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第四世代
閑話休題 ドーベルマンMPM二十一号機
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ドーベルマンMPM二十一号機はその日、いつも通り畑を管理するために夜明けとともに起動した。だがその日は、いつもと違っていた。
待機用の小屋の前に何者かがいる気配。
畑の作物におびき寄せられた草食動物や、草食動物を獲物とする肉食動物が近付いてくることは珍しくなかったが、どうも、そういうのとも違う印象。
なのでドアに設けられた覗き窓を開けて外の様子を窺うと、そこには、フレンチブルドッグほどの大きさの獣の姿。猪竜だった。だが、小さい。どうやら幼体のようだ。
生まれたばかりというわけではないが、それでも、巣立ちにはまだまだ早いという印象がある。親とはぐれたのだろうか。もしくは親が、オオカミ竜やレオンなどの天敵によって狩られ、子供だけが生き延びてしまった事例の可能性もある。
地球人はそういうものを『可哀想』と感じるだろうものの、ここではそれ自体が摂理というものだ。それにある程度は育っているので、猪竜は決して弱い獣ではなく、十分に育った個体であれば、天敵であるはずのオオカミ竜やレオンさえ退けることもある猛獣である。
ゆえに、二十一号機としても<保護すべき対象>としては判断できず、ただ成り行きを見守ることにした。
だが、その猪竜の幼体は、二十一号機がドアを開けて外に出てきても、後ろに跳び退いた上で左右にぴょんぴょんと跳ねる動きをしただけで、逃げていくことはなかった。
獣の多くは、二十一号機を含むロボットを見ると強く警戒して距離を置くのが普通だった。なのにこの猪竜の幼体は、距離を置くどころか二十一号機の周囲を、まるで構ってもらおうとでもするかのように駆け回る。
いや、『かのように』ではなく、構ってもらおうとしていたのだろう。
二十一号機の方も、相手をするわけではなかったがそれほど邪魔になるわけでもないので、好きにさせておいた。
畑を荒らされても、そもそもが、草食動物らをおびき寄せるのと餌を確実に確保させることで数を増やさせるのとを目的に作っている畑であり、特に問題もなかった。
こうしてその猪竜の幼体は、まるで二十一号機が親であるかのように傍にいるようになった。
だが、数日が経つと、その猪竜の幼体の姿が見えなくなった。
というのも、レオンに狩られてしまったのだ。他の、畑におびき寄せられた草食動物らと同じように。
けれど、二十一号機はそれを悲しむでもなく、残念がるでもなく、ただそれまでと同じように畑を耕し、野菜を育てた。
それが役目であったからだ。
切ないと言えば切ないこの出来事も、ここではごく当たり前の日常の一コマに過ぎなかったのだった。
待機用の小屋の前に何者かがいる気配。
畑の作物におびき寄せられた草食動物や、草食動物を獲物とする肉食動物が近付いてくることは珍しくなかったが、どうも、そういうのとも違う印象。
なのでドアに設けられた覗き窓を開けて外の様子を窺うと、そこには、フレンチブルドッグほどの大きさの獣の姿。猪竜だった。だが、小さい。どうやら幼体のようだ。
生まれたばかりというわけではないが、それでも、巣立ちにはまだまだ早いという印象がある。親とはぐれたのだろうか。もしくは親が、オオカミ竜やレオンなどの天敵によって狩られ、子供だけが生き延びてしまった事例の可能性もある。
地球人はそういうものを『可哀想』と感じるだろうものの、ここではそれ自体が摂理というものだ。それにある程度は育っているので、猪竜は決して弱い獣ではなく、十分に育った個体であれば、天敵であるはずのオオカミ竜やレオンさえ退けることもある猛獣である。
ゆえに、二十一号機としても<保護すべき対象>としては判断できず、ただ成り行きを見守ることにした。
だが、その猪竜の幼体は、二十一号機がドアを開けて外に出てきても、後ろに跳び退いた上で左右にぴょんぴょんと跳ねる動きをしただけで、逃げていくことはなかった。
獣の多くは、二十一号機を含むロボットを見ると強く警戒して距離を置くのが普通だった。なのにこの猪竜の幼体は、距離を置くどころか二十一号機の周囲を、まるで構ってもらおうとでもするかのように駆け回る。
いや、『かのように』ではなく、構ってもらおうとしていたのだろう。
二十一号機の方も、相手をするわけではなかったがそれほど邪魔になるわけでもないので、好きにさせておいた。
畑を荒らされても、そもそもが、草食動物らをおびき寄せるのと餌を確実に確保させることで数を増やさせるのとを目的に作っている畑であり、特に問題もなかった。
こうしてその猪竜の幼体は、まるで二十一号機が親であるかのように傍にいるようになった。
だが、数日が経つと、その猪竜の幼体の姿が見えなくなった。
というのも、レオンに狩られてしまったのだ。他の、畑におびき寄せられた草食動物らと同じように。
けれど、二十一号機はそれを悲しむでもなく、残念がるでもなく、ただそれまでと同じように畑を耕し、野菜を育てた。
それが役目であったからだ。
切ないと言えば切ないこの出来事も、ここではごく当たり前の日常の一コマに過ぎなかったのだった。
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