ネコナマナ ~マナちゃんのニャオンな日常~

京衛武百十

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感情の動物

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犯罪というものの、特に<粗暴犯>と言われるものの多くが『自分の感情を抑えなかったから起こったもの』という事実からでも分かる通り、感情に素直になることは必ずしも良い結果を生む訳ではないが、だからといって感情というものすべてを否定して抑えてしまえばいいかと言えば恐らくそれも違うだろう。

なにしろ、人間は<感情の動物>なのだから。

人間は道理だけでは動かない。正論だけでは納得しない。

それもまた、事実だと思われる。感情を抑える為には、それに値する納得できる<何か>も必要なのかもしれない。

だから玲那は言う。

「椎津さん。私に対して思うことがあるのでしたら、どうぞ私におっしゃってください。私は、椎津さんの<本音>に耳を傾ける用意があります。

今まではそれを口にした途端に大人は怒り出し、黙るように強要したかもしれませんが、少なくとも私はそれをするつもりはありません。

私を信じてくださいとは言いません。ただ、本音を打ち明けたくなった時にはおっしゃっていただければ幸いです。お話しいただいた内容は、椎津さんが『いい』とおっしゃらない限りは口外はしません。椎津さんのお母さんにも話しません。

私は、そういうことを専門としてる教員です。笹蒲池さんを担当する為に派遣されたのは事実ですが、教師や学校を信じられない児童こそが、私の専門なんです」

それは、琴羽を説得する為に発せられた言葉ではなかった。

あくまでただの<状況説明>でしかない。自分が何故、ここまでするのかというのを、琴羽が理解する為に必要な情報を提示したに過ぎなかった。それをどう解釈し、受け入れるかどうかについては琴羽の判断に委ねた。

彼女を、一人の人間として認めているが故に。

子供は未熟だからというだけで一個の人格として認めないというのであれば、一体、この世の人間のどれだけが果たして<大人>と呼べるのだろうか?。

些細なことで他人と諍いを起こすような、言い争うような、揉め事を起こすような人間のどこが<大人>なのだろうか。

玲那は決して自分を<立派な大人>だとは思っていない。むしろ欠陥だらけ、問題だらけのどうしようもないダメな大人だと考えている。そんな自分が『子供は未熟だから』という理由で対等な人格として扱わないなど、傲慢以外の何ものでもないと考えている。

だから、この<大人を舐め切った生意気な少女>のことも、ただ、一人の人間として扱うのだ。どれほどふざけたことを言っているように見えたとしても。

子供がそこまで捻くれてしまう原因は、間違いなく大人の側にあることを知っているが故に。

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