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自分の思う通りに
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ちょっと他人が自分の思う通りに動かなかっただけでキレる奴がいる。
この世の創作物すべてが自分の好みに合わせて作られるのが当然とか思ってる奴もいるな。
アニメのまとめ記事のコメント欄などで、自分の好みじゃないアニメをこき下ろす奴だ。
藍繪正真もそのタイプである。自分の好みの設定、演出、展開じゃないというだけで『面白くない』とホザいてもいた。
まったく、すべての創作物がお前らの好みに合わせて作られるべきだとでも思っているのか? いったい何様のつもりだ?
どれほどの、名作>と言われる創作物であろうとそれを面白いと思えない奴はいるんだぞ?
自分の思い通りにならないから許せないとか認められないとか、そんなことで世の中を渡っていけると思っているのか? そんなことでいちいち文句を言うような奴の方が実社会では疎まれることを知らんのか?
そしてそういう奴が嫌われてイシメられ、それで、
『イジメられる側にも原因がある』
とか言われたりするんだぞ? 分かっているのか?
もっとも、藍繪正真の場合はそれどころじゃないがな。
『ウザい……』
なんてことを思いつつ、剣を握り締め月明かりの中、隣の小屋へと向かう。
母子が食中毒で死に、その死体を野犬に食い荒らされても何の騒ぎにもならなかったことで、藍繪正真の<タガ>が緩んでしまったようだ。
『どうせこんなガキが死んでも誰も気にしないんだろ……?』
とな。自分の思い通りにいかない鬱陶しい奴は、<殺処分>する。か。
いやはや、清々しいまでの身勝手さだ。楽しいぞ。
トレアに対しては多少同情的に見られるようにはなったとはいえ、自分の思い通りにならない相手となると途端にこれだ。
これが人間というものよな。
足音を忍ばせて小屋に近付き、完全には閉まらない扉の隙間からそっと中を覗き込む。とは言え、屋根や壁の隙間から差し込む月明かり以外に何の光源もない小屋の中は、人間の目にはほぼほぼ真の闇で、なにも見えない。
だが、その時―――――
「ママ……」
小さく、そして縋りつくような声が、藍繪正真の耳に届いた。ソレスの声だった。
『起きてるのか…っ!?』
ギョッとなった藍繪正真ではあったものの、息を殺してしばらく様子を窺ったが、それ以上は何もなかった。いや、
「ん…んん……ママぁ……っ!
という、微かにうなされている<寝言>だけが耳に届いてくる。そして、
「やだぁ……死んじゃヤダぁ……」
「……!?」
どれほど明るく振る舞おうと、人の死に慣れきってしまったように振る舞おうと、ソレスはまだ子供だったのだ。
『なんだよ……』
クソ生意気な少女のひ弱な一面を垣間見せられ、藍繪正真は毒気を抜かれて自分の小屋へと引き返したのだった。
この世の創作物すべてが自分の好みに合わせて作られるのが当然とか思ってる奴もいるな。
アニメのまとめ記事のコメント欄などで、自分の好みじゃないアニメをこき下ろす奴だ。
藍繪正真もそのタイプである。自分の好みの設定、演出、展開じゃないというだけで『面白くない』とホザいてもいた。
まったく、すべての創作物がお前らの好みに合わせて作られるべきだとでも思っているのか? いったい何様のつもりだ?
どれほどの、名作>と言われる創作物であろうとそれを面白いと思えない奴はいるんだぞ?
自分の思い通りにならないから許せないとか認められないとか、そんなことで世の中を渡っていけると思っているのか? そんなことでいちいち文句を言うような奴の方が実社会では疎まれることを知らんのか?
そしてそういう奴が嫌われてイシメられ、それで、
『イジメられる側にも原因がある』
とか言われたりするんだぞ? 分かっているのか?
もっとも、藍繪正真の場合はそれどころじゃないがな。
『ウザい……』
なんてことを思いつつ、剣を握り締め月明かりの中、隣の小屋へと向かう。
母子が食中毒で死に、その死体を野犬に食い荒らされても何の騒ぎにもならなかったことで、藍繪正真の<タガ>が緩んでしまったようだ。
『どうせこんなガキが死んでも誰も気にしないんだろ……?』
とな。自分の思い通りにいかない鬱陶しい奴は、<殺処分>する。か。
いやはや、清々しいまでの身勝手さだ。楽しいぞ。
トレアに対しては多少同情的に見られるようにはなったとはいえ、自分の思い通りにならない相手となると途端にこれだ。
これが人間というものよな。
足音を忍ばせて小屋に近付き、完全には閉まらない扉の隙間からそっと中を覗き込む。とは言え、屋根や壁の隙間から差し込む月明かり以外に何の光源もない小屋の中は、人間の目にはほぼほぼ真の闇で、なにも見えない。
だが、その時―――――
「ママ……」
小さく、そして縋りつくような声が、藍繪正真の耳に届いた。ソレスの声だった。
『起きてるのか…っ!?』
ギョッとなった藍繪正真ではあったものの、息を殺してしばらく様子を窺ったが、それ以上は何もなかった。いや、
「ん…んん……ママぁ……っ!
という、微かにうなされている<寝言>だけが耳に届いてくる。そして、
「やだぁ……死んじゃヤダぁ……」
「……!?」
どれほど明るく振る舞おうと、人の死に慣れきってしまったように振る舞おうと、ソレスはまだ子供だったのだ。
『なんだよ……』
クソ生意気な少女のひ弱な一面を垣間見せられ、藍繪正真は毒気を抜かれて自分の小屋へと引き返したのだった。
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