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第二幕
秋生の日常 その21
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<ハーレムラブコメごっこ>
とは言っても、本当にアニメや漫画の中のように都合のいいことばかりが起こるわけじゃない。アニメや漫画の中で起こるトラブルの類は、結局、それ自体が<オチに至るための舞台装置>でしかないので、実際には<都合のいい出来事>でしかないのだ。
だから現実には話を盛り上げるようなタイプのトラブルはそうそう起こらない。
地味でただ面倒臭いだけの<厄介事>がほとんどだ。
こうして、没収されたハサミを受け取りに、美登菜は職員室へと向かった。
秋生達は大人しく待つことにしたものの、さすがに心配なので、こっそりと職員室の前まで行って、中の様子を窺いながら待つことにする。
どの程度の指導が行われたかによって、どう接すればいいのかを見極めるために。
とは言え、聞き耳を立てても、美登菜に指導を行ってるであろう教師の声も聞こえてはこない。つまりそれは、外に聞こえてくるほど声を荒げて指導が行われてるわけじゃないということでもあると思われる。
しかも、
「失礼しました」
職員室のドアが開かれて頭を下げつつ美登菜が出てきた。その様子も特に普段と変わりない。時間も早い。
「大丈夫だった? 美登菜」
美織が心配げに尋ねるものの、当の美登菜は、
「あ~、大丈夫だったよ。ちょっとお説教されたけど。まあ、仕方ないよね」
頭を掻きながら小さく舌を出してみせた。
どうやら本当に大丈夫なようだ。
加えて、
「ごめん。心配してきてくれたんだね。ありがと……」
今度は申し訳なさそうに頭を掻く。
心配を掛けたことを申し訳ないと思えるからこそ、美織も麗美阿も彼女の友達でいられる。
さらには、
「あきちんにまで迷惑掛けちゃった……」
としょげる。
すると秋生は、フッと微笑みながら彼女の頭を撫でて、
「そうだね。次からは気を付けてほしいな」
穏やかに言った。
そんな秋生だからこそ、美登菜は惹かれる。安易に怒鳴ればいいと思ってる者や、逆に何でもかんでも問題にせずに水に流してしまえばいいと思ってる者とも違う、冷静に客観的に物事を見ようとしてる姿勢が心地好かった。
『ああ……私、秋生くんのこと、やっぱり好きだな……』
改めてそう思う。
そうして自分の気持ちを再確認してる美登菜に、美織は、
「そうだよ。今日は特別だけど、次はないよ、美登菜」
頬を膨らませ、腰に手を当てて少し怒ったような表情。今日は自分が<正妻の日>なのに、秋生にこんなに優しくしてもらっていることについて言ってるのだと、美登菜にも分かった。
「いや、ホントごめん。ごめんだから」
再び申し訳なさそうに、美登菜は頭を掻いたのだった。
とは言っても、本当にアニメや漫画の中のように都合のいいことばかりが起こるわけじゃない。アニメや漫画の中で起こるトラブルの類は、結局、それ自体が<オチに至るための舞台装置>でしかないので、実際には<都合のいい出来事>でしかないのだ。
だから現実には話を盛り上げるようなタイプのトラブルはそうそう起こらない。
地味でただ面倒臭いだけの<厄介事>がほとんどだ。
こうして、没収されたハサミを受け取りに、美登菜は職員室へと向かった。
秋生達は大人しく待つことにしたものの、さすがに心配なので、こっそりと職員室の前まで行って、中の様子を窺いながら待つことにする。
どの程度の指導が行われたかによって、どう接すればいいのかを見極めるために。
とは言え、聞き耳を立てても、美登菜に指導を行ってるであろう教師の声も聞こえてはこない。つまりそれは、外に聞こえてくるほど声を荒げて指導が行われてるわけじゃないということでもあると思われる。
しかも、
「失礼しました」
職員室のドアが開かれて頭を下げつつ美登菜が出てきた。その様子も特に普段と変わりない。時間も早い。
「大丈夫だった? 美登菜」
美織が心配げに尋ねるものの、当の美登菜は、
「あ~、大丈夫だったよ。ちょっとお説教されたけど。まあ、仕方ないよね」
頭を掻きながら小さく舌を出してみせた。
どうやら本当に大丈夫なようだ。
加えて、
「ごめん。心配してきてくれたんだね。ありがと……」
今度は申し訳なさそうに頭を掻く。
心配を掛けたことを申し訳ないと思えるからこそ、美織も麗美阿も彼女の友達でいられる。
さらには、
「あきちんにまで迷惑掛けちゃった……」
としょげる。
すると秋生は、フッと微笑みながら彼女の頭を撫でて、
「そうだね。次からは気を付けてほしいな」
穏やかに言った。
そんな秋生だからこそ、美登菜は惹かれる。安易に怒鳴ればいいと思ってる者や、逆に何でもかんでも問題にせずに水に流してしまえばいいと思ってる者とも違う、冷静に客観的に物事を見ようとしてる姿勢が心地好かった。
『ああ……私、秋生くんのこと、やっぱり好きだな……』
改めてそう思う。
そうして自分の気持ちを再確認してる美登菜に、美織は、
「そうだよ。今日は特別だけど、次はないよ、美登菜」
頬を膨らませ、腰に手を当てて少し怒ったような表情。今日は自分が<正妻の日>なのに、秋生にこんなに優しくしてもらっていることについて言ってるのだと、美登菜にも分かった。
「いや、ホントごめん。ごめんだから」
再び申し訳なさそうに、美登菜は頭を掻いたのだった。
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