悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

ストイック

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こうして洗われたミカは、粗末ではあるが清潔でもある服に着替えさせられ、新しい<牢>へと連れて行かれた。

そこは、窓に鉄格子が嵌められ、ドアは鉄格子に木の板がかぶせられつつ一部が覗き窓になっているものに交換されているものの、元はウルフェンスの自室であった。それをミカのための牢へと改装したのだ。

なお、壁は、内装こそは元のままだが、そもそもその内側にあるのは石壁なので、人力、それも女性の力で破壊できるようなものではまるでなく、窓やドアさえ壊せないものにしてしまえばそのまま牢として使えるものだった。

しかしこれは、ミカのためではまったくない。あくまで、

『ミカを使う』

時に、自分達が気分良く使いたいからだ。汚物まみれでとんでもない臭気に満ちたような場所で楽しめるか?

という話である。まあ、中には、

『そういう場所の方が興奮する』

などという<猛者>もいるとしても、大多数はそうじゃないだろう。事実、ここに<看守>として務めている者達は皆、清潔な部屋で気分良く楽しみたいと思っていた。

しかも、

『ご立派な貴族様の部屋をそういう目的で使う』

ことで意趣返しにもなる。

一石二鳥というわけだ。

が、

「今日から早速、といきたいところだが、汚れは落とせても今のままじゃいささか<使い勝手>は良くなさそうだ。

というわけで、しばらくの間、女を磨け。良い具合になれば、それだけ大事にしてもらえるかもしれないぞ。

頑張るんだな」

下卑た笑みを浮かべつつそう言って、看守長は牢を出て行った。

そう。どこまでも、

『自分達のため』

だった。

「……」

ミカにはそれが分かっていただろう。彼女は何一つ不満を述べるでもなく、ようやくある程度は人間らしい生活ができる環境で、清潔なベッドに腰を掛けることができた。しかもチェストの上には、質素ではあるものの少なくとも<人間の食事>と言えそうな、パンと野菜のスープと少しばかりの干し肉が添えられたものが置かれていた。

『それが今の私の<役目>なら、全力で果たすまでだ……』

そう割り切って、ミカは食事を始める。口の中の傷もすっかり癒えていて、すんなり食べられた。

しかし、普通なら、おそらく地下牢での二週間あまりの監禁生活の間に精神を病んでいただろう。元々そういう厳しい環境に育った人間ならまだしも、仮にも<国家元首>の立場にいて、文化的かつ贅沢とも言える暮らしを経験したものにとっては、到底、耐えられるものではないと思われる。

なので、むしろミカの方が普通ではなかったと言えるかもしれない。

だが、いくらこれまでとは天と地ほどの差がある環境に移れたとはいえ、これから彼女は、男共の<欲望の捌け口>として使われるのは明白である。

なのにミカは、まるで大怪我からの奇跡の復帰を目指すアスリートのようにストイックに、自らの回復を図ったのだった。

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