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大人にとって都合のいい子供
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キトゥハは言う。
「子供というものはな、お前自身がそうであったように、大人が思っているよりも様々なことを見て聞いて考えているものだ。
大人はえてして、自分もかつてそうだったことを忘れてしまう。それを忘れて、自分が思い描く<大人にとって都合のいい子供>を子供に対して求めてしまう。
だから子供と噛み合わない。
子供は大人の付属物でも従属物でもない。子供は<他者>なんだ。<自分とは違う者>なんだ。自分とは違う他者を自分の思い通りにしようとするから軋轢が生じる。無理が出る。
考えてみれば分かるはずだ。
自分は、嘘吐きで口先ばかりで自らの過ちは棚に上げて横柄で横暴なだけの相手の言いなりになりたいと本気で思うか? そのような輩にいいように顎で使われれば、いつか力をつけて立場を逆転させて、自分がやられたことにおまけをつけてやり返したいと考えるとは思わないか?
もしそう思うのなら、それが<答>だ。
イティラは今、お前に対してそう思っているか? いつか力をつけて仕返ししたいと、復讐したいと、報復したいと思っているか? この子はお前に対して『いつか仕返ししてやる!』と考えてるように見えるか? そう思わせるようなことを、考えてしまうようなことを、お前は、この子に対してやっているか?
少なくとも私にはそうは見えないな」
「……」
キトゥハの言うとおりだった。
ウルイは、イティラに対して理不尽なことをしたつもりは一切無い。幼いからまだ自分と同じようにはできないことくらい分かるから、高望みはしない。できないことを責めるつもりもない。できるようになったらしてくれればいいと思っていた。
するとイティラは、彼の役に立ちたいと、自分から教えを乞うてきた。
無論、すぐにできるわけじゃない。ウルイが自らやった方が確実に早いことも多い。結局、二度手間になることも少なくない。
けれど、そうやって何度も挑戦しているうちにできるようになった。狩りの手伝いができるようになったのも、イティラがやりたいと言い出したことをウルイがやらせたからだ。何度も失敗しながらも経験を積み、そして今では頼りになるほど上達した。
そして彼女が上手くできれば、ウルイは、
「ありがとう……」
と口にした。
失敗した時は、
「いつかできるようになればいい……」
と言っただけだ。
それに対してイティラは、『ありがとう』と言えば満面の笑みを浮かべて喜ぶし、『いつかできるようになればいい』と言えば悔しそうに俯いた。自分が上手くできないことを悔しいと思う気持ちが彼女の中にあることがそれで分かった。
だからウルイは彼女を責めなかった。責める必要がないと感じた。
できなければ悔しくて落ち込み、できれば笑顔を見せる。
彼にとってはそれで十分なのだった。
「子供というものはな、お前自身がそうであったように、大人が思っているよりも様々なことを見て聞いて考えているものだ。
大人はえてして、自分もかつてそうだったことを忘れてしまう。それを忘れて、自分が思い描く<大人にとって都合のいい子供>を子供に対して求めてしまう。
だから子供と噛み合わない。
子供は大人の付属物でも従属物でもない。子供は<他者>なんだ。<自分とは違う者>なんだ。自分とは違う他者を自分の思い通りにしようとするから軋轢が生じる。無理が出る。
考えてみれば分かるはずだ。
自分は、嘘吐きで口先ばかりで自らの過ちは棚に上げて横柄で横暴なだけの相手の言いなりになりたいと本気で思うか? そのような輩にいいように顎で使われれば、いつか力をつけて立場を逆転させて、自分がやられたことにおまけをつけてやり返したいと考えるとは思わないか?
もしそう思うのなら、それが<答>だ。
イティラは今、お前に対してそう思っているか? いつか力をつけて仕返ししたいと、復讐したいと、報復したいと思っているか? この子はお前に対して『いつか仕返ししてやる!』と考えてるように見えるか? そう思わせるようなことを、考えてしまうようなことを、お前は、この子に対してやっているか?
少なくとも私にはそうは見えないな」
「……」
キトゥハの言うとおりだった。
ウルイは、イティラに対して理不尽なことをしたつもりは一切無い。幼いからまだ自分と同じようにはできないことくらい分かるから、高望みはしない。できないことを責めるつもりもない。できるようになったらしてくれればいいと思っていた。
するとイティラは、彼の役に立ちたいと、自分から教えを乞うてきた。
無論、すぐにできるわけじゃない。ウルイが自らやった方が確実に早いことも多い。結局、二度手間になることも少なくない。
けれど、そうやって何度も挑戦しているうちにできるようになった。狩りの手伝いができるようになったのも、イティラがやりたいと言い出したことをウルイがやらせたからだ。何度も失敗しながらも経験を積み、そして今では頼りになるほど上達した。
そして彼女が上手くできれば、ウルイは、
「ありがとう……」
と口にした。
失敗した時は、
「いつかできるようになればいい……」
と言っただけだ。
それに対してイティラは、『ありがとう』と言えば満面の笑みを浮かべて喜ぶし、『いつかできるようになればいい』と言えば悔しそうに俯いた。自分が上手くできないことを悔しいと思う気持ちが彼女の中にあることがそれで分かった。
だからウルイは彼女を責めなかった。責める必要がないと感じた。
できなければ悔しくて落ち込み、できれば笑顔を見せる。
彼にとってはそれで十分なのだった。
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