コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十

文字の大きさ
89 / 106

黒歴史

しおりを挟む
 学校では、羅美以外にも二十人ほどの希望者らしきのが来てた。で、羅美のように制服を着て保護者同伴で来てるのだけじゃなく、いかにも<ヤンチャ>してたんだろうなって感じの、しかも明らかに二十歳過ぎてそうなのもいた。それどころか、俺とそんなに歳も違わないだろうってのも……
 ……ん? こいつ、どこかで……?
 と思ったら、そいつが俺の顔を見るなりハッとなって、
「先輩!」
 とか声を上げやがった。瞬間、俺も思い出す。こいつ、俺が高校通ってた時の後輩だ……! 名前は確か、
「工藤か……!?」
 俺も思わず声に出ちまった。すると<工藤>は、
「そうっす! 工藤くどう礼司れいじっす! 先輩、老けたっすねえ!」
 笑いながら言いやがる。てか、老けたのはてめえもだろ!
 しかも工藤は、羅美を見て、
「もしかして先輩の娘さんっすか? こんな大きな娘さんいたんすね。知らなかったっす!」
 とかなんとか。見知った顔がいてテンションが上がったのかもしれないが、
「分かったから、工藤! とにかく静かにしろ。他の方に迷惑だろ!」
 俺は工藤を嗜める。
 ったく。こいつは俺より二つ下のはずだからアラフォーだぞ? なんだよ『っす』って。いい歳なんだから人前でそういう口調はもうやめろ。完全な仲間内だけならともかく。
 と思うんだが、まあ、高校時代に思わず引き戻された感じかもしれん。
「あ、すんません!」
 ようやく場所をわきまえた工藤が俺だけじゃなく他の参加者らにも頭を下げてた。<舎弟感>丸出しで。
 ああそうだよ。昔の俺は、こういう感じの奴らとつるんでたよ。でもな、俺のは単に親に反発しての<ファッションヤンキー>だったから、あんまガチな悪さはしてなかった。ケンカとかはしたものの、それも同類相手だったしな。ただ、当時のことは俺にとっちゃ、
 <思い出したくもない黒歴史>
 なんだよ。ヤンキーぶってるクセにラノベとかもこっそり読んでたし。まあ、<オタク>って言われるほどはのめり込んでなかったけどよ。勉強も、なんだかんだと中の中って感じだった。その所為もあって、仲間内からは、
 <勉強ができる奴>
 扱いではあった。
 とは言え世間からはガッツリ<DQN>って目で見られてたのも事実だ。そんな俺だから、羅美にはそれこそ偉そうに言えないんだ。あの頃の俺だって、一歩間違えばもっとヤベえ方向に行ってたかもしれないわけで。
 でも、程度は低くても一応は大学も行って、就職もして、過去の自分を恥じて封印して、なんであんなバカなことしてたのかを自分で考えて考えて考えてってしてるうちにあれこれ分かってきたってだけなんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...