら、準備を整えた。今から向かって間に合うとは思えないが、じっとしていられなかったんだ。
「気を付けて! 連是!」
「おう! 分かってる!」
シモーヌに見送られて家を出ると、すでにエレクシアがローバーの用意を済ませて俺を待っていた。
完全に俺がどういう行動に出るか読まれてるな。
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