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第三世代
ビアンカ編 職業軍人
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素戔嗚を相手にしてビクキアテグ村に戻ったビアンカは、久利生に縋りついた。自分が志願したこととはいえ、幼い素戔嗚を打ち据えるのは、彼女にとっては辛いことだったんだろう。
「……テロリストの子供達の目が、頭をよぎりました……素戔嗚は、彼らと同じ目をしてたんです……」
「そうか……」
ビアンカと久利生のやり取りで、俺は思い出していた。
彼女が軍人として、テロリスト相手の戦闘を何度も経験してきていることを。そしてその中で、彼女は、テロリストとして銃を向けてきた少年兵を撃ったことがあると……
「撃たなければ、私が死んでいました……私じゃなくても、仲間が死んでいたかもしれない……だから、引き金を引いたことは後悔していません……でも、命が尽きるその瞬間まで、私に強い憤りを見せていたあの目が、今も頭から離れないんです……」
いくら、実際にその経験をした<オリジナルのビアンカ・ラッセ>とは厳密には<別人>であっても、記憶はオリジナルのそれと同じものを持っているのも事実。
<オリジナルのビアンカ・ラッセ>も職業軍人として任務に忠実だったという彼女ではあるが、それでも、オリジナルの方も含めて、ビアンカは人間だ。機械のように割り切れはしない。
心を持たないロボットなら、そんなことをいつまでも引きずったりしないのにな……
「辛いなら、無理をしなくてもいい。君はもう軍人じゃないんだ……」
ビアンカを抱き締めながら、久利生が言う。そうだ。俺達の仲間であるビアンカは、決して本当の軍人じゃない。軍人だった<オリジナルのビアンカ・ラッセ>の記憶を持っているというだけだ。
だから本来は、軍人であったことに拘る必要もない。
けれど、彼女は、
「……」
静かに首を横に振って、言った。
「いえ、これは私自身が決めたことです。素戔嗚がどうなるんだとしても、私自身がそれに関わりたい。彼の命の幕を引くことになるのなら、それは私自身の手でと思うんです。私の知らないところでというのは、嫌です……」
久利生の言うことならなんでも受け入れそうな印象もある彼女だが、それでも彼女は一人の自立した人間として、自分の意志で自分自身の選択を行うことができるんだと、改めて実感した。
最初は、ただ、『レオンだから』ということだったのかもしれない。自分が気に入ってるレオンという種族の子供だから情が移っただけかもしれない。けれど、実際に対峙して、素戔嗚の命そのものに触れて、彼の存在を認めたからこそ、後には引けない。
彼女がそう覚悟するのなら、俺達はそれをサポートするだけだ。
「……テロリストの子供達の目が、頭をよぎりました……素戔嗚は、彼らと同じ目をしてたんです……」
「そうか……」
ビアンカと久利生のやり取りで、俺は思い出していた。
彼女が軍人として、テロリスト相手の戦闘を何度も経験してきていることを。そしてその中で、彼女は、テロリストとして銃を向けてきた少年兵を撃ったことがあると……
「撃たなければ、私が死んでいました……私じゃなくても、仲間が死んでいたかもしれない……だから、引き金を引いたことは後悔していません……でも、命が尽きるその瞬間まで、私に強い憤りを見せていたあの目が、今も頭から離れないんです……」
いくら、実際にその経験をした<オリジナルのビアンカ・ラッセ>とは厳密には<別人>であっても、記憶はオリジナルのそれと同じものを持っているのも事実。
<オリジナルのビアンカ・ラッセ>も職業軍人として任務に忠実だったという彼女ではあるが、それでも、オリジナルの方も含めて、ビアンカは人間だ。機械のように割り切れはしない。
心を持たないロボットなら、そんなことをいつまでも引きずったりしないのにな……
「辛いなら、無理をしなくてもいい。君はもう軍人じゃないんだ……」
ビアンカを抱き締めながら、久利生が言う。そうだ。俺達の仲間であるビアンカは、決して本当の軍人じゃない。軍人だった<オリジナルのビアンカ・ラッセ>の記憶を持っているというだけだ。
だから本来は、軍人であったことに拘る必要もない。
けれど、彼女は、
「……」
静かに首を横に振って、言った。
「いえ、これは私自身が決めたことです。素戔嗚がどうなるんだとしても、私自身がそれに関わりたい。彼の命の幕を引くことになるのなら、それは私自身の手でと思うんです。私の知らないところでというのは、嫌です……」
久利生の言うことならなんでも受け入れそうな印象もある彼女だが、それでも彼女は一人の自立した人間として、自分の意志で自分自身の選択を行うことができるんだと、改めて実感した。
最初は、ただ、『レオンだから』ということだったのかもしれない。自分が気に入ってるレオンという種族の子供だから情が移っただけかもしれない。けれど、実際に対峙して、素戔嗚の命そのものに触れて、彼の存在を認めたからこそ、後には引けない。
彼女がそう覚悟するのなら、俺達はそれをサポートするだけだ。
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