あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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野生に生きる者同士の

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一度ならず二度までもウルイの必殺の一射を躱してみせたことで、<銀色の孤狼>が彼の矢を躱せたのはまぐれなどでないことが確認できてしまった。

だが、それでもウルイは慌てない。自分は決して無敵の存在などではない。道具が使えて少しばかり頭が回るというだけの、他の獣達よりはごく僅かに有利な部分があるだけでしかないことはわきまえていたからだ。

だから、イティラの助けが必要なのであると。

すると今度はイティラが、短刀を構えて茂みの中から飛び出し、孤狼へと一直線に迫った。

前回は気後れしていたために動きに精彩を欠いていたが、今回は違う。ウルイと共にいることで切れ味鋭い刃のようなそれとなっていた。

とは言え、イティラ自身の強さは、未熟な狼と大差ないというのも事実。彼女一人では勝ち目はない。

彼女一人では。

しかし今は、ウルイに加え、狼達もいる。

狼達のボスは、突然現れて孤狼に攻撃を仕掛けたイティラについて、すぐに『敵ではない』と判断した。

もちろん、決して<仲間>ではないものの、少なくとも今の時点では孤狼を<敵>として認識しているのは間違いなく、利用できると踏んだのだろう。

直後、自身もイティラに続いて動く。

「!?」

それを見て孤狼も反応した。さらにこの時、孤狼の背後からも狼が迫っていたのだが、それすら察知して間合いを取った。するとそこに、また別の気配。

「ガウッ!?」

ここで孤狼が初めて声を上げた。自身の体を何かがかすめたことに反応したようだ。

ウルイが放った矢だった。見た目では分かりにくいが、この時、かすめた矢が孤狼の背中の皮膚を裂き、僅かだが出血させていたのである。それに対して憤っているのだろう。

『俺の体に傷を付けたな!?』

的に。

しかし、これで孤狼は動きを大きく制限されたことになる。

狼達やイティラの攻撃を躱すために空いたスペースに移動すると、矢が飛んでくるのだ。

ウルイとしてもそれが狙いだった。他の狼達やイティラに間違って当ててしまわないためにも、空いたスペースに孤狼が移動したところを狙うのだ。つまりイティラは、狼達と連携して、ウルイが狙いやすい位置に孤狼を追い立てるのである。

ウルイがイティラを見付けた時に狼を射た以降は直接的な衝突はなかったものの、互いに呼吸音すら聞こえるような位置にまで迫って一触即発の状態になったことは何度もある。

だが、逆に、だからこそ互いの<呼吸>も知っていた。命を狙い、狙われもする関係ゆえに分かることもあるのだろう。

馴れ合いはしない。しないが、利用できる時には利用する。

野生に生きる者同士の<したたかさ>が、そこにはあったのだった。

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