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トーイの章

自分の正直な思いを打ち明けられる相手

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こうやって夕食を終えると、俺はリーネとトーイに話し掛けた。

「俺達はこうやって家族みたいに暮らしてるが、本当は誰も血が繋がってない赤の他人ばっかりだ。でも、元々は夫婦だって赤の他人だよな。なのに、結婚することで<家族>になる。ということは、別に夫婦じゃなくたって赤の他人が家族になることがあってもいいと思うんだ。

リーネ。トーイ。俺達はあれこれあって偶然こうして巡り会って家族みたいに暮らすことになった。でも俺は、この出逢いにすごく感謝してる。何もなかった俺に家族をくれた二人には感謝してるんだ。だから俺は、リーネとトーイを大切にしたいと思う。

でも、俺も立派な人間じゃないし、これからも何度も失敗すると思うし、二人を怖がらせることもあるかもしれねえ。だからさ、もし、なんか不安だったり怖いと思ったら正直に言ってほしいんだ。もしそれで俺が不機嫌になったりしても、それは二人のせいじゃねえ。俺が幼稚なだけだ。そういう時はそっとしておいてくれたら収まるからよ」

と、今の時点で知っておいてほしかったことを伝えた。こういうのは大事だと思う。前世で俺は、女房とこういう話をしなかった。しないクセに、あらかじめ告げておかなかった約束事を勝手に俺の中で作って押し付けてた。そんなことをされて喜ぶ人間がいるか? 普通はいねえだろ。それが分かってんのに押し付けるとか、利口な人間のすることじゃねえよな。

今の俺が<利口な人間>ってわけじゃないにしても、それが分かってるならやっぱり<努力>は必要だよな。

そんな俺に、リーネも、

「私も、トニーさんに出逢えてよかったと思ってます……! 私の方こそよろしくお願います……!」

そう頭を下げた上で、

「それで私も、ちゃんとできないこととかたくさんあると思うんです。頑張りたいとは思ってますけど上手くできなかったごめんなさい……!」

さらに頭を下げて。

「ああ、いいよいいよ。分かってる。なんでもちゃんとできるわけじゃないのはお互い様ってもんだよ。わざといい加減なことをするのは褒められたもんじゃねえが、うっかりってのは誰でもあることだ。俺もきっと何度もうっかりすると思う。そんなことを繰り返しながらも人間ってのは生きていくんだ。大人だってそうだ。だったら子供はもっと失敗して当然だろ。

だからよ。何も心配要らねえ。失敗したって間違えたって、そっからまたやり直せばいいんだ。そういう時は正直に言ってくれたらいい。思ったことは言ってくれたらいいんだ」

『言いたいことも言えない世の中は生き辛い』

とか言う奴は前世にも多かったが、それはちょっと違うだろうって今は思う。

『自分の正直な思いを打ち明けられる相手がいないのは生き辛い』

ってのが正しいんじゃないかって今は感じてるんだ。

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