97 / 104
感情の動物
しおりを挟む
犯罪というものの、特に<粗暴犯>と言われるものの多くが『自分の感情を抑えなかったから起こったもの』という事実からでも分かる通り、感情に素直になることは必ずしも良い結果を生む訳ではないが、だからといって感情というものすべてを否定して抑えてしまえばいいかと言えば恐らくそれも違うだろう。
なにしろ、人間は<感情の動物>なのだから。
人間は道理だけでは動かない。正論だけでは納得しない。
それもまた、事実だと思われる。感情を抑える為には、それに値する納得できる<何か>も必要なのかもしれない。
だから玲那は言う。
「椎津さん。私に対して思うことがあるのでしたら、どうぞ私におっしゃってください。私は、椎津さんの<本音>に耳を傾ける用意があります。
今まではそれを口にした途端に大人は怒り出し、黙るように強要したかもしれませんが、少なくとも私はそれをするつもりはありません。
私を信じてくださいとは言いません。ただ、本音を打ち明けたくなった時にはおっしゃっていただければ幸いです。お話しいただいた内容は、椎津さんが『いい』とおっしゃらない限りは口外はしません。椎津さんのお母さんにも話しません。
私は、そういうことを専門としてる教員です。笹蒲池さんを担当する為に派遣されたのは事実ですが、教師や学校を信じられない児童こそが、私の専門なんです」
それは、琴羽を説得する為に発せられた言葉ではなかった。
あくまでただの<状況説明>でしかない。自分が何故、ここまでするのかというのを、琴羽が理解する為に必要な情報を提示したに過ぎなかった。それをどう解釈し、受け入れるかどうかについては琴羽の判断に委ねた。
彼女を、一人の人間として認めているが故に。
子供は未熟だからというだけで一個の人格として認めないというのであれば、一体、この世の人間のどれだけが果たして<大人>と呼べるのだろうか?。
些細なことで他人と諍いを起こすような、言い争うような、揉め事を起こすような人間のどこが<大人>なのだろうか。
玲那は決して自分を<立派な大人>だとは思っていない。むしろ欠陥だらけ、問題だらけのどうしようもないダメな大人だと考えている。そんな自分が『子供は未熟だから』という理由で対等な人格として扱わないなど、傲慢以外の何ものでもないと考えている。
だから、この<大人を舐め切った生意気な少女>のことも、ただ、一人の人間として扱うのだ。どれほどふざけたことを言っているように見えたとしても。
子供がそこまで捻くれてしまう原因は、間違いなく大人の側にあることを知っているが故に。
なにしろ、人間は<感情の動物>なのだから。
人間は道理だけでは動かない。正論だけでは納得しない。
それもまた、事実だと思われる。感情を抑える為には、それに値する納得できる<何か>も必要なのかもしれない。
だから玲那は言う。
「椎津さん。私に対して思うことがあるのでしたら、どうぞ私におっしゃってください。私は、椎津さんの<本音>に耳を傾ける用意があります。
今まではそれを口にした途端に大人は怒り出し、黙るように強要したかもしれませんが、少なくとも私はそれをするつもりはありません。
私を信じてくださいとは言いません。ただ、本音を打ち明けたくなった時にはおっしゃっていただければ幸いです。お話しいただいた内容は、椎津さんが『いい』とおっしゃらない限りは口外はしません。椎津さんのお母さんにも話しません。
私は、そういうことを専門としてる教員です。笹蒲池さんを担当する為に派遣されたのは事実ですが、教師や学校を信じられない児童こそが、私の専門なんです」
それは、琴羽を説得する為に発せられた言葉ではなかった。
あくまでただの<状況説明>でしかない。自分が何故、ここまでするのかというのを、琴羽が理解する為に必要な情報を提示したに過ぎなかった。それをどう解釈し、受け入れるかどうかについては琴羽の判断に委ねた。
彼女を、一人の人間として認めているが故に。
子供は未熟だからというだけで一個の人格として認めないというのであれば、一体、この世の人間のどれだけが果たして<大人>と呼べるのだろうか?。
些細なことで他人と諍いを起こすような、言い争うような、揉め事を起こすような人間のどこが<大人>なのだろうか。
玲那は決して自分を<立派な大人>だとは思っていない。むしろ欠陥だらけ、問題だらけのどうしようもないダメな大人だと考えている。そんな自分が『子供は未熟だから』という理由で対等な人格として扱わないなど、傲慢以外の何ものでもないと考えている。
だから、この<大人を舐め切った生意気な少女>のことも、ただ、一人の人間として扱うのだ。どれほどふざけたことを言っているように見えたとしても。
子供がそこまで捻くれてしまう原因は、間違いなく大人の側にあることを知っているが故に。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる