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出逢い
朋群人の地、錬是
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けれど、ミネルバによる空の旅に慣れるに従って、斬竜も飛行中に寝られるくらいにはなっていった。しかも、小便も糞もそのままできるまでに。
下が人間社会だと大変な迷惑行為ではあるものの、人間など公式には一人も暮らしていないはずの鵺竜と亜竜の世界なので、まあ、問題はないだろう。それに人間がいれば必ずロボットもついているので、信号が発信されているはずである。
ただ、さすがに用足しした後の始末も必要になるために、最初の内は錬義がウェットティッシュで拭いてやったりもしていた。ちなみにそのウェットティッシュも天然パルプ百パーセントのものであり、一人分くらいそのまま捨てても実害はない。いずれもっと人口が増えてきてこうして錬是の外に出る者が増えてくるとそうはいかなくなるだろうが。それらはまた後々考えることになるだろう。
こうして、二人が出逢って飛び立ってから二週間。ようやく、
「おっと! 基幹ドローンからの給電が始まったか! これで夜も飛べるな!」
無線給電が開始されたことを告げるインジケータが点灯したことで、錬義が思わず声を上げた。彼にとっては実に二ヶ月以上ぶりだった。錬是を発ってからあちこち寄り道をしながらだったのだ。
すると、
「錬義か? 無事だったんだな。おかえり」
コンソール辺りから声が上がる。通信機のスピーカーだった。女性の声だ。しかし、
「!?」
錬義のとは違う声に、斬竜の体に緊張が走った。そんな彼女に、
「大丈夫だよ。敵じゃない。心配要らない」
言葉そのものはまだ通じないものの、錬義が発する気配で危険か否か程度は察せられるようになった斬竜が、
「? …?」
不思議そうな表情になりながら錬義にしがみついた。危険はないかもしれないが、不安はあるのだろう。背後から自分の体に回された斬竜の手を握りながら、
「こちら錬義。アカネか?」
返信した。すると<アカネ>と呼ばれた方も、
「ああそうだよ。私だ。よく戻ったね」
どこか嬉しそうな声で応えてくれた。アカネは、錬是の<首都>とも言うべきアリニドラニ市の交通管制官の一人だった。交通管制そのものはAIが行っているものの、こうして交信はやはり人間が行った方が互いに安心できるということで、係官がいるのだった。
「通信圏内に戻ったということは、あと二日くらいか?」
無線給電が受けられることでたいていはロボット任せの自動操縦に切り替えてそのまま休まずに帰還することが多いのでアカネはそう訊いてきたが、
「いや、お客を乗せてるからまだ五日くらいかける予定だ」
返答する。
「お客さん? それは穏やかじゃないね」
アカネの声が緊張するものの、錬義は、
「大丈夫。敵じゃないよ。ただ、検疫とかもあるから、アンデルセンに下りるけど」
とも答えたのだった。
下が人間社会だと大変な迷惑行為ではあるものの、人間など公式には一人も暮らしていないはずの鵺竜と亜竜の世界なので、まあ、問題はないだろう。それに人間がいれば必ずロボットもついているので、信号が発信されているはずである。
ただ、さすがに用足しした後の始末も必要になるために、最初の内は錬義がウェットティッシュで拭いてやったりもしていた。ちなみにそのウェットティッシュも天然パルプ百パーセントのものであり、一人分くらいそのまま捨てても実害はない。いずれもっと人口が増えてきてこうして錬是の外に出る者が増えてくるとそうはいかなくなるだろうが。それらはまた後々考えることになるだろう。
こうして、二人が出逢って飛び立ってから二週間。ようやく、
「おっと! 基幹ドローンからの給電が始まったか! これで夜も飛べるな!」
無線給電が開始されたことを告げるインジケータが点灯したことで、錬義が思わず声を上げた。彼にとっては実に二ヶ月以上ぶりだった。錬是を発ってからあちこち寄り道をしながらだったのだ。
すると、
「錬義か? 無事だったんだな。おかえり」
コンソール辺りから声が上がる。通信機のスピーカーだった。女性の声だ。しかし、
「!?」
錬義のとは違う声に、斬竜の体に緊張が走った。そんな彼女に、
「大丈夫だよ。敵じゃない。心配要らない」
言葉そのものはまだ通じないものの、錬義が発する気配で危険か否か程度は察せられるようになった斬竜が、
「? …?」
不思議そうな表情になりながら錬義にしがみついた。危険はないかもしれないが、不安はあるのだろう。背後から自分の体に回された斬竜の手を握りながら、
「こちら錬義。アカネか?」
返信した。すると<アカネ>と呼ばれた方も、
「ああそうだよ。私だ。よく戻ったね」
どこか嬉しそうな声で応えてくれた。アカネは、錬是の<首都>とも言うべきアリニドラニ市の交通管制官の一人だった。交通管制そのものはAIが行っているものの、こうして交信はやはり人間が行った方が互いに安心できるということで、係官がいるのだった。
「通信圏内に戻ったということは、あと二日くらいか?」
無線給電が受けられることでたいていはロボット任せの自動操縦に切り替えてそのまま休まずに帰還することが多いのでアカネはそう訊いてきたが、
「いや、お客を乗せてるからまだ五日くらいかける予定だ」
返答する。
「お客さん? それは穏やかじゃないね」
アカネの声が緊張するものの、錬義は、
「大丈夫。敵じゃないよ。ただ、検疫とかもあるから、アンデルセンに下りるけど」
とも答えたのだった。
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