悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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エピローグ

あなたに逢えて

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このように、<ミカ=ティオニフレウ=ヴァレーリア>と彼女にまつわる人間達の話については、ほとんど誰も幸せにはなれずに幕を閉じている。

基本的には亡命先で平穏に一生を終えられたと見られているリオポルドでさえ、身分を隠しての隠遁生活を強いられた上、<想い人>と結ばれることは生涯なかったのだから。

一つの<物語>と捉えれば実に後味の悪いものだろう。しかし、後の世に語られる<歴史物語>の多くは、脚色が加えられ、<読み物としての面白さ>が重視されることで結果として真実とはかけ離れたものになっている場合も多い。

実際には、ただただ『胸糞悪い』で終わる史実も少なくないのだろう。









「はい、コーヒー。そろそろ一休みしたら?」

<ミカ=ティオニフレウ=ヴァレーリア>による治世から数百年後。東方の小さな島国のある平凡な住宅の部屋で、一組の男女が夜を過ごしていた。

「ありがとう。でも、もう少し。キリのいいところまで進めておきたいから」

髪色は同じく黒でありつつ、明らかに自分とは人種的な意味で顔立ちの違う美しい女性が差し出したコーヒーを受け取りながら、柔和な表情をした、年齢としては三十代半ばといった感じの男性は、そう言ってコーヒーを一口含んでノートパソコンに向き直った。

そしてせわしなくキーボードを叩きつつ、

「僕は、少しでも早く君の祖先の名誉を回復したいんだ。

<歴史上最も忌むべき悪女>

なんていう不名誉な称号を与えられた君の祖先のね。

調べれば調べるほど感じるんだよ。彼女がいかに聡明で高い先見性を持っていたかを。

だからこそ徹底して<悪>を演じることができたんだということを。

もちろん、だからってたくさんの人の命を奪った彼女がすべて許されるべきとは思わない。ただ、彼女の決断がなければ、もっと多くの人が亡くなっていた可能性についても、穏当な評価がなされるべきだと思うんだ。

ミカ……」

男性のその言葉に、<ミカ>と呼ばれた女性は僅かに目を潤ませながら彼の首に両腕を絡ませ、囁くように言ったのだった。

「ありがとう…ヒロキ……

あなたに逢えて本当によかった……」







ヒロキという名のその研究者がどれほど努力しても、当時、何があったのか、すべてを解明することはできないだろう。結果として資料が残されることがなかった事実も数多くあるだろうから。

ただ、当時の感覚では理解されることのなかった様々な<想い>も、それから数百年が経過した現代だからこそ客観的に評価されることもあるのかもしれない……







~了~



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