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第三部
よろずやだったら安心
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『まだ僕のことを<遥偉>とは呼んでくれないんだね』
少佐にそう言われて、私は、
「あ…いえ、あの…その……」
とうろたえてしまいました。もうずっと『少佐』と呼んできたので、いまさら他の呼び方をするということ自体がピンとこないんです。
「ごめんなさい……」
思わず頭を下げた私に、
「いいよ。それを無理強いするのも好ましいことじゃないだろうからね」
少佐は穏やかに微笑んでくれました。一方、
「は~、やだやだ。そういうところがダメなんだってんだお前は」
伍長は呆れ顔で肩を竦めます。だけど今度は、クレアが、
「デモ、ビアンカ、アンマリ、イジメチャ、ダメ」
伍長を諫めてくれました。すると伍長は、
「だってよ。優しいクレアに感謝するんだな」
とも。まったく、この人は……!
そんなこんなで少佐との関係は一段階進んだようにも思いますけど、よろずやのシフトについては何にも解決してません。
「はあ……」
山猫人はとても気まぐれで、決まったことを決まったとおりにするということを苦手とする種族です。でも、<猫>は、本来、自分が決めたルーチンに従うことを好む生き物という一面もありますので、外見こそ猫を思わせるものでありながらやっぱり猫ではないんですよね。
で、祭の準備中、どうすればいいのか少し悩んでてつい溜息をこぼしてしまった私に、
「どうしたの? ビアンカ」
メイミィが声を掛けてきました。心配そうな表情をしてるのが分かります。
最近は、獣人達の表情の区別もある程度はつくようになってきました。
「実は……」
そして私は、彼女にことの顛末を語ったんです。その途端、
「じゃあ、私、お手伝いする…!」
彼女が前のめりになってそんなことを。
「え…? でも、仕事は夜だよ? それにフロイは梟人だし……」
そう。鼠人だけでなく、兎人も、いくらかはマシとは言え梟人のことは苦手としているんです。加えて、兎人は基本的に昼行性。夜も起きていられないわけじゃないにしても、ずっと昼夜逆転というのは、さすがに厳しいはずです。
「お願い! 私も、ビアンカの力になりたい……!」
メイミィが力強くそう言ってくれるのは嬉しいんですが……
ここはひとつ、メイミィの家族にも相談するということで。
こうしてメイミィの家に行くと、
「ヨロズヤナラ、イインジャナイカナ?」
「ウン、イイト、オモウ」
「え…ええ……?」
メイミィの両親もあっさりと受け入れてくれました。
「でも、お仕事は夜だし、それに、梟人と一緒だから……」
念を押す私に、両親は、
「デモ、ヨロズヤ、ダヨネ」
「ビアンカ、トーイ、ユキ、イル。イチバンアンシン」
『よろずやだったら安心』だと、言ってくれたんです。
少佐にそう言われて、私は、
「あ…いえ、あの…その……」
とうろたえてしまいました。もうずっと『少佐』と呼んできたので、いまさら他の呼び方をするということ自体がピンとこないんです。
「ごめんなさい……」
思わず頭を下げた私に、
「いいよ。それを無理強いするのも好ましいことじゃないだろうからね」
少佐は穏やかに微笑んでくれました。一方、
「は~、やだやだ。そういうところがダメなんだってんだお前は」
伍長は呆れ顔で肩を竦めます。だけど今度は、クレアが、
「デモ、ビアンカ、アンマリ、イジメチャ、ダメ」
伍長を諫めてくれました。すると伍長は、
「だってよ。優しいクレアに感謝するんだな」
とも。まったく、この人は……!
そんなこんなで少佐との関係は一段階進んだようにも思いますけど、よろずやのシフトについては何にも解決してません。
「はあ……」
山猫人はとても気まぐれで、決まったことを決まったとおりにするということを苦手とする種族です。でも、<猫>は、本来、自分が決めたルーチンに従うことを好む生き物という一面もありますので、外見こそ猫を思わせるものでありながらやっぱり猫ではないんですよね。
で、祭の準備中、どうすればいいのか少し悩んでてつい溜息をこぼしてしまった私に、
「どうしたの? ビアンカ」
メイミィが声を掛けてきました。心配そうな表情をしてるのが分かります。
最近は、獣人達の表情の区別もある程度はつくようになってきました。
「実は……」
そして私は、彼女にことの顛末を語ったんです。その途端、
「じゃあ、私、お手伝いする…!」
彼女が前のめりになってそんなことを。
「え…? でも、仕事は夜だよ? それにフロイは梟人だし……」
そう。鼠人だけでなく、兎人も、いくらかはマシとは言え梟人のことは苦手としているんです。加えて、兎人は基本的に昼行性。夜も起きていられないわけじゃないにしても、ずっと昼夜逆転というのは、さすがに厳しいはずです。
「お願い! 私も、ビアンカの力になりたい……!」
メイミィが力強くそう言ってくれるのは嬉しいんですが……
ここはひとつ、メイミィの家族にも相談するということで。
こうしてメイミィの家に行くと、
「ヨロズヤナラ、イインジャナイカナ?」
「ウン、イイト、オモウ」
「え…ええ……?」
メイミィの両親もあっさりと受け入れてくれました。
「でも、お仕事は夜だし、それに、梟人と一緒だから……」
念を押す私に、両親は、
「デモ、ヨロズヤ、ダヨネ」
「ビアンカ、トーイ、ユキ、イル。イチバンアンシン」
『よろずやだったら安心』だと、言ってくれたんです。
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