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暮らしぶり
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しかし、そんな私の愉悦とは裏腹に、<義手の男>は、ただただ自らの役目を果たすことを望んだ。妻と子を亡くしたそいつには、もう、それしかなかったのだ。
私はその男の部屋に侵入し、暮らしぶりを確かめた。
三畳一間くらいの、壁に収納できるタイプのベッドと同じく壁に収納できる机と椅子がある以外には、本当に何もない部屋だった。
いや、修理に赴いた先で預かってきたらしい、修理中と思しき電気小物類がいくつか置かれてはいる。それ以外は、机の上に写真立てが一つ。
私はそれを送風口から覗いていたのだが、男が不意に私の方に視線を向けた。
気付いたのだ。
「……」
が、男は何もするでもなく、壁に沿わせて床に置いた情報端末らしきものを拾い上げて机の上に置き、右手で弄りだす。修理のためだな。
電源が入らないことを確認し、引っくり返しててきぱきと分解し始めた。
壁と一体になった収納には様々な工具が並び、右手だけでそれを器用に使ってバラバラにしていく。
が、同時に、左手にはいつの間にかカメラが取り付けられ、写真を撮ってもいるようだ。確認のためだろう。
もはや男自身が一つの機械のように淡々と、かつスムーズに作業がこなされる。
ゴキブリである私だけが見守るその前で。
おそらく、男にとってはそれが遊興であり息抜きであり気晴らしなのだろうな。作業に集中することでこの苦しい世界でのことを忘れ、ある種の忘我の境地に至っていると思われる。
これが男の処世術ということか。
皺が刻まれた目元や口元が、僅かだが微笑んでいるようにさえ見える。
まったく。この男にとってこの世界とは、どのようなものなのであろう。
想像することは私にとってはたやすいが、まあ、野暮の極みというものか。
今のこの男の姿が全てではある。
そしてこの男にとっても、これが世界の全てなのだ。
自身に役目があるのなら、いつか己の命が終わるまで、それをひたすら貫く。
これもまた、一つの生き方。
悪くない。
それを『退屈だ』『何の価値もない』と蔑む奴もいるだろう。だが、私自身はこういうのも嫌いじゃないぞ。
人間の生き様というもの自体が私にとっては<娯楽>なのだ。先だっての小僧のように騒動を起こして惨めに死んでいく様を見るのも楽しいが、これもまた面白い。
男が修理していた情報端末は、どうやら電源の回路が一部駄目になっていたらしい。男は電源そのものも分解し、故障個所を特定。ハンダゴテを左手に装着、右手でハンダを持ち、恐ろしく細かいハンダ付けを行っていった。
いやはや、これぞ<職人芸>。
実に見事なものだよ。
私はその男の部屋に侵入し、暮らしぶりを確かめた。
三畳一間くらいの、壁に収納できるタイプのベッドと同じく壁に収納できる机と椅子がある以外には、本当に何もない部屋だった。
いや、修理に赴いた先で預かってきたらしい、修理中と思しき電気小物類がいくつか置かれてはいる。それ以外は、机の上に写真立てが一つ。
私はそれを送風口から覗いていたのだが、男が不意に私の方に視線を向けた。
気付いたのだ。
「……」
が、男は何もするでもなく、壁に沿わせて床に置いた情報端末らしきものを拾い上げて机の上に置き、右手で弄りだす。修理のためだな。
電源が入らないことを確認し、引っくり返しててきぱきと分解し始めた。
壁と一体になった収納には様々な工具が並び、右手だけでそれを器用に使ってバラバラにしていく。
が、同時に、左手にはいつの間にかカメラが取り付けられ、写真を撮ってもいるようだ。確認のためだろう。
もはや男自身が一つの機械のように淡々と、かつスムーズに作業がこなされる。
ゴキブリである私だけが見守るその前で。
おそらく、男にとってはそれが遊興であり息抜きであり気晴らしなのだろうな。作業に集中することでこの苦しい世界でのことを忘れ、ある種の忘我の境地に至っていると思われる。
これが男の処世術ということか。
皺が刻まれた目元や口元が、僅かだが微笑んでいるようにさえ見える。
まったく。この男にとってこの世界とは、どのようなものなのであろう。
想像することは私にとってはたやすいが、まあ、野暮の極みというものか。
今のこの男の姿が全てではある。
そしてこの男にとっても、これが世界の全てなのだ。
自身に役目があるのなら、いつか己の命が終わるまで、それをひたすら貫く。
これもまた、一つの生き方。
悪くない。
それを『退屈だ』『何の価値もない』と蔑む奴もいるだろう。だが、私自身はこういうのも嫌いじゃないぞ。
人間の生き様というもの自体が私にとっては<娯楽>なのだ。先だっての小僧のように騒動を起こして惨めに死んでいく様を見るのも楽しいが、これもまた面白い。
男が修理していた情報端末は、どうやら電源の回路が一部駄目になっていたらしい。男は電源そのものも分解し、故障個所を特定。ハンダゴテを左手に装着、右手でハンダを持ち、恐ろしく細かいハンダ付けを行っていった。
いやはや、これぞ<職人芸>。
実に見事なものだよ。
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