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出逢い
エレクシア、リスクの検証を終える
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「!?」
斬竜は、エレクシアに向けて<空間干渉の力>を放とうと身構えた。しかし、その視界に錬義とミネルバを捉えて、硬直してしまう。そして、力は放たれなかった。
と同時に、エレクシアも、
「どうやら、ここまでのようですね」
そう言って錬義の方に向き直った。
「申し訳ありません。彼女のリスクを図るために、あなた方を利用させていただきました。ですがこれにより、リスクのほとんどは検証できたと思います」
穏やかに話すエレクシアに、
「じゃあ……?」
思わず声を出した錬義が耳にしたのは、
「はい。彼女は人間社会で暮らしていくにはいささかリスクが高いですが、他の居住地から遠く離れた場所であれば、<錬是>上で暮らすことも可能でしょう。
その根拠として、
一つ、斬竜は人間に対して憎悪は抱いていません。
一つ、斬竜は錬義に対して強い好意を抱いています。
一つ、斬竜は錬義を守るために私に攻撃を加えました。
一つ、斬竜は錬義を傷付ける意図がありません。
一つ、斬竜は自身の攻撃が錬義を巻き込むと判断し思いとどまりました。
以上の理由により、彼女は自身が共にあろうとした者に対して配慮することができるだけの知能と理性は有しており、こちらから攻撃を加えなければ、そのリスクは野生の猛獣と大きく変わりません。この錬是の台地上に生息する生物と比べても、特別大きなリスクではないと判断しました」
と告げた。するといつの間にか斬竜も錬義の傍に来て、
「グルルルルル……!」
彼を守ろうとするかのようにエレクシアの前に立ちはだかって、威嚇していた。彼女は、錬義とミネルバを巻き込まないように、力を使わなかったのだ。
「今のこの姿こそが、斬竜の本質です。彼女は、錬義を愛している。錬義と番うことを望んでいます。彼女のバイタルサインがそれを示しているのです。もちろんこれは、ダイナソアンのデータから得られた推測に過ぎませんが、確度は必ずしも高くありませんが、十分に有意な推論だと考えます」
すっかりボロボロになった<神官を思わせる服>をまとったエレクシアは、穏やかにそう語っていた。
なお、この時、長い袖に隠れていたのが袖自体がもはや原形をとどめないまでに裂けたことで露出して両腕が、左右で色が違っていることに錬義も気付いた。
『エレクシア様……左手は義手だったのか……』
そう察する。確かに、錬義がそう感じたように、右手に比べれば左手は明らかに不自然なそれだったのだ。そう察した上で、
『片方が義手の状態であの戦いを……? 本当に底知れない方だ……』
とも思ってしまったのだった。
斬竜は、エレクシアに向けて<空間干渉の力>を放とうと身構えた。しかし、その視界に錬義とミネルバを捉えて、硬直してしまう。そして、力は放たれなかった。
と同時に、エレクシアも、
「どうやら、ここまでのようですね」
そう言って錬義の方に向き直った。
「申し訳ありません。彼女のリスクを図るために、あなた方を利用させていただきました。ですがこれにより、リスクのほとんどは検証できたと思います」
穏やかに話すエレクシアに、
「じゃあ……?」
思わず声を出した錬義が耳にしたのは、
「はい。彼女は人間社会で暮らしていくにはいささかリスクが高いですが、他の居住地から遠く離れた場所であれば、<錬是>上で暮らすことも可能でしょう。
その根拠として、
一つ、斬竜は人間に対して憎悪は抱いていません。
一つ、斬竜は錬義に対して強い好意を抱いています。
一つ、斬竜は錬義を守るために私に攻撃を加えました。
一つ、斬竜は錬義を傷付ける意図がありません。
一つ、斬竜は自身の攻撃が錬義を巻き込むと判断し思いとどまりました。
以上の理由により、彼女は自身が共にあろうとした者に対して配慮することができるだけの知能と理性は有しており、こちらから攻撃を加えなければ、そのリスクは野生の猛獣と大きく変わりません。この錬是の台地上に生息する生物と比べても、特別大きなリスクではないと判断しました」
と告げた。するといつの間にか斬竜も錬義の傍に来て、
「グルルルルル……!」
彼を守ろうとするかのようにエレクシアの前に立ちはだかって、威嚇していた。彼女は、錬義とミネルバを巻き込まないように、力を使わなかったのだ。
「今のこの姿こそが、斬竜の本質です。彼女は、錬義を愛している。錬義と番うことを望んでいます。彼女のバイタルサインがそれを示しているのです。もちろんこれは、ダイナソアンのデータから得られた推測に過ぎませんが、確度は必ずしも高くありませんが、十分に有意な推論だと考えます」
すっかりボロボロになった<神官を思わせる服>をまとったエレクシアは、穏やかにそう語っていた。
なお、この時、長い袖に隠れていたのが袖自体がもはや原形をとどめないまでに裂けたことで露出して両腕が、左右で色が違っていることに錬義も気付いた。
『エレクシア様……左手は義手だったのか……』
そう察する。確かに、錬義がそう感じたように、右手に比べれば左手は明らかに不自然なそれだったのだ。そう察した上で、
『片方が義手の状態であの戦いを……? 本当に底知れない方だ……』
とも思ってしまったのだった。
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