126 / 126
あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない
しおりを挟む
キトゥハを送り、自分達の家へ帰る途中、イティラは言った。
「ウルイ! 帰ったら子供を作るよ!」
いささか突然のようにも思えるその言葉に、しかしウルイは、苦笑いは浮かべながらも驚いた様子はなかった。
「本当に俺でいいのか? イティラにとっては父親みたいなものだろう……? 他にもっといい男を探した方がいいんじゃないか……?」
などと口にしたが、
「あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてないよ! ウルイ! 私にとってはあなた以上の男の人なんていない……!」
彼に向き直り、真っ直ぐな視線できっぱりとそう言い切った。なるほど<強さ>だけで言うならクヴォルオのように彼を圧倒する者はこの世に何人もいるだろう。だが、それだけだ。その者達は、イティラのことを碌に知りもしないし彼女の<心>を見てはくれない。
ただウルイが、ウルイだけが、イティラの心までちゃんと見て、受け止めてくれる。
それだけの話なのだ。
「そうか……」
決して揺らぐことのない彼女の言葉に、ウルイは呟くように応えるしかできなかった。
確かに、ウルイにとっても、イティラは、<仲間>ではあっても<娘>ではなかった。自分に<父親としての価値>などあるようには思えなかったからだ。自分しかいなかったから彼女を守ってはきたものの、それは決して父親としてではなかった。
だから、もし、イティラを妻としても、<仲間>だったものが<家族>になるというだけの話でしかない。
あくまで、それまで<女性>と見做してこなかったのを、今後は、自分と同じく<大人>で、しかも<女性>として接することになるだけなのだ。
そう。まだまだ経験が浅くて完全な一人前とは言い難いものの、彼女はもう立派な<大人>。その事実を認めないのは、イティラに対する侮辱でさえあるだろう。
そして、自分達の家に帰ったイティラは、自分の<想い>のままに、ウルイに襲い掛かった。
もうこれ以上、奥手なウルイに四の五の言わせるつもりはなかった。
普段から鼠色の毛皮に包まれているゆえに服など着ていなかったので、それこそそのままウルイを押し倒して、着ているものを剥ぎ取って、彼の<モノ>を口に咥え、本能の赴くままに舌を巻きつけて刺激し、いきり勃たせた。
「―――――♡」
事ここに至って観念したウルイも自らのモノを隆々と屹立させ、彼女の気持ちに応える。
「ウルイ…ウルイ……ウルイ……っ! 愛してる、愛してる、愛してる! 大好き、ウルイぃ……!」
これまで、時には限界を超えるような途轍もない挙動を発揮してきたことで自然と<膜>は失われていたのか破瓜の痛みさえほぼなく、しかもウルイに襲い掛かった時にはもうすでに十分に潤っていて何の抵抗もなく、イティラは自身の深いところまでウルイを受け入れた。
それからやはり本能が命じるままに肉体を躍らせ、命の昂りを促す。
すると、イティラの体を包む毛が、白く輝き始める。彼女自身の昂りに合わせるかのように。
それはまるで、新婦を包む純白のドレスのようにさえ見えた。
その中で、イティラはなお上り詰める。
「あ……あ……あぁ……っ!」
甘い声が、彼女の喉を衝く。さらなる高みを目指して。
カシィフス。
キトゥハ。
それらの命の終わりを見届け、送り、そして今、新たな命を自身の中に迎え入れるために……
これもまた、
<命の循環>
というものなのだろう。
それから数年後。
小さいけれど、まだ新しさを感じさせると同時に手作り感に満ちた家から、鼠色の影が二つ、ドアを撥ね飛ばすように開けて外へと飛び出した。その二つの影を追うようにして、
「こらーっ!! ウルィア! イティハ!!」
『こら』と言いながらも、でもどこか慈しみを感じる女性の声が響き、
「きゃはは♡」
「あはは♡」
二つの鼠色の影=獣人の子供が二人、森の中を楽しげに駆けまわる。その一人は見事な装飾が施された鞘に収まった短刀を背負い、もう一人の頭には瑪瑙の髪飾りが輝いていたのだった。
~了~
「ウルイ! 帰ったら子供を作るよ!」
いささか突然のようにも思えるその言葉に、しかしウルイは、苦笑いは浮かべながらも驚いた様子はなかった。
「本当に俺でいいのか? イティラにとっては父親みたいなものだろう……? 他にもっといい男を探した方がいいんじゃないか……?」
などと口にしたが、
「あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてないよ! ウルイ! 私にとってはあなた以上の男の人なんていない……!」
彼に向き直り、真っ直ぐな視線できっぱりとそう言い切った。なるほど<強さ>だけで言うならクヴォルオのように彼を圧倒する者はこの世に何人もいるだろう。だが、それだけだ。その者達は、イティラのことを碌に知りもしないし彼女の<心>を見てはくれない。
ただウルイが、ウルイだけが、イティラの心までちゃんと見て、受け止めてくれる。
それだけの話なのだ。
「そうか……」
決して揺らぐことのない彼女の言葉に、ウルイは呟くように応えるしかできなかった。
確かに、ウルイにとっても、イティラは、<仲間>ではあっても<娘>ではなかった。自分に<父親としての価値>などあるようには思えなかったからだ。自分しかいなかったから彼女を守ってはきたものの、それは決して父親としてではなかった。
だから、もし、イティラを妻としても、<仲間>だったものが<家族>になるというだけの話でしかない。
あくまで、それまで<女性>と見做してこなかったのを、今後は、自分と同じく<大人>で、しかも<女性>として接することになるだけなのだ。
そう。まだまだ経験が浅くて完全な一人前とは言い難いものの、彼女はもう立派な<大人>。その事実を認めないのは、イティラに対する侮辱でさえあるだろう。
そして、自分達の家に帰ったイティラは、自分の<想い>のままに、ウルイに襲い掛かった。
もうこれ以上、奥手なウルイに四の五の言わせるつもりはなかった。
普段から鼠色の毛皮に包まれているゆえに服など着ていなかったので、それこそそのままウルイを押し倒して、着ているものを剥ぎ取って、彼の<モノ>を口に咥え、本能の赴くままに舌を巻きつけて刺激し、いきり勃たせた。
「―――――♡」
事ここに至って観念したウルイも自らのモノを隆々と屹立させ、彼女の気持ちに応える。
「ウルイ…ウルイ……ウルイ……っ! 愛してる、愛してる、愛してる! 大好き、ウルイぃ……!」
これまで、時には限界を超えるような途轍もない挙動を発揮してきたことで自然と<膜>は失われていたのか破瓜の痛みさえほぼなく、しかもウルイに襲い掛かった時にはもうすでに十分に潤っていて何の抵抗もなく、イティラは自身の深いところまでウルイを受け入れた。
それからやはり本能が命じるままに肉体を躍らせ、命の昂りを促す。
すると、イティラの体を包む毛が、白く輝き始める。彼女自身の昂りに合わせるかのように。
それはまるで、新婦を包む純白のドレスのようにさえ見えた。
その中で、イティラはなお上り詰める。
「あ……あ……あぁ……っ!」
甘い声が、彼女の喉を衝く。さらなる高みを目指して。
カシィフス。
キトゥハ。
それらの命の終わりを見届け、送り、そして今、新たな命を自身の中に迎え入れるために……
これもまた、
<命の循環>
というものなのだろう。
それから数年後。
小さいけれど、まだ新しさを感じさせると同時に手作り感に満ちた家から、鼠色の影が二つ、ドアを撥ね飛ばすように開けて外へと飛び出した。その二つの影を追うようにして、
「こらーっ!! ウルィア! イティハ!!」
『こら』と言いながらも、でもどこか慈しみを感じる女性の声が響き、
「きゃはは♡」
「あはは♡」
二つの鼠色の影=獣人の子供が二人、森の中を楽しげに駆けまわる。その一人は見事な装飾が施された鞘に収まった短刀を背負い、もう一人の頭には瑪瑙の髪飾りが輝いていたのだった。
~了~
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後まで読ませていただきました!
ウルイとイティラ、2人が過酷な世界の中で、互いへの認識の点ですれ違いながらも、絆を育てていく展開に、とっても感動しました。ラブストーリーとして読んでも、楽しい。
キトゥハの教えは、素晴らしいですね。志や思いが世代を超えて受け継がれていく点も、素敵です。
ありがとうございます。そう言っていただけると励みになります。
今後も自分の中にあるものを形にしていきたいと思います。