Gの愉悦

京衛武百十

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命懸けの鬼ごっこ

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襲い掛かるアシダカグモ目掛け、私は突撃した。通常の三倍の速度で。

咄嗟に前足で私を捉えようとするが、遅い!

アシダカグモの前足を躱し、体の上を飛び越え、入れ替わりでまた隙間に入ることを狙う。

だが、奴もさすがに甘くはなかった。断熱材の上に着地した瞬間に反転、再度飛び掛かってくる。

私の方はやや位置が悪く、間に合わなかった。奴に先回りされ、躊躇わず方向転換。空間の中をひたすら走り回る。

奴も当然、私を追う。命懸けの<鬼ごっこ>だな。

普通のゴキブリなら躱しきれなかった。私だからこそのものだ。

しかも、先程、ネズミの糞や毛を食えるだけ食っておいたことでそれが可能になっている。

とは言え、当然、無限ではない。それは奴も同じだろうが、私の方は普通のゴキブリの限界を超えた稼働を行っているから、もちろん消耗も激しい。このままではジリ貧か。

そこで私は、危険ではあるが敢えて奴に正面からぶつかっていった。今度はスレスレで躱すのではなく、完全にぶつかったのだ。

「!?」

さすがに体の大きさは違っても、速度が上がればそれだけ運動エネルギーは大きくなる。衝突によって得られる威力もそれだけ大きくなるのだ。

それによって奴の頭部に激突。すると奴は、ひっくり返って足を丸めた。

死んだのではない。衝撃によって神経系が混乱したのだろう。

さりとて、この場を脱出するには十分な隙だった。

一秒と掛からず奴も回復して追いかけてくるが、私は先に隙間へと逃げた。すると、また別の気配が。

ネズミだ。ネズミが二匹、<通路>を通ってくる。

『丁度いい……!』

私はそう考えて、ネズミ共の方へと向かった。わざとカサカサと音を立てつつ。

そんな私の後を、アシダカグモも追ってくる。

それには構わず、私は走る。

すると、ネズミの気配が変わった。私達の存在に気付き、色めき立つのが分かる。

ようし、おあつらえ向きだ!

走りながらそう考え、同時に、状況を探る。ネズミ共の作った通路の向こうの状況を。

しかしそちらに神経を集中したことで、速度が落ちる。奴がすぐ傍まで迫る。前足で私を捉えようと必死に伸ばしてくる。進行方向では、ネズミ共が隙間に鼻先を突っ込んでこちらを探っている。

だが私はそのまま、ネズミ共の方へと突っ込んでいった。アシダカグモは私だけに集中しているのが分かる。さっきの体当たりでまだ若干、混乱が残っているのかもしれない。だとしたら好都合。

逆にこちらは神経を研ぎ澄まし、全てを一瞬に賭ける。

「ジイッ!!」

声を上げて私を捕えようとしたネズミをギリギリで躱して<通路>に飛び出し、そのまま反対側の隙間へと飛び込んだのだ。

が、私を追ってきたアシダカグモは―――――

ネズミ二匹の前に飛び出してしまったことで、しかも私よりも大きかったことでギリギリで躱すことができずに捕えられ、ネズミ同士で奪い合いが始まり、一瞬で体をバラバラに引き裂かれてしまったのだった。

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