悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

私はただ

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人間が呼吸によって取り入れる<酸素>は、生命活動を行う上で決して欠かすことのできない物質であると同時に、実は、猛毒でもある。大気中の酸素濃度が高すぎると、人間を含む、酸素を代謝に用いている生物のほとんどは容易く死に至るほどなのだ。

なのに、人間は呼吸を行う。敢えて猛毒を取り入れ、それによって生命を維持している。

この事実に比べれば、男共の相手をするくらい、些末な話でしかない。

それがミカの考え方だった。



「……」

このようにしてミカがベッドに横になり自身の体調を整えようとしていると、扉の前に人の気配があり、鍵が明けられるのが分かった。

もっとも、じゃらじゃらと鎖を鳴らしながらでは少し勘の働く人間なら誰であるかを察するのは簡単だろうが。

その推測どおり、入ってきたのは元メイドの囚人だった。手足に繋がれた鎖が独特の音を立てるので、知っている人間ならすぐ分かる。朝食を持ってきたのだろう。

野菜のスープとパンのみが乗ったトレイを、挨拶するでもなく仏頂面のままで置いて、やはり黙ったまま牢を出て行く。

その気配を眼を瞑ったままで感じ取り、元メイドの囚人が出て行った後、おもむろに体を起こして、チェストの上に置かれたそれを手に取り、しっかりと一口一口、自分の体に取り込むことを意識しながら食べた。

量は必ずしも十分ではなくても、何度も何度も噛み、一片たりとも無駄にせず吸収し全身に行き渡らせるイメージを自らの中に構築する。

パンの原料となった小麦や、スープの材料となった野菜の命が自身を生かしてくれることを自覚し、生命が循環していることを心に刻んだ。

『私は今、生きている……生きているなら、己の役目を果たさねばならぬ……

命尽きる最後の瞬間を目指し、あやまたず自らを全うせよ……

そのためにこの者達の命は使われたのだ……』

トレイに落ちたパンくず一つ残さず摘み上げ口に運び、皿に残ったスープの滴の一滴すら残さず舐め取り、ミカは食事を終えた。

ギロチンに掛けられ終わりを迎えるその瞬間まで何一つ無駄にはできないと彼女は思った。

可能な限り健やかでいなければいけない。そして鮮烈に最後を飾らねばならない。

<憎むべき帝国の怨敵>

として。

同情を買ってはいけないのだ。

憐れみを受けてはいけないのだ。

<可哀想な女>

であってはならぬ。



は何者か?

我は、<ミカ=ティオニフレウ=ヴァレーリア>。

<歴史上最も忌むべき悪女>

にして、

<帝国最大の怨敵>

なり。

ならば、成し遂げてみせよ。

<純然たる悪>

を。

媚びぬ。

乞わぬ。

私はただ<私>たれ。

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