コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

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そもそも頑として断っとけば

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 一緒に暮らし始めてしばらくすると、羅美は、俺が目を覚まして体を起こしたら、続いて目を覚ますようになった。しかも、頼んでもないのに朝食を作るようになったんだ。メニュー自体はベーコンエッグだったりプレーンオムレツだったりとごくごく簡単なものだが、俺自身、元々朝からガッツリ食べるわけじゃなかったから、それでちょうどよかった。
「ん、美味いよ。ありがとう」
「えへへ♡」
 俺は別に、羅美が朝食を作ってくれることを『当たり前』だとは思わない。
『居候させてやってるんだからそれくらいやるのが当然』
 とかホザく奴もいるだろうが、いやいや、そもそも頑として断っとけば居候させることもなかったんだからよ。自分が受け入れる決断をした責任から目を逸らすんじゃねえ。
 大人が自身の決断の責任から目を背けてて、そんな態度を見せてて、なんで子供が自分で責任を負えるようになると思うよ? どんなオカルトだ。
『どうせ誰かが教えてくれる』
 なんてのは、ただの他力本願で怠けたいだけだよな? 『誰か』じゃなくて自分が教えろ。自分の普段の行動で手本を見せろ。それが<親の役目>ってもんだろうが。
 だから俺は、羅美を受け入れた自分の決断に責任を負うし、彼女が朝食を作ってくれたことについて感謝し労う。そういう感覚がない奴は、親がそういうのを態度で示してなかったんじゃないのか? 親がそれを示してたってのに自分はやらないってんなら親を愚弄しているし、『親がやらなかったんだから自分もやらない』ってんなら『親の所為』にしてるだけじゃねーか。
 違うか?
 俺の親は、ただただ凡庸で<(表向き)真面目>なだけが取り柄の奴らだったが、でもまあ、『ありがとう』と『ごめんなさい』はちゃんと言える親だったな。
 その一方で、他の人間に対して毅然とした態度が取れないストレスを、子供に対してマウント取ることで発散するような奴でもあったから、正直、尊敬はしてないし、家を出てからは連絡も取ってない。向こうからも取ってこないってことはまあ、お察しってことだろう。
 本当は子供なんか欲しくなかったんだよ。世間体ってもんがあるから結婚して子供作っただけで。でも、子供の前で露骨に喧嘩したりお互いを罵り合ったりしなかっただけでも、うん、
『頑張って親をやろうとしてたんだろうなあ』
 とは思うよ。だから恨んでたりはしない。尊敬もしてないけどな。
 で、自分が親を尊敬してないから、長女や羅美からも尊敬してもらおうとは思ってない。特に長女の前では前妻と<仮面夫婦>を演じてただけだったわけで。
 なんでそんなので尊敬してもらえると思えるよ?

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