あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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ボスの器

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狼達は、イティラやウルイと連携することを決めた。そうなれば躊躇はない。イティラ一人が加わっただけなら大した差はないものの、見えない位置から恐ろしく正確に矢を放ってくるウルイの存在は、孤狼にとっても非常に厄介なものとなった。

なにしろ、攻撃を躱そうと間合いを取ればそこに矢が飛んでくるのである。一瞬たりとて気が抜けない。

それまでは機先を制したこともあって優位にことを進めていたのが、一気に逆転してしまったのだ。

「ヴヴヴ……ッ!」

あからさまな苛立ちが孤狼の全身の毛を逆立たせる。

それにより、孤狼の大きさが倍ほどに膨れ上がったようにも見えた。

すると、途端に、未熟な若い狼達の気勢が殺がれるのが分かった。格の違いを察したのだろう。

しかし、

「ヴォアッッ!!」

群れの<ボス>が、爆発音のような咆哮を上げる。

「ヒッ!?」

それにイティラも思わず身を竦めてしまった。

が、同時に、尻尾を巻いて下がろうとしていた若い狼達もビクンと体を竦ませ、それが逆に気を取り直すきっかけとなったようだ。

下がりかけていた場に踏みとどまり、改めて牙を剥いて孤狼を睨み付ける。

いささか年齢はいっているはずだが、さすがに<年の功>と言ったところか。立派な<ボス>である。だからこそ、一瞬で瓦解するようなことがなかったのだろう。

『すごい……!』

その様子に、イティラも素直に感心した。<群れを率いるボス>の器を肌で感じる。

タイプは違うが、それどころか狼と人間という大きな違いはあるが、ウルイのそれにも通じるものがあった。

そんな<ボス>に比べれば、<銀色の孤狼>は、見た目も美しいし立派だし強そうだし実際強いが、あの<獣人の青年>にも通ずる、

『傲慢さ』

が鼻についてしまって、好きになれなかった。好きになれない理由を具体的に察してしまった。

『たぶん、私とウルイだけでやり合ってたらそこまでじゃなかったんだろうけど、群れの狼達への態度が、なんか嫌……!』

なんてことも思ってしまう。

『この狩場は、俺のものだ!! お前達は尻尾を巻いて出ていけ!!』

とでも言いたげなそれに感じられてしまったということか。

この孤狼が実際にそんなことを思っているかどうかは分からない。分からないが、少なくともイティラはそう感じてしまった。

そう感じてしまうと、もう受け入れられそうになかった。

「うるるるるるるるっ!!」

狼達と同じく牙を剥き出して孤狼と対峙する。

だが、自身の威嚇が通じなかったにもかかわらず、孤狼の方も引き下がる様子を全く見せない。それどころか、さらに全身に力を漲らせ、その熱で空気さえも揺らめかせるかのように立ちはだかったのだった。

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