悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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歴史上最も忌むべき悪女

本音

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ミカとウルフェンスが訪ねたのは、王の一行が宿泊地としている場所から馬で一時間ほどの農村だった。

それは、遠目から見ても豊かに作物が実り、人々が勤勉に働いているのが分かった。

「……!」

そんな農村の様子を見たミカの表情が柔らかくなっていることにウルフェンスが気付く。

『こんな表情もするんだ……?』

とも思わされるくらいに。

実際、ミカは勤勉な人間は好きだった。その上で高い能力を持っていればなお良いが、だからといって凡庸な人間を無価値だと思っているわけではない。決して才能に溢れているわけでなくても、自身の役目を理解しそれに忠実で、自分にできることを精一杯する人間は評価するのだ。

この世と言うのは、<優秀な人間>だけで成り立っているわけではない。そもそも<優秀>ということ自体、全体の中で、相対的にいくらか秀でているからそのように見えるだけで、みな同じように高い能力を持っていれば、結局は埋もれてしまい、それはすなわち<凡庸>ということになってしまう。

優秀な者とそれ以外の者は、それぞれ請け負うべき役割が違うというだけなのだ。むしろ、

『勤勉である』

ということ自体がすでに<才覚>だとミカは考えていた。己の役目に対して誠実で実直であるというのは、それ自体が得難い優秀さ、有能さなのであると。

だからこそ怠惰な人間が許せない。

勤勉で実直というのは、トップアスリートが持つような身体能力とは違い、本人の心の持ちように大きく影響されるものだと彼女は考えていた。

となれば、怠惰はそれこそ本人の責任であると。

厳密に言うとそれさえ必ずしもそうとは限らないものの、少なくともこの時の彼女はそう思っていた。

この辺りはさすがにまだ経験の浅い<小娘>だったということなのかもしれないが、ただ、そこまで個々人の事情に寛容でいられなかった時代的な背景もあった可能性もある。

いずれにせよ、とにかくミカはこの農村については良い感触を抱いていたことだけは確かなようだった。

が、実際に、その農村の人々と言葉を交わしてみると、出るわ出るわ、王族と貴族に対する不平不満が。

「王様も貴族も俺達がどれだけ苦労して作物を育ててるかまるで分かっちゃいねえんだ」

「まったくだ。自分らが命令するだけでそのとおりに作物ができると思ってやがる」

さらには、

「あんたら商人も大概だけどな。人の足元見やがって。あんたらが買い叩くからトゥイモを作ってたロズ爺さんはすっかりやる気なくしちまってポックリ逝っちまった。だからもうこの村じゃトゥイモは作ってねえ」

とも。

<トゥイモ>というのは、ジャガイモに良く似た根菜のことだった。

必ずしも主菜とまでは言えないものの、あるとメニューのバリエーションが増える便利な野菜だったが、確かに市場価格としては決して『高い』と言える部類ではないのも事実なのだった。

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