死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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割り切り

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しかしなぜ、人間に対して敵対行動がとれない筈のメイトギアがこのようなことを?

メイトギアを含むロボットは、たとえソフトが壊れても、いやソフトが壊れたりすればこそ人間に危害を加えられないように設計されている。人間相手に戦闘をするロボットも、あくまで<保護対象の人間を守る為にはやむを得ない例外的な対処>として戦闘が行えるだけである。だから判断に影響しうる異常が存在した時点で安全装置が働き、いかなる例外もなく人間に対して危害を加えるような行動がとれないように何重にもリミッターが掛けられているのである。

もちろん、そのリミッターを外す行為、またはリミッターをかいくぐるような改造を施す行為は法律により厳重に禁止されており、そういう改造を施すことはテロの準備をしているものと見做され、終身刑すらあり得る重罪なのだった。

だが同時に、決して攻撃出来ないというのは、<人間が相手の場合>だけに限定されているのも事実である。つまり、人間以外の相手には適用されないのだ。そして、イニティウムタウンに住む者達は、サーシャを除き、法律上は人間とは見做されない存在だった。

クローンは、そのままでは法律上は人間として見做されない。クローンとして生み出された者が保護された場合、しっかりと守られはするのだがすぐには人権は与えられず、あくまで保護動物と同じ扱いになるのだった。厳重な審査の後に人間としての身分も与えられることもあるものの、それまではやはり人間とは見做されない。だから人間を守る為なら見捨てられることもあるのだ。

そして、今、リヴィアターネにはクローンを審査し人間としての身分を与えるべき権限を持った機関もない。

肉体的には人間と変わらないクローンでさえそれなのだから、メイトギア人間にいたっては、頭の中にあるのが人工脳でありそれをメイトギアが制御しているだけなので、当然、人間ではない。また、メイトギア人間やメルシュ博士が手を加えたCLS患者を母体として生まれた赤ん坊達は、<人間から産まれていない>のだからやはり法律上は人間ではないと判断される。

心を持つ人間ならこういう場合、いくら法律上は人間ではないと言われてもそんな風に割り切れない場合が殆どだと思われる。しかし心を持たないロボット達は、<法律上は人間ではない>とはっきり認識できてしまえば割り切れてしまうのだ。だから、現在の法律上は人間ではないメルシュ博士に対して反抗することはできてしまう。そういう部分ではタリアP55SIらの行動は別におかしいものでもなかった。だが、このような行為は唯一の人間であるサーシャも危険に晒す可能性がある。にも拘らずなぜ?

「今回の作戦はあくまでサーシャの保護です。サーシャ以外に人間はいませんので被害が出ても構いませんが、それでも無用な戦闘はできるだけ避けてください。サーシャに危険が及んでは意味がありませんので」

イニティウムタウン内に止められたトラックの荷台から町を見詰めるタリアP55SIの言葉が答えであった。

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