Gの愉悦

京衛武百十

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考え事

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正直、ここがどこで、あの男が何者で、どうしてこの小娘がこんなことになってるかなど、私にはどうでもよかった。

今はとにかくここを脱出して、次の策を考えなければいけない。

また、この<嫌がらせ>がどこまでのものなのかも、おそらく脱出しない限りは分からないだろう。

脱出すれば終わりなのか、それともまだ先があるのかもな。

更には、万が一このゴキブリの体の状態で死んだ時、<本来の私>がどう判断するのかも分からない。私自身のことではあるが、しかし人間の体を持ち、人間に準じた形で制約の上で行動している<人間としての私>にとっては、ある意味では未知にも等しいことなんだ。

人間としての縛りを受けている時点でもはや理解できない部分だからな。

まあ、<クォ=ヨ=ムイとしての自覚のない、人間の体を持ち人間として生きている私>は、今現在でも百人以上いる筈で、それらも寿命だ事故だ事件だという形でどんどん死んでいる訳だから、単に次に生まれ変わるだけという可能性もあるんだが。

私は、人間共が<神>ないし<邪神>と呼んでいる存在だ。複数の私が同時に存在する程度のことは造作もない。

ただ、<クォ=ヨ=ムイ>としての意識に目覚めてしまったという時点で私はもうそいつらとは別の存在でもあるし、同じように考えることはできない可能性が高いんだ。

なにしろ<私>だからな。恐ろしくいい加減で気まぐれで理不尽で不条理な存在だし。



などという話も、とにかくここを脱出してからだな。

小娘が何とかドアを開けようと奮闘している様子を見守りながら、そんなことを考えていた。

しかし、見れば見るほど、小娘の体は、もちろん真っ当な状態ではないにせよ、そうなってから結構な日数が経っているであろうことが分かる。

しかも、小娘の思考の一部が私の中にも流れ込んできていたのは、ある種の<混線>が生じていたのかもしれん。

だから、小娘の、

『目が覚めたら足がなくなっていた』

という認識自体が誤りなのかもしれんのだ。

そもそも、この世界そのものが果たして地球なのかどうかも分からんわけで。

地球にしか思えなくても、そうじゃない場合だって十分にあり得る。

そうだ。この小娘はまだ、自分の姿を鏡などで客観的に見ていない。私がゴキブリになっているという形で認識がすり替えられているのと同じことがこの小娘にも起こっているのかもしれん。

もっとも、そんなこと自体が私にとってはどうでもいい話だがな。

とは言え、そうなると今度は、あの男がこの手足を失った小娘とどういう関係なのかも疑問だ。

手足を切り落とした小娘を飼っている頭のおかしい支配者か?

だがそんな奴が現実に存在しているか?



と、いかんせんドアが開かなくてどうにもならん状況に、私はただ考え事をするしかできなくなっていたのだった。

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