Gの愉悦

京衛武百十

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探索

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ちなみに、ゴキブリは単眼と複眼を合わせ持つタイプの昆虫だそうだが、単眼はほぼ機能していないらしく、そちらからは情報らしい情報は届いてこなかった。

複眼の方も十分な性能を発揮しているとは言い難い。おそらく、暗い隙間に隠れて暮らしているうちに、視力はほとんど必要としなくなっていったのだろう。

代わりに触角の性能がすこぶるいい。光も匂いも空気の流れすら触覚で感じ取ることができる。

私は、それらの触角や辛うじて機能している複眼からの情報を総合的に処理して『見てる』のだが、人間の感覚だとそれを処理できずにただただ戸惑うだけだろうな。

で、窓らしきものに映っているものがただの映像だとやっと気付いたということだ。人間の肉体で見たなら通常のそれとの違いにすぐに気付いたはずだが、感覚が違っているのでしっかりと意識を向けるまで気付かなかったのか。

部屋にいた時はただ隙間を探していただけだしな。

まあそれはいいとして、しかしこれはますます怪しいぞ。窓に見せかけたモニターに映像を映しているということは、外には見ていて楽しいだの癒されるだの気分が落ち着くだのという<景色>はないと見做すことができてしまうからな。

でなければわざわざこんな<演出>はするまい。

だが、それでいて開けられそうな構造にはなっているので、開けようと思えば開けられるのだろう。鍵も、よくあるクレセント錠だ。ゴキブリの体ではおよそ開錠できるものではないがな。

で、ここから推察できるものとしては、

『窓を模したモニターではあるが、本当に窓としての機能も併せ持つ』

故に、

『場合によってはそこを開けることもできなくはない』

ということだろう。つまりこの屋敷のすぐ外は宇宙空間や水中といったものではなく、

『見ていて気分のいい景色はないが、取り敢えず空気などはある空間は存在している』

と考えてもいいのかもしれんな。

ただとにかく、気密性は異様に高く、しかも堅牢で、この<窓>からの脱出は難しそうだ。そもそも、『窓を開けたらすぐ外』とは限らんという可能性もある。

そんな訳で、探索を続けるとしよう。

ゴキブリの能力を活かして壁を上り天井も調べる。

『ふむ。表面的な構造材はやはり一般的な建材のそれと変わらんな。ただ、加工の精度が異様に高い。ということは、これを作った時に用いられた技術は、標準的なものではない。と見做せるか』

クォ=ヨ=ムイとしてはあらゆるものの材質を完璧に把握できるのだが、さすがにそこまではいかないとはいえ、ゴキブリの優れた触角のおかげで、材質の細かい部分までかなり探知できるのが役立った。

部屋にいた時にも感じなくもなかったものの、それどころではなかったからあまり気にしていなかったのだ。

しかしこうなると、時間軸的に<人間体の私>がいた時間軸とは別、もしくはやはり、<別ルートの地球>という可能性が高いか。

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