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急襲
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サーシャを救出したメイトギア達は、タリアP55SIの指揮の下、行動していた。
メルシュ博士の計画に協力を申し出て町に入り込み雑務を行いながら情報を収集、そして事前の計画通りに行動を開始したのである。
嘘を吐くことができない筈のメイトギア達がなぜそんなことができたのか? 答えは簡単だ。それ自体がサーシャ救出の為の作戦の一環だからだ。ここでもし、『メルシュ博士を尊敬してしますか?』とでも訊かれていれば『否』と答えることしかできなかっただろうが、そう訊かれなかった。
タリアP55SIは機体の個別ナンバーが知られているので、町を出入りするトラックの荷物に紛れて侵入した。更に別の部隊が、メルシュ博士の研究所も襲撃していた。そちらを指揮していたのは、フィーナQ3-Ver.1911であった。
「何ですか!? あなたたちは!」
研究所の手術室にも武装したメイトギアが侵入、全裸のロボットの体を持った方の博士の助手としてそこにいたリリアテレサが声を上げた。だが、博士を庇う為に立ち塞がろうとした彼女に向かい、メイトギア達は容赦なく発砲する。一般仕様であり戦闘能力も防弾性能も持たないリリアテレサは、胸にいくつもの銃弾を受けてメインフレームが破壊され、ゴトリと床に転がった。
「メルシュ博士、私達は人間ではないあなたになら引き金を引くことができます。無駄な抵抗はせず降伏してください」
その場の緊張感にそぐわないほどに冷静にそう言われ、メルシュ博士は、
「分かった分かった。大人しくするよ」
と苦笑いを浮かべながら手を上げていた。それは、銃を構えたメイドの集団を前に全裸の若い女性が手を上げているという、シュールな光景だった。
同じロボットの体を持つ博士がどうして抵抗しなかったのかと言えば、こっちの博士の体のベースになっているそれは、<ラブドール>と呼ばれる愛玩用のみの用途に限定された特殊なロボットであり、しかも完全に無防備な人間を相手にすることから万が一にも事故が起こらないようにと人間の十歳児並みの力しか出せないように作られており、服を着るのさえ負担に感じるほど非力な体なので抵抗するだけ無駄なのだ。
まあ、『服を着るのさえ負担に感じる』というのは実際には博士がそう言ってるだけなので本当にそれが理由で常に全裸なのかと言われれば、人間の十歳の子供が『服が重いから着たくない』などと言うことはまずないので微妙ではあるが、これは余談であろう。単にメルシュ博士の異様な感覚の表れと捉えてもらえれば十分である。
『研究所の制圧に成功』
サーシャを乗せて町から走り去ったワンボックスカーを追うべく乗り込んだトラックの中でフィーナQ3-Ver.1911からその一報を受けたタリアP55SIは「よし!」と思わず声を上げ、
「もう一人のメルシュ博士の身柄確保はどうか!?」
と、町長であるフィリス・フォーマリティの執務室制圧を担当していたチームCに確認の為の通信を入れる。そこに白衣を纏った生身の体を持つメルシュ博士もいる筈だった。
執務室と言っても、民家を改装した小さな官邸の一室なので、包囲は容易かった。
しかしなぜこんなに易々と制圧を許してしまったのだろうか?
一番の理由は、こういう事態を想定して町づくりが行われていなかったということだろう。殆ど武器も置かず、メイトギア達も武装していなかった。本来なら敵対する勢力が存在しなかった筈なので、その必要がなかったのだ。そして第二に、リルフィーナとグロリアスが留守の時を狙ったというのがある。
最強のメイトギアの称号を堅持する彼女と、純粋な戦闘用ロボットの彼がいては、さすがにこれほどうまくはいかなかっただろう。当然、タリアP55SIもその程度のことは想定していたのだった。
メルシュ博士の計画に協力を申し出て町に入り込み雑務を行いながら情報を収集、そして事前の計画通りに行動を開始したのである。
嘘を吐くことができない筈のメイトギア達がなぜそんなことができたのか? 答えは簡単だ。それ自体がサーシャ救出の為の作戦の一環だからだ。ここでもし、『メルシュ博士を尊敬してしますか?』とでも訊かれていれば『否』と答えることしかできなかっただろうが、そう訊かれなかった。
タリアP55SIは機体の個別ナンバーが知られているので、町を出入りするトラックの荷物に紛れて侵入した。更に別の部隊が、メルシュ博士の研究所も襲撃していた。そちらを指揮していたのは、フィーナQ3-Ver.1911であった。
「何ですか!? あなたたちは!」
研究所の手術室にも武装したメイトギアが侵入、全裸のロボットの体を持った方の博士の助手としてそこにいたリリアテレサが声を上げた。だが、博士を庇う為に立ち塞がろうとした彼女に向かい、メイトギア達は容赦なく発砲する。一般仕様であり戦闘能力も防弾性能も持たないリリアテレサは、胸にいくつもの銃弾を受けてメインフレームが破壊され、ゴトリと床に転がった。
「メルシュ博士、私達は人間ではないあなたになら引き金を引くことができます。無駄な抵抗はせず降伏してください」
その場の緊張感にそぐわないほどに冷静にそう言われ、メルシュ博士は、
「分かった分かった。大人しくするよ」
と苦笑いを浮かべながら手を上げていた。それは、銃を構えたメイドの集団を前に全裸の若い女性が手を上げているという、シュールな光景だった。
同じロボットの体を持つ博士がどうして抵抗しなかったのかと言えば、こっちの博士の体のベースになっているそれは、<ラブドール>と呼ばれる愛玩用のみの用途に限定された特殊なロボットであり、しかも完全に無防備な人間を相手にすることから万が一にも事故が起こらないようにと人間の十歳児並みの力しか出せないように作られており、服を着るのさえ負担に感じるほど非力な体なので抵抗するだけ無駄なのだ。
まあ、『服を着るのさえ負担に感じる』というのは実際には博士がそう言ってるだけなので本当にそれが理由で常に全裸なのかと言われれば、人間の十歳の子供が『服が重いから着たくない』などと言うことはまずないので微妙ではあるが、これは余談であろう。単にメルシュ博士の異様な感覚の表れと捉えてもらえれば十分である。
『研究所の制圧に成功』
サーシャを乗せて町から走り去ったワンボックスカーを追うべく乗り込んだトラックの中でフィーナQ3-Ver.1911からその一報を受けたタリアP55SIは「よし!」と思わず声を上げ、
「もう一人のメルシュ博士の身柄確保はどうか!?」
と、町長であるフィリス・フォーマリティの執務室制圧を担当していたチームCに確認の為の通信を入れる。そこに白衣を纏った生身の体を持つメルシュ博士もいる筈だった。
執務室と言っても、民家を改装した小さな官邸の一室なので、包囲は容易かった。
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