Gの愉悦

京衛武百十

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一般的な

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「なんで…? なんでよぉ……」

いつの間にか、短くなった足でしっかりと立ち、何とかドアを開けようと、小娘は泣きながら必死に格闘していた。

そんな姿を見ても、無論、私が同情することはない。むしろ、

『これで駄目なら諦めるのも一興か……』

とさえ思えていた。

もしこれで私が死んで、<本当のクォ=ヨ=ムイ>に戻ってすべてをご破算にしたとしても、それはそれでアリかも知れん。

などと考え始めてもいた。

人間にとってはそんなことで世界が終わるなどとんでもない話だろうが、私にとっては些末なことだ。

が、

『世界を終わらせられては敵わん…!』

と誰かが思いでもしたのか、偶然、良い具合に引っかかったらしく、ドアが突然開き、それに体を預けていた小娘が、

「わあっっ!!」

と声を上げながら派手にすっ転んだ。

「おお! これは僥倖!!」

私は声を上げ(ゴキブリなので実際には声は出ないが)、僅かに隙間ができた瞬間にすり抜けて飛び出し、脱出することができた。

だがそこに、物音に気付いたらしい男が、燻蒸式の殺虫剤を手に小走りで駆けつけてくる。

そして私の姿を認めると、

「おのれ!!」

と忌々し気に声を上げて、手にしていた殺虫剤の缶を投げつける。

ハンドスプレー式のそれであれば噴霧したところだったのだろうが、燻蒸式のものであったからそのままでは使えず、咄嗟に投げつけたのだろう。

もちろんそんなものに当たる私ではない。

するりと躱して男の脇を奔り抜け、全力でその場を離脱した。

「ああっ! くそっ!!」

男が罵る声が届くが、既に廊下の角を曲がったことで姿は見えない。かなり大きな屋敷のようだ。

さて、これで部屋からの脱出には成功したが、どうやらこれではまだ<クリア>とはいかないようだ。私に特に変化はない。

ゴキブリのままだ。

となるとまだここから探索を続けなければいけないということか。

狭い部屋ではリスクも高かったが、屋敷全体を使えるとなればこの小さな体はむしろ有利に働くだろう。

このまま屋敷そのものから脱出してもよかったが、逆にこの状況がいかなるものであるのか興味が湧いてきたのもあり、

「もうしばらく付き合ってみるか…」

と探索を開始した。

「だが……妙だな……この屋敷の作り。少なくとも一般的なそれではない」

思わずそう呟く(何度も言うがゴキブリなので声にはならない)。

そう、何かがおかしいのだ。古びているようにも見えるのに、細部の作りは非常に緻密で、まったく隙間がない。まるで完璧な気密性を確保しようとでもいうかのように……?

そこで私は、脱出する訳ではないが取り敢えず屋敷の外に出ることを試みた。

まずは窓から外の様子を見ようとして、気が付いたのだ。

「む…? これは映像ではないか」

完全に深夜のそれと思しき外の景色に見えていたのは、窓の形をしたモニターに映し出されたただの映像だったのである。

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