Gの愉悦

京衛武百十

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隙間

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多数の美術品が雑然と置かれた中をさらに進み、私は状況の把握に努めた。

それと同時に、改めて空調の為の送風口を探す。

先にも触れたが、いくら各部屋がシェルターの役目もしているとはいえ、非常時以外は全館の空調を一括で制御しているのだろう。温められた空気が送られてくる送風口も存在していたものの、最初の部屋や廊下のそれには目の細かい網が張られていて、このゴキブリの体でも通れなかった。

さりとて、ここまで人間は二人しか見られず、かつ今のところは他の人間の気配もない。となれば管理も十分に行き届かず、破損していても修理が追い付いていない場合もあったりするだろうと思ったのだ。

そこから空調の為のダクトに入り込むか、可能であれば壁の中や天井裏、床下などに移動したい。

そこならさらに自由に行動できる可能性が高い。

と考えていたら、

「あった…」

壁に立てかけられた絵画の後ろ。一見しただけでは分かりにくい、壁と床の隙間があったのだ。

壁が若干変形しているところを見ると、慌ててここに美術品等を運び込んだ時に、使った台車やリフトといった道具をうっかりぶつけてしまって歪ませてしまった感じだろうな。

だが、私がその隙間に近付こうとした時、奥から気配が伝わってきた。

「何かいる…ゴキブリか……?」

そう。今の私がここにこうしているということは、他にもゴキブリがいるということだ。

で、私以外のゴキブリがまさにその隙間にいる気配が伝わってきたのである。

「なるほど。ここから出入りしていた感じか。となると、他にも同じような出入り口になる隙間があるのだな」

私があの部屋にいて、この物置らしき部屋の扉がたまたま少し開いていただけということは、当然、他にも出入り口があって、そこから廊下に出、あの部屋のドアが開け閉めされた際に潜り込んだか、あの男の体にでも掴まって一緒に入ったかしたのだろう。

しかし、その隙間の奥から伝わってくるのは、ただそこにゴキブリがいるというだけのものではなかった。明らかに<敵意>と思しきものも伝わってくる。

どうやら、私は歓迎されていないらしい。この屋敷の中には複数のゴキブリのコロニーがあり、奴らからするときっと私は<余所者>であり<敵>なのだろう。

ゴキブリに<縄張り>という認識があったかどうかはそこまで興味もなかったから知らんが、ここがもし非常に限られた環境であったなら、自分達が生き延びるために他のコロニーのゴキブリは、リソースを奪い合う<敵>という認識を持つに至ったという可能性も否定はできないな。

が、それは翻って他にもゴキブリのコロニーがあるという意味にもなるだろう。

それらを把握することは、<この世界>を理解する一助にもなるかもしれんな。

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