JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

大人の責任

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アリーネが担当できる分、百体の怪物を倒して、いよいよ錬治が残りを片付けないといけなくなった。

後、百三十弱。

けれど、錬治の体はますます言うことを聞かなくなってきている。既に処方された痛み止めも残り少ない。痛み止めについては、最悪、病院から拝借してくればいいかもしれない。薬を勝手に持ち出せば病院側に迷惑が掛かってしまうのは分かっていても、もう既に彼にはそれを気遣う余裕は残されていなかった。

勝手にどこかから調達してくるアリーネは別にして、錬治と綾乃とみほちゃんとエレーンとシェリーの飲食費で所持金も底をつき、申し訳ないと思いながらも大手スーパーやコンビニから無断で拝借してくる状態になった。

それでも、一つの店舗でそれをすると被害が大きくなると考え、なるべく毎回別の店舗から調達することを心掛けた。

「泥棒させてしまってすいません」

エレーンが、スーパーから出てくる綾乃に向かって申し訳なさそうに頭を下げた。

『ああ、いい子だなあ……』

錬治は思う。

みほちゃんも、

「あとでちゃんとかえしたらだいじょうぶだよね?」

と心配してくれる。

けれどここは敢えて、

「後で返すつもりでも、勝手に持っていったら泥棒なんだよ。だから僕が、責任を取らなくちゃいけない。僕は大人だからね」

と説明した。

「そんなあ……」

みほちゃんが悲しそうに声を上げる。

「大丈夫、ちゃんと説明したら分かってもらえると思うし、『コラッ!』って怒られるだけで済むと思うよ」

それでも納得できないみほちゃんは、

「じゃあ、わたし、がまんする。おなかへってもがまんする! おじさんやおねえちゃんがおこられるのイヤだ」

とまで言い出した。

『なんて優しい子なんだろう……』

錬治は胸があたたかくなるのを感じた。

だけど、

「ダメだよ。これはおじさんからの命令だ。みほちゃんはしっかり食べないとダメ。しっかり食べて、元気なままでパパとママのところへ帰らなきゃダメ。でないとおじさんとお姉ちゃんは本当にお巡りさんに捕まっちゃうよ」

「え~…?」

納得はできないみたいだけど、

「…わかった…」

とは言ってくれた。そんなみほちゃんの頭を、錬治はそっと撫でる。

「ありがとう。みほちゃんは本当にいい子だな…」

厳密に言えば、いくら食べ物を盗んだところで錬治達の犯行だということはきっと立証されないだろう。だから逮捕されたりもしないハズだった。

でも……

『でも、そうじゃないんだ。『犯罪だと立証できないならやってもいい』って訳じゃないっていうことを、これから大きくなって社会に関わっていくことになるみほちゃんやシェリーちゃんやエレーンさんには分かってもらわなくちゃいけないんだ……』

それが大人の責任だと、彼は思ったのだった。

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