109 / 112
牢獄の女怪
ギロチン
しおりを挟む
「……」
「……」
あれほど騒然としていた群集が、いよいよとなった瞬間、まるでスイッチが切り替わったかのように静まり返った。
固唾を呑んで、次の光景を待つ。
ギロチンの刃が落ち、<歴史上最も忌むべき悪女>の首を落とすその光景を。
だが―――――
「うおっ!?」
まるで疾風のように影が奔り、自身の腕にギロチンを吊るスロープを絡め取った者がいた。
同時に、ギロチン台の、刃を導くためのガイドレールに剣が突き立てられる。これでは、たとえロープを放しても刃が落ちないかもしれない。
「な、なんだ!?」
「え…っ!?」
咄嗟の事に何が起こったのかが理解できなかった群集が唖然とする中で、処刑執行人が何人もの人間に組み伏せられ、ミカを捕らえていた拘束具が外される。
「こちらへ……!」
二人の人間が彼女を支えて体を起こし、階段の方へと促す。
「お前達は……?」
『こちらへ』と言った時のイントネーションが明らかに帝国のそれとは違っていた。
『外国人……?』
マスクで顔を隠してはいるが、どことなく帝国の人間とは印象が異なる。
だが、腕に絡めたロープを解き自分を見た男の姿を視界に捉えたミカは思わず声を上げた。
「お前……どうしてここにいる……っ!?」
「……」
しかし男はミカの問い掛けには応えず、意表を突かれて完全に後手に回った兵士が慌てて突き出した槍を剣で払いつつ、ミカをつれた二人を先導し、彼女を護送してきた馬車へと走った。
警備の兵士達も対応しようとはするものの、まったく連携が取れていない。
なにしろ警備していた兵士の何人かが味方のはずの他の兵士達に槍を突き立てたりもしていたのだから。
『クーデター……!?』
ミカの頭にその考えがよぎる。
この騒ぎの首謀者は自分を確保して担ぎ上げ、クーデターを行おうとしているのではないか?と思ったのである。
けれど、何の説明もないままに彼女は自分をここまで護送してきた馬車に再び押し込められた。しかも急発進したことで、壁に体が叩きつけられる。
「ぐっ……!」
自分が乗り込んだと同時に馬車が走り出した事実に、
『御者もグルか……!?』
と察せられた。
警備の兵士にも仲間がいたらしいことから、相当、入念に計画されたことだというのが窺える。
だがこんなことをして捕らえられれば確実に死罪だ。つまりこれに参加している者は、全員、その覚悟を持っているということだろう。
しかし、なぜこんなことを……
『これでは、何もかも台無しではないか……!』
自分の決意も、希望も、すべてが踏みにじられた現実に、ミカはギリギリと歯を鳴らす。
すると、猛スピードで走っているにも拘らず扉が開けられ、人影が見えたのだった。
「お前……!」
「……」
あれほど騒然としていた群集が、いよいよとなった瞬間、まるでスイッチが切り替わったかのように静まり返った。
固唾を呑んで、次の光景を待つ。
ギロチンの刃が落ち、<歴史上最も忌むべき悪女>の首を落とすその光景を。
だが―――――
「うおっ!?」
まるで疾風のように影が奔り、自身の腕にギロチンを吊るスロープを絡め取った者がいた。
同時に、ギロチン台の、刃を導くためのガイドレールに剣が突き立てられる。これでは、たとえロープを放しても刃が落ちないかもしれない。
「な、なんだ!?」
「え…っ!?」
咄嗟の事に何が起こったのかが理解できなかった群集が唖然とする中で、処刑執行人が何人もの人間に組み伏せられ、ミカを捕らえていた拘束具が外される。
「こちらへ……!」
二人の人間が彼女を支えて体を起こし、階段の方へと促す。
「お前達は……?」
『こちらへ』と言った時のイントネーションが明らかに帝国のそれとは違っていた。
『外国人……?』
マスクで顔を隠してはいるが、どことなく帝国の人間とは印象が異なる。
だが、腕に絡めたロープを解き自分を見た男の姿を視界に捉えたミカは思わず声を上げた。
「お前……どうしてここにいる……っ!?」
「……」
しかし男はミカの問い掛けには応えず、意表を突かれて完全に後手に回った兵士が慌てて突き出した槍を剣で払いつつ、ミカをつれた二人を先導し、彼女を護送してきた馬車へと走った。
警備の兵士達も対応しようとはするものの、まったく連携が取れていない。
なにしろ警備していた兵士の何人かが味方のはずの他の兵士達に槍を突き立てたりもしていたのだから。
『クーデター……!?』
ミカの頭にその考えがよぎる。
この騒ぎの首謀者は自分を確保して担ぎ上げ、クーデターを行おうとしているのではないか?と思ったのである。
けれど、何の説明もないままに彼女は自分をここまで護送してきた馬車に再び押し込められた。しかも急発進したことで、壁に体が叩きつけられる。
「ぐっ……!」
自分が乗り込んだと同時に馬車が走り出した事実に、
『御者もグルか……!?』
と察せられた。
警備の兵士にも仲間がいたらしいことから、相当、入念に計画されたことだというのが窺える。
だがこんなことをして捕らえられれば確実に死罪だ。つまりこれに参加している者は、全員、その覚悟を持っているということだろう。
しかし、なぜこんなことを……
『これでは、何もかも台無しではないか……!』
自分の決意も、希望も、すべてが踏みにじられた現実に、ミカはギリギリと歯を鳴らす。
すると、猛スピードで走っているにも拘らず扉が開けられ、人影が見えたのだった。
「お前……!」
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる