6 / 92
開けられない
しおりを挟む
ようやく私の存在に気付いた小娘の前で、私はじりじりとにじり寄る仕草を見せた。人間の小娘であればこれで十分、パニックを起こし逃げ惑うはずだ。
案の定、小娘も、
「ひ…っ。ひぃ……!」
などと声を詰まらせながら、身をよじって下がろうとする。
だが、肝心の、ドアを開けて部屋から逃げ出そうとする様子は見られない。
あまりの状況に思考停止の状態になり、思い付かないのかもしれないな。
両足は膝を含めた先がなく、両手は後ろ手に拘束されてまともに動くこともできないことも、パニックに拍車をかけているのかも知れん。
ドアに向かうのではなく、ただ部屋の中を這いずって逃げるだけだ。
やれやれ、これでは意味がない。
なので私は、小娘をドアの方へと誘導するべく、位置取りをした。
そうしてようやく、ドアの前へと追い詰めることができた。
小娘の方も、男がこの部屋におらず、ドアを目の前にしたことでやっと、
「逃げなきゃ…!」
と口に漏らすまでになった。
が、両足がそのような状態では立ち上がることもできず、しかも両手を後ろ手に拘束されていてはドアのノブに手が届かない。
しかし、よくよく見ると両足については完全に傷口が塞がっていて、とても昨日今日切り落とされたようなものではなかった。まるで昨日まではちゃんと足があったかのようにパニックを起こしていたが、どうやらそうではないようだ。記憶が混乱している可能性がある。
だが小娘はその足で立ち上がることは嫌なのか、
「ダメ…開けられない……!」
などと早々に値を上げる始末だ。
見れば、両足だけでなく両手も既になくなっていた。足の衝撃が大きすぎて気付かないらしい。しかも、足と同じく傷口は完全に塞がっていて、こちらもそれなりに時間が経過したもののようだ。
とは言え、マズイな。これではドアが開けられん。そんな状態でも工夫次第では開けられる筈だが、両手両足を失った小娘にはそんなことも思い付けんか。
と諦めかけてた私の目の前で、小娘がどうにかドアを開けようと、ドアノブを自分の肩と頬の間に挟み、それを回そうとした。
しかし、外に向かって押すタイプならまだしも、内側に向かって開くそれだった為にそういうことがやすやすとできてしまう訳もなく、
「ひ…ひ……ひい……!」
と声を漏らしながらドアに縋りつくのが精一杯だった。
それでもまあ、思った通りに動いてくれているのだから感謝してやった方がいいのだろうか。
などと考えている暇もない。
早く開けてもらわなければ、こっちは脱出もままならん。
「なんで…なんでえ……」
泣き言を繰り返しながらドアノブを弄りたおす様子に、私はただ呆れるしかできないでいた。
『焦ればそれこそうまくいかないぞ』
そう言ってやりたかったものの、やはりそれは言葉にはならず、小娘が泣きそうになりながら続けるのを見ているしかできなかったのだった。
案の定、小娘も、
「ひ…っ。ひぃ……!」
などと声を詰まらせながら、身をよじって下がろうとする。
だが、肝心の、ドアを開けて部屋から逃げ出そうとする様子は見られない。
あまりの状況に思考停止の状態になり、思い付かないのかもしれないな。
両足は膝を含めた先がなく、両手は後ろ手に拘束されてまともに動くこともできないことも、パニックに拍車をかけているのかも知れん。
ドアに向かうのではなく、ただ部屋の中を這いずって逃げるだけだ。
やれやれ、これでは意味がない。
なので私は、小娘をドアの方へと誘導するべく、位置取りをした。
そうしてようやく、ドアの前へと追い詰めることができた。
小娘の方も、男がこの部屋におらず、ドアを目の前にしたことでやっと、
「逃げなきゃ…!」
と口に漏らすまでになった。
が、両足がそのような状態では立ち上がることもできず、しかも両手を後ろ手に拘束されていてはドアのノブに手が届かない。
しかし、よくよく見ると両足については完全に傷口が塞がっていて、とても昨日今日切り落とされたようなものではなかった。まるで昨日まではちゃんと足があったかのようにパニックを起こしていたが、どうやらそうではないようだ。記憶が混乱している可能性がある。
だが小娘はその足で立ち上がることは嫌なのか、
「ダメ…開けられない……!」
などと早々に値を上げる始末だ。
見れば、両足だけでなく両手も既になくなっていた。足の衝撃が大きすぎて気付かないらしい。しかも、足と同じく傷口は完全に塞がっていて、こちらもそれなりに時間が経過したもののようだ。
とは言え、マズイな。これではドアが開けられん。そんな状態でも工夫次第では開けられる筈だが、両手両足を失った小娘にはそんなことも思い付けんか。
と諦めかけてた私の目の前で、小娘がどうにかドアを開けようと、ドアノブを自分の肩と頬の間に挟み、それを回そうとした。
しかし、外に向かって押すタイプならまだしも、内側に向かって開くそれだった為にそういうことがやすやすとできてしまう訳もなく、
「ひ…ひ……ひい……!」
と声を漏らしながらドアに縋りつくのが精一杯だった。
それでもまあ、思った通りに動いてくれているのだから感謝してやった方がいいのだろうか。
などと考えている暇もない。
早く開けてもらわなければ、こっちは脱出もままならん。
「なんで…なんでえ……」
泣き言を繰り返しながらドアノブを弄りたおす様子に、私はただ呆れるしかできないでいた。
『焦ればそれこそうまくいかないぞ』
そう言ってやりたかったものの、やはりそれは言葉にはならず、小娘が泣きそうになりながら続けるのを見ているしかできなかったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる