あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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俺を信じろ!

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前回、イティラとウルイを相手にした時には瞬間的に逃げた孤狼だったが、今回はさらに狼達もいるというのに、逃げなかった。

数的には明らかに不利だというのに。

その謎は、すぐに解明された。

「え……!?」

孤狼を追い立てるために短刀で切りかかったイティラが戸惑う。距離を取ると思った孤狼が、自分の方にさらに突っ込んできたのだ。

「くっ!!」

危ういところで牙を躱したものの、代わりにイティラの背後にいた若い狼が、

「ギャーン!」

と悲鳴を上げた。見ると、片方の耳が半分になっていた。孤狼の牙で切り裂かれたらしい。

しかもそのまま、次の狼へと牙を向ける。

「……他の狼や私を盾に使う気……!?」

イティラが思わず声を上げる。

その通りだった。間合いを取って空いたスペースに退避すれば矢が飛んでくることを悟って、逆に乱戦を仕掛けてきたのだ。

「……こいつ…!」

茂みの中を移動しつつ孤狼を狙っていたウルイも、その意図を察する。

『そうか……前はイティラしかいなかったから、盾にできなかったということか……!』

孤狼の狡猾さに舌を巻く。

それでも何とか狙おうとするものの、他の狼達やイティラが必ずすぐ傍にいて、狙えない。

『なんなのよ! もう!!』

イティラも、入り乱れてしまって、動こうとすると狼達にぶつかってしまったりした。

ウルイが狙いやすいように追い立てたいのに、彼女の意図を完全に察していて、思ったとおりに動いてくれない。

仕方なく、イティラの方が間合いを取った。すると、孤狼と狼達がめまぐるしく位置を入れ替えて動き回っていて、イティラでさえ追いきれない光景がよく見えた。

しかも、狼達の方に確実にダメージが蓄積していくのも分かる。

何という強さ。

狼達のボスでさえ攻めあぐねているのが分かってしまう。

「!?」

その時、イティラがハッとなった。孤狼ではなく、茂みの方に視線を向ける。

『ウルイ……!?』

そう、ウルイだった。ウルイが茂みの中から姿を現したのだ。その手が、何かを示すように動く。

<符丁>だった。

その符丁が示すもの。

『そんな……!』

イティラは戸惑ったが、ウルイは再び同じ符丁を送ってきた。その上で、自身の胸をどん!と叩く。

『俺を信じろ!』

と言ってるのが彼女には分かってしまった。

「く……!」

イティラが泣きそうな顔になりながらも、<承諾>を示す符丁を返す。

ウルイは、無謀なことはしない。彼がすることには、必ず<勝算>がそこにある。

イティラはずっとそれを見てきた。そして、ウルイは『俺を信じろ!』という。

これは、彼女が彼を信じられるかどうかが試されているのだと言えただろう。

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